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第三十四話:新たな同居人? 魔物研究家が来る日

王国との条約に基づき、ついに監視者エリスと魔物研究家ヴィオラが館に到着!

彼女たちはアレンのために動物たちが作った「未知の道」を通り、館へとたどり着く。

この世界の図鑑には載っていない「動物」たちの姿に、研究家ヴィオラは興奮を隠せない!

館の日常に、新たな風が吹き込む!

あれから一週間が経過した。

館の広間では、ルミナが淹れてくれた香ばしい茶の香りが漂い、俺は穏やかな朝のひとときを庭先で過ごしていた。レオやミケ、ポポたちの群れが庭を駆け回り、先日の騒動が嘘のように平和な空気が流れている。あの王国との交渉以降、周囲の環境は驚くほどスムーズに安定へと向かっていた。伝説の賢者の遺産であるという事実が、王国の重鎮たちにとって何よりの「安心材料」になっているのは間違いない。

そんな平和な朝、森の境界線付近から、これまで聞いたことのない騒々しい声が響いてきた。

「あらあら? 不思議ねぇ……。こんな深い森の中に、まるで職人が整備したかのような、手入れの行き届いた道ができているなんて」

「うふふ、本当に! 見てよ、この道幅! 人間が十人並んで歩けるほどの広さがあるわ。このデンジャラスフォレストで、これほど整地された場所なんて文献にも載っていないわよ! 楽しみねぇ!」

声の主は、王国から派遣された監視者のエリスと、魔物研究家のヴィオラだった。

エリスは王国騎士団でも名の知れた冷徹かつ有能な戦略家であり、傍らのヴィオラは、魔物学において革新的な仮説を提唱しすぎて学会から異端視されている変わり者の女性研究者だ。

彼女たちが感嘆の声を上げたのは、俺たちが館と王国を結ぶために、いつの間にか整備されていた広大な道だった。実はこれ、かつてフォレストゴブリンの集落を壊滅させた冒険者アレンが初めて館を訪れた際、彼を安全に帰宅させるためにレオたちやアイギスが深夜のうちに作り上げたものだ。巨木をなぎ倒し、地面を押し固め、魔物たちが近寄らぬよう「威圧のオーラ」を染み込ませたその道は、まさに人間にとっての『楽園への参道』となっていた。

もちろん、彼女たちはこれが動物たちの手によるものだとは知る由もない。

「ここ、本当にあの危険な森なの……? こんなに歩きやすい道があるなんて、まるで魔法か何かみたい」

ヴィオラが目を輝かせて周囲を観察する。彼女たちの目には、森の草木がまるで動物たちの足並みに合わせて整理整頓されているように見え、その光景が奇妙でならない。彼女たちにとって、この森は「死と隣り合わせの地」であり、こんな道など存在するはずがないという共通認識があったからだ。

やがて、鬱蒼としていた森の茂みが途切れ、目の前に荘厳な館の門が姿を現した。

「着いたわね。……あれが、噂の『静寂の聖域』……アイギス・ガーデン……」

監視者エリスが思わず言葉を飲み込む。そこには、文献で読んだよりも遥かに美しく、かつ圧倒的な威容を放つ建造物があった。そして、その門の前で彼女たちを待ち受けていたのは、俺と――キング、グリズ、そして無機質な瞳で彼女たちをスキャンするアイギスだった。

「ようこそ、王国からの使者の方々。俺が管理者の風間奏多だ」

俺が声をかけると、エリスは即座に表情を切り替え、監視者としての鋭い眼差しを向けた。

「エリスです。こちらが魔物研究家のヴィオラ。王国の命を受け、この館の監視と生態調査を任されました。……それにしても、噂には聞いていましたが、凄い光景ですね。門番が……あの伝説の人造ゴーレムとは」

ヴィオラの視線は、俺の背後にいる動物たち――レオやクロ、そしてキングとグリズに釘付けになっていた。彼女の持っている「魔物図鑑」には、これらの姿形は一切存在しない。

彼女たちにとって、この世界に存在するのは鋭い角や鱗、あるいは魔法を操る器官を持つ「魔物」だけだ。クマや普通の鳥、犬や馬といった「動物」という概念すら存在しない彼女たちにとって、目の前の生物たちはすべて「初めて見る姿」であった。

「あらあら……あちらにいらっしゃるのは、見たこともない形状の獣ですね。あれが『動物』とやら……? なんて洗練されたフォルム……!」

ヴィオラが震える手でノートを取り出す。彼女が必死に図鑑のスケッチを照合しようとするが、該当する項目が一つもない。その姿は、この世界の魔物よりも遥かに無駄がなく、洗練された「生命」の形をしていたからだ。

その時、地面を突き破るようにモグが顔を出し、続いてビーたちが彼女たちの周りを優雅に舞い、挨拶代わりの蜜の香りを振りまいた。

エリスが反射的に腰の剣に手をかけるが、それをレオが静かに、しかし威圧的に遮った。レオの瞳は「この客人は我らが守護対象である」と告げているようだった。

「……彼らは敵ではありません。ただ、少しばかり好奇心が強いだけです」

俺がそう言って微笑むと、ヴィオラは緊張を解き、レオの大きな頭に恐る恐る手を伸ばした。レオは喜んでその手に頬を擦り寄せる。

「なんて……なんて温かいの。魔物特有の冷徹な魔力を感じないわ。これ、本当に『動物』なのね……! 素晴らしいわ、奏多殿! あなたの館は、この世界の生物学を塗り替えるわ!」

館にやってきた新たな同居人たち。

彼女たちは、ここが王国という閉ざされた世界における唯一無二の「異界の楽園」であることを、まだ完全に理解してはいない。だが、この日から、王国と館の距離は、この道を通って少しずつ、しかし確実に縮まっていくことになるのだ。

第三十四話、いかがでしたでしょうか。

ついに部外者が館の生活に加わりました。この世界の常識を持つ彼女たちと、異世界出身の動物たちの交流が、今後どう描かれるのか楽しみですね。

次回は、研究家ヴィオラが動物たちとより深く交流しようと試みますが……?

次回:

「動物観察記? 研究家ヴィオラ、禁断の生態調査!」

お楽しみに!

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