第三十三話:管理者の審問! 王国側との本格的な話し合いへ
王国宰相アルヴィンを迎え、奏多と王国との本格的な交渉が始まる!
「動物」を巡る認識のすれ違いを経て、双方の条件が提示される。
監視者を受け入れ、王国との間に不可侵の条約を結ぶ奏多。
管理者の館は、今や王国にとっても無視できない重要な拠点へと変貌を遂げた!
館の広間に充満する緊張感は、かつてないほど高まっていた。
庭先に並ぶ魔獣たちの威圧感に、王国騎士団の精鋭たちも、さすがに武器を握る手が震えている。彼らにとって、目の前の風景は現実と空想の境界が曖昧になったような、異様な光景だったに違いない。
その時、家臣――王国の宰相アルヴィンが、沈黙を破った。
「では、改めて私も自己紹介をしておこう。私はエリュシオン王国の宰相、名をアルヴィンという。王に代わり、この地域の情勢と外交を一手に引き受けている者だ」
アルヴィン宰相の視線が、庭を自由に闊歩するキングやグリズ、そして穏やかに草を食むクロへと向けられる。彼の瞳には、政治家特有の冷徹な分析と、未知への警戒心が同居していた。
「……さて、風間奏多殿。先ほど『穏やかな生活がしたい』と仰いましたね。だが、そちらの魔獣……我々にとっては、その生態も強さも未知数な『得体の知れない魔獣』であり、市民や領民に危害を加えないという保証はどこにもない。勿論、我々もこのような危険な『デンジャラスフォレスト』に、わざわざ全戦力を投入して攻め込むような愚かな真似はしたくない。だが、この森に眠る数多のダンジョンは、国の経済を支える重要な資源だ。冒険者たちが安全に稼げる場所を確保し、管理せねばならん。そこで提案がある。穏便に、かつ王国としても友好関係を築くための条件を受け入れてほしい。……その代わり、そちらが求める条件も可能な限り飲もうではないか」
俺は腕を組み、静かに答えた。
「条件はシンプルだ。第一に、俺たちの穏やかな生活の邪魔をしないこと。第二に、傍にいるルミナの事情は俺も知っている。彼女を狙う帝国軍が手出しできないよう、万全の防衛策を講じてくれ。そして最後の一つ……彼らは『魔獣』ではない。俺にとっての、かけがえのない『動物』だ。その呼び方を尊重してほしい」
騎士団長ガルスが困惑したように眉をひそめる。
「ど、ドウブツ……? なんだそれは。この世界には存在しない概念だな」
その話し合いの最中も、広間の外では奇妙な光景が繰り広げられていた。
レオがギルドマスターの足元でゴロンと腹を見せ、クロが「遊んでくれ」とでも言わんばかりに鼻先をバルトの胸に押し付けている。まるで「警戒」などという概念が最初から欠落しているかのような振る舞いだ。
アレンから噂を聞いていたバルトは、警戒心を捨てて思わずレオの頭を撫でた。
「ま、待ってくれ……! これが、あの破壊の限りを尽くしたという『イヌ』と『ウマ』なのか!? 警戒心どころか、まるで飼い慣らされた家畜のように懐いている……!」
宰相アルヴィンも、その光景を見て驚愕の表情を浮かべた。
「……確かに、魔獣の割には温厚すぎる。本来、魔物とは本能的に人間を排除するものだ。召喚士の従魔契約や帝国の洗脳技術、あるいは高位のスカウト魔法で無理やり制御しなければ、これほど懐くはずがない。……いいだろう。その条件を認めよう」
アルヴィン宰相は懐から一通の羊皮紙を取り出し、そこに認められた「王国の条件」を読み上げた。
「その代わり、我々にも譲れない条件がある」
1. 監視者と魔物研究家の派遣: 館の生態系を解明し、この地と王国との架け橋となるため、専門家を常駐させる。
2. 森の仮拠点建設: この館から距離を置いた地点に、冒険者たちが休める中継拠点を建設する許可。
3. ギルドと騎士団の常駐: 万が一の事態に備え、常駐拠点にギルドと騎士団の支部を設置する。
4. 有事の際の協力体制: 万が一、王国が存亡の危機に瀕した際には、貴殿の『動物』と呼ばれる魔獣たちの力を貸してほしい。
俺は少し思案してから、最後の一点について付け加えた。
「四つ目の条件については、俺が他者に『動物』を貸し出す『レンタル契約』という仕組みがある。アレンの時もそうだったが、契約内容に応じて力を貸すことは可能だ。ただし、貸し出す相手は俺が選ばせてもらうし、もし『動物』たちに対して虐待に近い扱いがあれば、即座にレンタル契約を解除し、彼らを連れ戻す」
「レンタル……契約、だと?」
アルヴィン宰相は驚いたように笑みを漏らした。
「君という管理者は、本当に底が知れない。……分かった。その条件で正式な国書を準備しよう。我が国と君たちの間に、不可侵条約に近い友好関係を結ぶとしようではないか」
館に、王国の要人たちとの対話という新たな日常が舞い込もうとしていた。それは俺にとって、理想郷を守るための大きな一歩であり、同時に、この世界を少しずつ変えていく大きなうねりでもあった。
第三十三話、いかがでしたでしょうか。
ついに王国側との「正式な関係」が成立しました。監視者という名の新たな住人が来ることで、館の生活はどう変わるのか……?
次回、奏多の日常はより賑やかに、そして少しだけ騒がしくなりそうです!
次回:
「新たな同居人? 魔物研究家が来る日」
お楽しみに!




