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第三十五話:動物観察記? 研究家ヴィオラ、禁断の生態調査!

館に馴染みすぎている(?)監視者と研究者!

魔物研究家ヴィオラは、未知の「動物」たちの生態に魅了され、我を忘れて調査に没頭する。

一方、監視者エリスは、ポポたちに懐かれ、レオに振り回され、任務どころではない大惨事(癒やし)に遭遇!?

館の庭園は、もはや王国から来た二人にとって「知的好奇心の迷宮」と化していた。館の管理者である俺が朝食を終えて外に出たとき、そこには既に戦場のような――いや、熱狂的な学術調査の現場のような光景が広がっていた。

「素晴らしい……本当に素晴らしいわ! この筋肉の付き方、皮膚の質感、そして何より魔力による身体強化に頼らない、純粋な生物としての躍動感! 奏多殿、この子たちの骨格密度はどうなっているのかしら? 測定を許可してちょうだい!」

ヴィオラは到着してわずか数分後には、特注の拡大鏡と記録用の魔石を手に、狂喜乱舞の様相で調査を開始していた。彼女の現在のターゲットは、地面を器用に掘り進むモグと、それを興味深そうに観察しているハムスターのハムだ。

「モグ、今は土を柔らかくしているのね? それとも地下の湿度を調整しているのかしら? ああ、その前足の構造……硬い岩盤すら貫通させるための適応進化ね。素晴らしい! 帝国の魔獣学者が喉から手が出るほど欲しがるデータだわ!」

ヴィオラは地面に這いつくばり、モグが掘り出した土の成分を指でつまんで味見しようとする。さすがに俺が慌てて駆け寄り、その手を制止した。

「ヴィオラさん、待ってくれ! それはただの土だ! 流石に食べない方がいいと思うぞ」

「あら、ごめんなさい! つい、興奮してしまって……でも、奏多殿。あなたの館の動物たちは、私の知る魔物とは根本的に何かが違うわ。彼らには『悪意』がないのよ。ただ、生きるために全力でその瞬間を楽しんでいる……そんな純粋な気配がするの。魔物図鑑のどこにも当てはまらない、生命そのものの輝きだわ」

彼女の言葉を聞いて、キングが喉を鳴らした。普段は恐ろしい捕食者であるはずのキングだが、ヴィオラの熱意が伝わったのか、あるいは俺が認めた客人と理解したのか、ゆったりと腰を下ろして彼女に背中を預けている。ヴィオラはその巨大で暖かな背中に顔を埋め、陶酔したような溜息を漏らした。

「ああ……これよ。この温もり。魔物の冷たい鱗とは違う、命の鼓動だわ……! ああ、ずっとこうしていたい!」

その一方、監視者エリスの運命は、ヴィオラとは対極にあった。

「待て……! 待てと言っているだろう! 貴様ら、一体どこへ行く!」

エリスは現在、ポポたちハトの群れと、ミツバチのビーたちに文字通り「翻弄」されていた。彼女の任務は館の監視だ。しかし、この館の動物たちは、エリスという存在を「新しい遊び相手」だと認識してしまったらしい。

彼女が調査のために門の近くでメモを取っていると、上空からポポ率いるハトの群れが急降下してきた。彼らはエリスの肩や頭に次々と着地し、つついて「ここを撫でろ」とばかりに首を傾げる。

「くっ……離れろ! 私は公務中なのだぞ! 王国騎士団の威厳に関わる!」

エリスが剣の柄を握り、真剣な面持ちで拒絶しようとするが、彼女の肩に乗ったポポは全く怯える気配がない。それどころか、彼女の耳元で「ポポッ」と愛らしく鳴き、彼女の硬い髪の毛の中にビーが入り込んで、花の蜜のような甘い香りを振りまく。

さらに追い打ちをかけるように、三毛猫のミケがエリスの足元にスライディングし、そのままエリスの膝の上に飛び乗ってゴロゴロと喉を鳴らした。猫特有の、抗いがたい甘えた仕草に、冷徹な騎士であるエリスも表情が崩れ始める。

「……お前、甘え上手だな。だが、私は仕事をしているのだ……! 誰かに見られたら……」

エリスの抵抗も虚しく、彼女の周囲にはいつの間にかラビとミケ、そして巨体のレオまでもが集まっていた。レオは彼女の背中を鼻先で軽く小突き、エリスを庭の真ん中にある噴水広場へと誘導していく。

「おい、まさかここへ連れて行こうというのか? 私はただ、館の構造を記録したいだけで……ああっ、濡れる!」

レオに強く背中を押され、エリスは噴水の中へ。水しぶきを上げながら転ぶエリスを見て、通りがかりの幼龍ハルが、クスクスと笑うような可愛らしい鳴き声を上げた。

「……全く。奏多殿の相棒たちは、どうしてこうも人懐っこいのだ。これが本当に、騎士団を恐怖に陥れた『イヌ』や『ウマ』なのか……?」

エリスはびしょ濡れになりながら、観念したようにレオの背中を撫でた。最初は任務のため、次はただの義務感、しかしその温もりに触れた瞬間、彼女は自然と、レオの毛並みの柔らかさに癒やされ始めていた。

監視に来たはずの彼女は、今や完全に館の「動物たち」の集団行動に巻き込まれ、立派な「お世話係」の一員として庭を走り回っていた。

「ヴィオラ! 私を置いて調査を進めるな! ……ああもう、レオ、そこは撫でるなと言っただろう! ……くっ、いい匂いだ……」

館の平和な午後は、研究者の底なしの探究心と、監視者の悲鳴(と癒やし)によって、かつてないほど騒がしく、そして温かく過ぎていった。

第三十五話、いかがでしたでしょうか。

ヴィオラの熱狂と、エリスの不憫さが少しずつ館の日常になってきましたね。

次回は、動物たちの生態を目の当たりにしたヴィオラが、ついに「館の管理方法」にまで踏み込んだ提案を……?

次回:

「魔獣学の革命! 研究家ヴィオラ、館の新たな飼育環境を提言す」

お楽しみに!

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