第二十八話:新たな領域の住人! 森の支配者たちを召喚せよ!
森の恐ろしさを説くルミナをよそに、奏多はついに「ジャングル&フォレストアニマル」領域を解放!
母親譲りの知識と記憶を頼りに、現世最強の捕食者である「アムールトラ」と「ヒグマ」を召喚する!
未知の魔獣たちが庭に降り立った時、その威容にルミナとマーリドは戦慄する!
館の広間にて、俺はルミナに問いかけていた。
「なぁルミナ、この『デンジャラスフォレスト』において、純粋な生物として最強と呼べる魔物はなんだ?」
ルミナは少し考え込むような仕草を見せ、窓の外の深い森を見つめた。その瞳には、この森で生き抜いてきた者特有の警戒心が宿っている。
「そうですね……ダンジョンボスの類は例外として、野生の個体であれば、鋼の体躯を誇る『ナンディベア』や、再生能力を持つ『トロール』、そして森の深淵に潜む巨躯『ビッグフッド』や『マピングアリ』が恐れられています。特に『ワーグ』の群れなどは、熟練の冒険者パーティでも一瞬で全滅させられる危険があります。この森が『デンジャラスフォレスト』と呼ばれる所以は、まさにそれらの魔獣が食物連鎖の頂点に君臨し、人間を侵入者として排除する本能を持っているからですよ」
「なるほどな……」
俺は呟きながら、館の歴史に想いを馳せた。かつての賢者、そして俺の前の契約者。なぜ彼らは、よりによってこの最も過酷な場所を拠点に選んだのか。いや、むしろこの過酷さこそが、何者も近寄らせないための「絶対的な防壁」だったのかもしれない。
「だが、俺もただ守られるだけの管理者じゃない。……ルミナ、俺は俺の知る『最強』を呼び出すことに決めた」
「か、奏多様? まさか、この領域の住人を召喚されるのですか?」
ルミナの心配げな視線を背に、俺は広大な庭へと歩み出た。
頭の中には、かつて現世で、飼育員として働く母親の職場で見上げた、巨大で力強い獣たちの姿が鮮明に浮かんでいた。彼らはただの動物ではない。森を統べ、環境を支配し、自然そのものの荒々しさを体現する象徴だ。
「よし……。ジャングルからは、その圧倒的な力で森の王と恐れられる『アムールトラ』。そして、広大な森の支配者として君臨する『ヒグマ』。お前たちの力を、今こそこの世界に見せつける!」
俺が魔力を全開に解放すると、庭の空間が歪み、金色の稲妻のような光と、大地を砕くような地響きが館全体を包み込んだ。空気が振動し、門の外までその威圧感が伝わっていく。
ゴオオオオオオオオッ!!
光が収まった時、そこには二頭の雄大な姿があった。
現世の姿そのままに、しかしこの世界の濃密な魔素を吸い込み、より凶暴で、より神々しく進化した獣たち。
「いいか、お前たちの名は……『キング』と『グリズ』だ」
『キング』と呼ばれたアムールトラは、獲物を射抜くような鋭い琥珀色の瞳で庭を見回し、空気を震わせるほどの地響きのような唸り声を上げた。その毛並みは燃えるような橙色に黒の縞模様が走り、一歩踏み出すたびに大地が沈むほどの重圧感を放っている。
一方の『グリズ』と呼ばれたヒグマは、立ち上がれば三メートルを超える巨躯を誇り、岩をも粉砕する太い前足で庭の地面を軽く踏みしめた。その動作だけで周囲の地面がひび割れる。
「あ……あああ……」
ルミナはあまりの迫力に言葉を失い、一歩後ろに後ずさった。
マーリドの光の粒子が、信じられないものを見るように二頭の周りを浮遊する。
『……信じられん。ナンディベアやトロールの比ではない。この獣たちが放つ殺気は、戦いによって鍛えられたものではない……絶対的な捕食者としての本能そのものだ。奏多、お前は一体、どのような「強さ」の概念を召喚したのだ?』
「俺にとっては、これが自然界の頂点なんだよ」
キングが俺の足元に歩み寄り、巨大な頭をすり寄せてきた。その吐息は熱く、野生そのものの匂いがする。グリズもまた、穏やかな表情で俺の周囲を見守り、その圧倒的な力で庭の空気を完全に支配していた。
アレンが見た「イヌ」や「ウマ」ですらこの世界の理を歪めていたというのに、今、庭には「王」と「覇者」が揃ってしまった。
「これで残りの枠はあと六つか」
俺は庭を見渡した。騎士団がどんな調査をしようと、この『デンジャラスフォレスト』の深淵には、もはや彼らが立ち入る余地などない。
この館は、ただの「管理者」の住処から、誰もが恐れる「禁忌の領域」へと、また一歩近づいたのだ。俺たちの理想郷は、強固な牙と爪によって、外敵を寄せ付けない牙城と化しつつあった。
第二十八話、いかがでしたでしょうか。
ついに現世の最強動物が登場しました。キングとグリズ、この二頭がいるだけで館の防衛力はもはや国家規模の脅威です。
さて、次回はいよいよ動き出す騎士団との邂逅が近づいています。
次回:
「王国の威信をかけて! 騎士団長が率いる調査団、ゴブリン跡地に再び集結!」
お楽しみに!




