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第二十話:招かれざる客? 冒険者アレンと過ごす、奇妙で騒がしい夜

アレンに語ったルミナの過去。そして明らかになる「レンタル契約」の可能性!

他者に魔獣を貸し出すなど、この世界の魔術常識ではあり得ないはずだった。

マーリドの驚愕をよそに、奏多はアレンに相棒を託す決意を固める。

信頼の証として提案する「レンタル」は、彼らの関係をどう変えるのか!

館の広間に、これまでにないほど賑やかで温かな時間が流れていた。

暖炉の火が赤々と燃え、琥珀色の炎がアレンの金髪を優しく照らしている。彼は当初の警戒心を完全に解き、レオの大きな背中に寄りかかって笑い声を上げていた。ミケはその膝の上で心地よさそうに喉を鳴らし、ハムスターのハムがアレンの肩を駆け回っている。

夕食後のひととき、ルミナは静かに、しかし毅然とした態度で自分の身の上を語った。帝国の侵攻、故郷アルカディア王国の落城、そして運命に導かれるようにこの館へと流れ着いた経緯を。

アレンは真剣な眼差しで聞き入り、最後に少しだけ悲しげに微笑んだ。

「そうだったのか……。まぁ、でも、帝国軍の侵攻でアルカディア王国が滅びてしまったのは悲劇だが、ルミナ姫様がこうして生き延びているのなら、国王陛下もきっと天国から安心して見守っているはずだよ。君は、王国が繋いだ希望なんだから」

その言葉に、ルミナの瞳が少しだけ潤んだ。俺は、アレンという人間が持つ、真っ直ぐで嘘のない気質に触れた気がした。俺が長年抱えていた人間不信の棘が、彼という存在を通して、少しずつ、しかし確実に削られていくのを実感していた。

アレンが動物たちと戯れている間、俺は一人、館の片隅で明日の計画を練っていた。

アレンは明日の朝、フォレストゴブリンの集落へ向かうと言う。レオの嗅覚があれば集落を突き止めることは容易だろう。だが、ゴブリンの集落は森の奥深くだ。アレンの足で徒歩移動では時間がかかりすぎる上に、道中で他の魔物に襲われるリスクもある。

「移動に適した……頼れる相棒か」

俺の脳裏に、懐かしい光景が蘇った。

現世の小さな農場。幼い頃、父が大切に育てていた馬の背中の温もり。動物園の飼育員であった母の趣味で、子供の頃に一緒に乗馬を楽しんだ、あの日差しの暖かさ。あの馬はもうこの世にはいない。だが、もしも「召喚」の力で、あの時の温かな記憶を形にできるとしたら――。

その時、俺のステータス画面に、今まで気づかなかった項目が小さく点滅しているのに気づいた。

『【レンタル契約】……魔獣の貸し出し。対価は友情と保護。期間終了後の絶対返却を条件とする』

「……なんだ、これは? レンタル?」

俺がその文字を見つめていると、不意に光が膨れ上がり、マーリドがその姿を現した。

『……お前、今なんと?』

マーリドの声には、いつになく強い動揺が混じっていた。普段、どんな事態にも動じない光の存在が、信じられないものを見るような目で俺を見つめている。

「レンタル契約……俺が召喚した相棒を、他者に一時的に貸し出せる仕組みがあるみたいなんだ。どうした? そんなに驚いて」

マーリドの光が、激しく、不安定に明滅する。

『お前……召喚術の歴史を何だと思っているのだ。召喚士はみな、魔物と「従魔契約」を結び、己の魔力で絶対的に支配・制御することで使役する。魔物を第三者に貸し出すなど、この世界の魔術体系では到底あり得ぬことだ! お前という奴は、魔術の常識までをも捻じ曲げるのか……!』

俺は絶句した。この世界の召喚術とは、あくまで所有権に基づいた隷属の系譜なのだ。だが、俺が行っているのは「家族との信頼関係」に基づく召喚。だからこそ、契約のあり方も根本から異なっているのかもしれない。

もし、俺があの懐かしい「馬」を召喚し、アレンに貸し出すことができれば……。彼は安全かつ迅速に目的地へ到達できる。

「マーリド、これはリスクがあるのか?」

『リスク……? 契約条件に「大切に守ること」「絶対返却」とある以上、もしアレンという男が相棒を傷つけたり、裏切ったりすれば、その契約は破棄され、アレン自身に相棒の怒りが向けられるだろう。……ある意味、従魔契約よりも遥かに強固な絆の誓約と言えるな』

俺は窓の外を見た。暗闇の中で、森が不気味に揺れている。

アレンは信頼できる男かもしれない。だが、これは俺の家族の身を預ける行為だ。

俺はレオの鼻先をそっと撫でた。レオは「クゥン」と鳴き、俺の決意を察したように瞳を輝かせた。

「……明日、アレンに提案してみよう。彼が信頼に足る男かどうか、俺自身が見極めるために」

夜は更け、館は静寂に包まれていく。だが、俺たちの生活には、少しずつ、しかし確実に「世界との接点」が広がろうとしていた。この奇妙な出会いが、俺たちの理想郷をどこへ導くのか。まだ誰にも分からない。

第二十話、いかがでしたでしょうか。

アレンの真っ直ぐな人柄と、召喚の新しい可能性が見えてきました。

「従魔契約」が当たり前の世界で、信頼だけで成り立つ「レンタル」は、まさに異端の力。奏多の決断が、アレンの冒険を加速させます!

次回:

「駆ける大地! 召喚された愛馬と、フォレストゴブリンの集落」

お楽しみに!

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