第百三十二話:管理人と勇者! 似たもの同士が導き出す、真実への鍵!
聖域の館、静かな午後の光が差し込むテラス。
外界から隔絶されたこの場所で、管理人の風間奏多と、真実の英雄を志す勇者アルトという、本来交わるはずのなかった二人が対峙していた。
彼らが語り合うのは、世界を覆う「情報の闇」と、佐藤蓮という名の英雄の皮を被った傲慢な怪物について。似たような理不尽に晒され、同じ被害者としての立場を共有したとき、二人は世界を覆う霧の正体――「真実への鍵」に触れ始める。
「まず、スマートフォンというこの端末の正体を教えておく。これは元々、帝国が血道を上げて開発していた魔導具だ。科学と機械、それに高度な魔術を融合させた帝国の技術力の結晶……と言えば聞こえはいいが、要は『監視と制御のための装置』なんだよ」
俺はアルトの手にある黒い板を指差しながら、淡々と言葉を紡いだ。
「何者かによって設計図が持ち出されたことで、各地で再現や模倣が試みられるようになった。今、お前たちが持っているのはその精巧なレプリカの一つだ」
アルトは真剣な眼差しで、手の中の端末を見つめた。
「……なるほど。これが帝国の技術……」
「コイツは使用者の魔力を吸い取り、それを動力源にして動く。そのため、魔力が低い人間にとっては、使いすぎれば身体に負荷がかかる危険な代物でもあるんだ」
アルトが深く頷く。
「確かに、使っていると体内の魔力がゆっくりと削られていくような、独特の消耗感がありますね」
俺は苦笑して、自分のスマートフォンをポケットに仕舞った。
「俺の故郷では『スマホ』と呼ばれていた代物だが、俺が知るそれとこの世界のスマートフォンは、名前が同じだけの別物だ。特に佐藤蓮のような連中に言わせれば、娯楽要素の一切ない、実用メインの『ただの道具』でしかない。彼らにとっては、面白みのない年寄り向けか、子供の遊び道具にしか見えないんだろうよ」
「……確かに、ダンジョンの場所や地図を調べるには便利ですが、言われてみれば『道具』以外の何物でもないですね」
「それで? さっきの話の続きだが……その佐藤蓮たちに会って、二度と会いたくないと思った理由を詳しく聞かせてくれ」
その質問に対し、これまで静かだった僧侶の少女が、震える拳で語り出した。
「1ヶ月前、とあるダンジョンで鉢合わせました……。あいつら、私たちが同じ勇者だと名乗った瞬間、嘲笑いながら『下級の勇者が道を開けろ』と言わんばかりに馬鹿にしてきたんです! 世界に勇者はたった100人しかいない。本来なら協力すべき相手なのに、仲間を尊重することもできないなんて……!」
魔法使いの少女も、悔しさを滲ませて続ける。
「私ですら、あんなクズ集団は初めて見ました! 勇者というのは、魔王を討伐する強さだけでなく、人々に希望を与える存在であるべきなんです。力だけを誇示し、弱者を踏みつける……あれが英雄だなんて、私には認められません!」
アルトが重い口を開いた。
「あれ以来、僕たちは彼らが心底嫌いです。もしあんなのが世界の中心であり続けるなら、魔王を倒す前に、世界は彼らの傲慢さで滅んでしまう……そう本気で危惧しています」
俺は冷えたティーカップを置き、静かに告げた。
「……俺も、この館に来るまでに散々馬鹿にされてきた。ある意味、俺たちも佐藤蓮からの被害者っていう意味では似たもの同士かもしれないな」
その言葉に、アルトは驚き、そしてどこか安心したように表情を和らげた。
「……管理人のあなたも。そうですね、立場は違えど、僕たちは同じ『理不尽』を見ているのかもしれません」
「だが、皮肉なもんだよ。佐藤蓮一派が帝国に目をつけられているおかげで、お前たちはひっそりと旅を続けられている。佐藤蓮が目立ちまくっているからこそ、帝国も彼らを優先的に狙っているんだろう?」
アルトはハッとした。
「……確かに、僕たちが今まで直接的な帝国の襲撃を受けずに済んでいるのは、彼らが『囮』のように目立ってくれているから……」
「油断は禁物だが、帝国にとって佐藤蓮は目立ちすぎるがゆえに、むしろ操りやすいのかもしれない。傲慢な奴ほど、自分の地位を守るためなら、帝国の甘い言葉に乗りやすいからな」
俺の言葉に、アルトたちは表情を引き締めた。
聖域という安らぎの地で、二人の「疎外された者」が視界を共有したとき、世界を覆っていた霧がわずかに晴れ、帝国と佐藤蓮の結託という「真実への鍵」が姿を現し始めていた。
第百三十二話、いかがでしたでしょうか。
管理人と勇者、二人の視点が重なり、世界の裏側が見え始めました。
しかし、帝国のスパイはすぐそこまで迫っています。次回、聖域に危機が訪れる!?
次回:
「聖域に忍び寄る毒! 新入り10人の正体と、館の守護者たち!」
お楽しみに!




