第百二十八話:どっかの誰かとは大違い!? 純粋すぎる勇者と、商人の驚き!
森の暗闇を切り裂く光の矢が、影喰いたちを葬り去った。
そこに現れたのは、磨き上げられた鎧に身を包み、濁りのない瞳を持つ若き勇者の一行だった。佐藤蓮ら「勇者一行」の傍若無人な振る舞いに辟易していた世界において、彼らの存在はまさに一条の希望である。
しかし、ガルドスたちにとって、その出会いは衝撃の連続だった。彼らから漏れる「勇者という肩書き」への苦悩と、そして佐藤蓮一味に対する激しい憤り。
聖域の動物たちが繰り広げる圧倒的な武力と、純粋すぎる勇者たちとの邂逅。森の中の戦場は、一瞬にして社交と激論の場へと変貌した。
キングが低く唸り、クロが蹄で地面を叩き、オウギが頭上で鋭い鳴き声を上げながら旋回する。影喰いたちは、聖域から送り出された精鋭たちの前に、一匹残らず蹂躙された。
「これで……全員倒せましたね」
戦いの余韻が漂う中、若き勇者は聖剣を鞘に収め、穏やかな声でそう告げた。彼はガルドスやエリスに対して、警戒の色を微塵も見せずに歩み寄ってきた。
「ところで、そちらの魔物たちは? 僕たちと一緒に戦ってくれたのですが、味方……でいいんですよね?」
エリスは剣を収め、堂々と胸を張った。
「当然だ。彼らは『聖域』に住む館の管理人が召喚した『動物』と呼ばれる存在。魔物とは似て非なるものだ。我々の強力な味方であり、家族でもある」
ガルドスは安堵のあまり、へなへなと座り込んだ。
「助かりましたぞ! まさかこんな場所で援軍に会えるとは……。ところで、君たちは何者なんだ?」
青年は爽やかに微笑み、恭しく一礼した。
「失礼しました。僕の名前は**『アルト』**。世界を旅する者であり、志を同じくする仲間と共に、勇者として魔王討伐の旅をしています」
その言葉を聞いた瞬間、ガルドスの表情が凍りついた。彼は即座にエリスの影に隠れ、露骨に嫌悪の表情を浮かべる。
「ゆ、勇者……だと?」
エリスもまた、眉をひそめてアルトを見つめた。
「……嫌そうだな、ガルドス」
「当然だ!!」
ガルドスは堰を切ったようにまくし立てた。
「確かにアイツらが強いのは知ってる! 噂じゃ誰も手がつけられないほどだってな! でもなぁ、常に傲慢でプライドが高く、他者をゴミのように扱う態度なんだよ! あんなの、勇者と名乗ってたら世界が滅びるぜ! あれは『勇者もどき』だ!」
アルトは驚く様子もなく、むしろ深い溜息をついた。
「……ですよね。ここ最近、佐藤蓮一味のせいで、僕たちのような志を持つ勇者たちのイメージまでが悪化しているんです。何も悪いことをしていないのに……」
僧侶の少女が悔しそうに拳を握りしめる。
「1ヶ月前、とあるダンジョンで鉢合わせました。あいつら、私たちが同じ勇者パーティーだと知るや否や、嘲笑いながら馬鹿にしてきたんです! 世界に勇者はたった100人しかいないというのに、仲間を尊重することもできないなんて……」
「魔法使いである私ですら、あんなクズ集団は初めて見ました! 勇者というのは、魔王を倒すだけでなく、人々に希望を与える存在であるべきなのに……」
アルトは静かに続けた。
「道徳を忘れた力は、ただの暴力です。だからこそ、僕たちは佐藤蓮とは違う、真の勇者としての在り方を証明したい。そう願って旅をしているんです」
ガルドスは自分の態度を恥じ、気まずそうに頭を掻いた。
「……すまん。オイラが興奮しちまって……。でもよぉ、さっきの共闘、本当にありがとうな? このままじゃオイラ、影喰いのエサになるところだった。……そうだ、礼をさせてくれ! ドワーフの王国に着いたら、オイラが持っている最高のフルーツビールを奢らせてくれ!」
その時、エリスがクロの背に跨り、鋭い声で叫んだ。
「おい、二人とも! 感傷に浸っている場合か! 今の戦闘の気配を嗅ぎつけて、また別の魔物が襲ってくるぞ! 日が暮れる前に先を急ぐんだ!」
ヒヒーンッ!!
クロが鋭く嘶き、キングもガオォッ!と吠えて先を急ぐ姿勢を見せる。
「あ、そうだった! 話は道中でいくらでも聞く、急ごう!」
「みんな、あの人たちに置いていかれる前に急ごう!」
アルトが仲間に呼びかけ、一行は再び森の奥へと走り出した。
佐藤蓮という負の遺産に翻弄される世界で、二組の勇者一行――一方は真の希望を求めて、もう一方は聖域の絆を運んで――今、ガルドランディア王国を目指す。
第百二十八話、いかがでしたでしょうか。
ついに邂逅した二組の勇者たち。佐藤蓮一味とは似ても似つかない、純粋なるアルト一行の存在は、今後の旅にどのような影響を与えるのか。
そして、ガルドランディア王国へ向かう彼らを待ち受けるのは、祝杯か、それとも新たな試練か!
次回:
「ドワーフの王国! 鉄の門を叩く、禁断のフルーツビール!」
お楽しみに!




