第百二十七話:激突! 虎と鷲と馬の猛攻、そして現れた意外な助っ人!
森の深淵にて勃発した、聖域の護衛隊と「影喰い」の死闘。
商人ガルドスの悲鳴を背に、トラのキング、オウギワシのオウギが咆哮する。だが、この護衛隊の真の脅威は、彼らがただの「獣」ではないという点にある。奏多の手によって鍛え上げられ、魔物狩りさえ日常とするその力は、影喰いたちの認識を遥かに超えていた。
エリスが剣を振るうまでもなく、戦場は一方的な「蹂躙」の舞台へと変貌していく。しかし、その激しい闘争の気配は、森の別の場所を歩む者たちをも引き寄せていた。
「ヒュィィィィィ――ッ!!」
上空から急降下したオウギが、その鋼の翼と鋭利な鉤爪で、影喰いの群れの隊列を空中で引き裂いた。空を舞い、肉を裂き、戦場を支配するその姿は、まさに空の王者。対する地上では、トラのキングが重戦車のごとき突進を繰り出していた。一振りで影喰いを数体吹き飛ばすその前足の威力は、もはや魔獣の域を超えている。
「ヒィィッ!? な、なんだアイツら!? 瞬殺じゃねえか! どんだけ強いんだよ!?」
ガルドスは背負った荷物を守りながら、呆然と口を開けていた。それもそのはず、目の前で繰り広げられているのは護衛などという生易しいものではなく、一方的な「殲滅」であった。
さらに驚くべき事態が起きた。これまで戦況を冷静に見守っていたエリスが、一瞬の隙を見て笑みを零した。
「……ふふ、忘れていたわ。彼らは奏多の館で、帝国軍の戦闘機を次々と撃墜し、魔王軍の幹部と互角に渡り合ってきた連中だったわね」
その言葉に呼応するように、これまでエリスを乗せていた馬のクロが、ヒヒーンッ!と高らかに嘶き、影喰いの懐へと飛び込んだ。馬とは思えない敏捷なステップと、鋼よりも硬い蹄の一撃が、影喰いの頭部を粉砕する。
蹄の重い衝撃音が戦場に鳴り響く。影喰いたちは、ただの動物だと思っていた相手に蹂躙され、成す術もなく霧散していく。
「とはいえ、数が多すぎる……!」
エリスが騎士の剣を構え直す。周囲を見渡せば、暗闇の奥から次々と影喰いが湧き出している。まるでこの森の影そのものが、彼らを捕食しようと形を成しているかのようだった。
その時である。
森の反対側の木立から、清廉な詠唱の声が聞こえてきた。
「勇者様、この辺で休憩しましょう。森の気配が少し騒がしいですわ」
透き通るような少女の声。
「そうだね、ありがとう。目的地のガルドランディア王国まであと少し……僕たちで頑張ろう!」
爽やかな声の青年。佐藤蓮とは全く異なる、洗練されたオーラと、何よりも純粋な正義感を漂わせる一行がそこにはいた。
「ん? この声って……? 魔物たちの悲鳴でしょうか?」
僧侶の少女が足を止める。彼女の視線の先――まさに影喰いたちが密集している地点で、キングとオウギが銀色の光を放ちながら暴れまわっていた。
爽やかな青年は、腰の聖剣に手をかけながら慎重に木立から身を乗り出した。その目に映ったのは、影喰いを一蹴するトラの姿と、空から舞い降りる美しい猛禽、そして軍馬とは思えぬ動きで敵を薙ぎ払うクロの姿だった。
「待ってください、あそこに誰かいます! 商人……それに騎士?」
青年が駆け出そうとしたその時、最後方から影喰いの精鋭が、ガルドスの死角を突いて飛びかかった。
キングは前方の敵に集中しており、オウギは上空。エリスはクロの操縦で手一杯だ。
「危ないっ!!」
少女の叫びと共に、青年の聖剣から放たれたまばゆい光の矢が、ガルドスを襲う影喰いを直撃した。
ズドン!!
見えない防壁が叩きつけられたように、影喰いが霧散する。
現れたのは、磨き上げられた鎧を身に纏い、真っ直ぐな瞳をした若き勇者の一行だった。
「大丈夫ですか!? さあ、僕たちの力も合わせましょう!」
その青年は、困っている人を見捨てない、まさに絵に描いたような「希望の星」だった。護衛任務は、予期せぬ第三勢力の介入によって、新たな局面を迎えようとしていた。
第百二十七話、いかがでしたでしょうか。
ついに現れた、佐藤蓮とは対照的な「純粋なる勇者一行」。
彼らの登場は、聖域の護衛隊にとって救いとなるのか、それとも新たな波乱の種となるのか。
次回予告:
「どっかの誰かとは大違い!? 純粋すぎる勇者と、商人の驚き!」
お楽しみに!




