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第百二十五話:護衛任務開始! 聖域の動物たち、商人を守り抜け!

スマートフォンが世界を駆け巡り、情報の嵐が大陸を席巻する今、聖域という閉ざされた箱庭は、皮肉にもその「平穏」ゆえに注目を集め始めていた。

帝国が支配を広げ、かつての王国が次々と歴史の頁から消えていく中、森の深淵に隠されたこの聖域は、迷い込んだ者にとっての最後の安息地――あるいは、命がけの迷宮となる。

今回訪れたのは、帝国の支配地を通るという無謀なルートを選択した、遠き島国から来た一人の行商人。彼の背負う荷物の中には、この世界の経済を揺るがすかもしれない「驚くべき依頼」が隠されていた。

前代未聞の「レンタル契約」による護衛任務。聖域の動物たちと、異邦の商人の旅が今、幕を開ける。

部屋の扉が勢いよく開き、ヴィオラが目を輝かせて入ってきた。

「話を聞いてしまったわよ! 動物たちを護衛に貸し出すなんて、面白すぎるじゃない! でもねガルドスさん、アンタ、奏多と『一時的レンタル契約』を締結しなきゃいけないのよ? それがないと、動物たちは誰の指示にも従わないわ」

俺が頷くと、ガルドスは呆気にとられた顔で俺を見た。俺は改めて「レンタル契約」について詳しく説明した。

本来、この世界における従魔契約は「絶対服従」を強いる過酷な鎖だ。主人に逆らえば死を招くような契約が一般的であり、魔獣の貸し借りなど、夢物語か、あるいは俺が正気を失ったとしか思えないだろう。

だが、俺が結ぶ契約は違う。それは「友情と信頼」という名の絆を結び、期間終了後に必ず元に戻るという、極めて平和的かつ尊厳を守る契約なのだ。

「し、信じられないな……まさかそんな契約があるとは。普通なら他人の従魔を借りるなんて自殺行為だぞ」

「俺専用だけどな?」

「……じゃあ、オイラから見てコイツ強そうと思う奴がいるのなら、ソイツに頼みたい! 例えば……あの窓から見える、虹色のデカいドラゴンとか!」

ガルドスが指さしたのは、庭でうたた寝をしているハルだった。ヴィオラが呆れたようにため息をつく。

「確かにハルならすぐに到着できるかもしれないけど……ドラゴンの時点で国中が大騒ぎになるのよ? だってアイツ、この大きさで若い個体だけど、血筋は伝説のバハムートなんだから!」

「そうなの!?」

ガルドスが腰を抜かしそうになる。俺も思わず苦笑いだ。

「うん、流石に俺もオススメしないよ」

マーリドが光りながら毒づく。

『言っておくがドラゴンは最強の魔獣だ。ソイツの背中に乗って国へ行くことは、世界を支配せんとするほど優れた召喚士や賢者と思われるぞ。お前はただの商人だろうが? 身の程をわきまえろ』

「ごもっとも……ってか、今喋った!?」

ガルドスが悲鳴を上げる。

「もしかして、ふわふわと飛んでるこの小さな光から喋ってるかもな?」

「精霊って奴か!?」

『……まぁ、今はそういうことにしておいてやろう』

マーリドがふてぶてしく答えたその時、カチャリと扉が開き、エリスが凛とした足取りで入ってきた。

「ならば私を連れて行け。ちょうどクロに乗れたんだ。練習に行かせて欲しい。すぐに動物たちを引き連れて帰ってくることを約束する」

ガルドスがエリスをまじまじと見て、目を剥いた。

「お、お前は確か、エリュシオン王国の騎士団長ガルスの弟子として有名な最強の女騎士エリスか!? というかよく見たら、滅ぼされたアルカディア王国のルミナ姫様に……エリュシオン王国で知らない奴がいない変人魔物研究家ヴィオラもいるのか!?」

「変人って失礼ね!」

ヴィオラがムッとする。場が騒がしくなりそうだったので、俺は手を挙げて制した。

「みんな落ち着いて! とりあえず、もう遅いから一旦寝よう。そして俺が護衛に適した動物を選んでおくからね。エリス、お前は一時的に俺とレンタル契約をしてクロをレンタルする?」

「あぁ、ガルドスを連れて行くのなら、私が動物たちを率いて護衛をしよう。騎士として、商人一人守り抜くことは造作もない」

エリスの瞳には、かつて戦場を駆け抜けた騎士の誇りが宿っていた。

翌日、朝霧が立ち込める庭に、出発の時が訪れた。

選抜されたのは、圧倒的な武力を持つトラのキングと、上空から獲物を見逃さないオウギワシのオウギだ。そしてエリスの駆るクロ。

「よ、よろしくな……オイラをガルドランディアまで無事に送り届けてくれよ」

ガルドスは、トラのキングの巨大な牙を見上げて引きつった笑いを浮かべた。キングは面倒くさそうに一度だけ唸ったが、エリスがその背中を叩くと、大人しく姿勢を低くした。

「私が今から案内を務める。しっかりついてこい」

エリスがクロの手綱を引き、先導する。

「ヒヒーンッ!」

クロが軽快に嘶き、出発の合図を送る。

ガルドスはキングの背に跨り、オウギワシのオウギが頭上で旋回するのを見上げながら、深い森の入り口へと進んでいった。

その背中を見送りながら、俺は改めて感じた。

スマートフォンが情報をもたらし、世界を繋ごうとしている裏側で、俺の召喚した魔獣たちが、一人の商人の命を懸けて守り抜こうとしている。

技術の進化よりも、人と動物の絆こそが、この殺伐とした世界を渡るための真の光になるのかもしれない。

旅路はまだ始まったばかりだ。帝国の影が森の奥で蠢く中、彼らは無事にガルドランディアへと辿り着けるのだろうか――。

第百二十五話、いかがでしたでしょうか。

ついに始まった護衛任務! 勇者ではなく、商人と騎士と動物たちのパーティが誕生しました。

カラスたちの会議、そしてエリスの先導。聖域の絆が世界をどう変えるのか、物語はますます加速します!

次回:

「護衛任務! 森の暗闇から現れた、最悪の捕食者たち!」

お楽しみに!

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