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第百十六話:通信革命の拡大! アヴァロンとエリュシオン、聖域の絆が全土へ!

通信革命の火蓋は切って落とされた。

聖域で育まれた「生存のための技術」が、いま現実の距離を無力化し、戦乱に喘ぐ世界を繋ぎ直そうとしている。

アヴァロン、ガルドランディア、そしてエリュシオンを結ぶ絆の回線が開通した余韻も冷めやらぬ翌朝、聖域の平穏は、突如として空を覆う黒い影と、森の奥から響く重厚な足音によって破られた。

集いしは、技術を渇望するデーモン族の技術者集団と、誇り高きドワーフの工匠たち。そして、帝国の機密が流出したという噂を聞きつけた各王国の科学者たち。

聖域は今、単なる隠れ家から、世界を変える「技術開発の特区」へと姿を変えようとしていた。

翌朝、聖域の周囲は未曾有の喧騒に包まれていた。

まだ未完成の小屋を建てていた動物たちも、作業の手を止めて空を見上げる。雲を突き抜けて飛来したのは、魔力で強化された翼を持つデーモン族の技術者集団。そして、森の深部からは、轟音を響かせながらドワーフの大群が進軍してきたのだ。

ヴァルが驚きに目を見開く。

「みんな……俺の呼びかけに応えて、本当に来てくれたのか!?」

先頭に立った一人のデーモンが、無骨な笑みを浮かべてヴァルの肩を叩く。彼はデーモン族の技術長『バルバス』だった。

「当たり前だ、ヴァル! テメーらが命懸けで持ち出した情報を、俺たちが形にせずにおけるかよ! 帝国という独裁国家が独占していた技術を、俺たちの手で解放する……これぞ俺たちの悲願だ!」

その後ろから、ドワーフの長老格と思われる男が、巨大な髭を揺らして歩み出る。

「俺はガルドランディア王国の技術班長、『モルガン』だ! テメーらだな!? 噂の『スマートフォン』の再現を成功させた野郎どもは! 俺たちドワーフは、魔術そのものよりも物質的な構造計算や、熱伝導の効率化には自信がある! 今から腹を割って話し合おうぜ。必要な素材、回路の焼き付け方……全部だ!」

モルガンは豪快に笑いながら、地面に巨大な設計図を広げ始めた。

「どっかの名のある怪盗が、帝国の心臓部へ忍び込んで盗み出した設計図を流出させたって話だ。世界一の大泥棒に感謝しねぇとな! 帝国が『軍事的実力社会主義』とかいう腐った思想で隠蔽していた技術、俺たちが真っ当な用途で世界に広めてやる!」

俺はただただ、このカオスな状況に圧倒されていた。

「おいおい、一体何がどうなってるんだ……?」

肩の上のマーリドが、小さく光りながら愉悦の表情を浮かべる。

『フフフ……奏多よ、これは始まりに過ぎぬ。今からこの聖域で、世界を変える技術の連合が結成されるようだな。帝国が粛清と暴力で支配しようとする世界で、これだけの知恵が結集したのだ。ここから先は、退屈とは無縁の面白き時代になりそうだぞ』

その時、空の向こうから鋭い風切り音が響き渡った。

見上げれば、洗練された機体のシルエット。以前、セレスティア王国の食糧危機を解決する際に活躍したエリュシオン王国の戦闘機が、編隊を組んで聖域上空を旋回している。

「……アレはエリュシオン王国の機体だ! だが、あんな最新型は見たことがない……まさか!」

機体が滑らかに聖域の広場へ降り立ち、中から二人の男が姿を現した。一人はエリュシオン王国の技術顧問『セオドア』。そしてもう一人は、厳格な面持ちをしたアヴァロン王国の科学ギルドマスター『エドリック』であった。

セオドアは俺を見つけると、親しげに歩み寄ってくる。

「奏多さん、お久しぶりですね! セレスティア王国の皆様も、あの時の支援以来、ずっと幸せそうに日々の糧を享受していると聞いていますよ!」

「セオドアさん! それはよかった。ルカもあの時の成果を未だに大喜びしているよ」

「それは何よりです。……ですが、今回我々がここへ来たのは、単なる再会のためではありません。陛下からの特命……帝国から流出してしまった、あの通信魔導具『スマートフォン』の件についてです」

アヴァロンの科学ギルドマスター、エドリックが静かに一歩前に出る。

「エドリックと申します。ゼノさんから、この地で通信魔導具の再現が進行していると聞き、アヴァロン王国の総意として技術提供を申し出ました。我が国の精鋭科学者たちも同行させています。帝国が他国を分断し、監視するための道具としていたものを、我々は民と民を繋ぐための絆として利用したいのです」

デーモン族、ドワーフ、そして二大王国の科学者たち。

かつては分断され、争っていた種族や国家の垣根が、今、この聖域という小さな庭で溶け合おうとしていた。

「皆の目的は一つだな」

俺がそう呟くと、モルガンがニヤリと笑った。

「帝国が作った汚ねぇ『実力社会主義』の壁を、俺たちの技術で風穴を開けることだ! 奏多さん、あんたが提供してくれた『聖域』という環境、そしてあんたの度量が、この開発にとって最高の土壌になるはずだ!」

こうして、聖域は急激に拡大する「技術解放の拠点」へと変貌した。

帝国が恐怖と粛清で縛り付けようとする世界で、俺たちは自由な知恵と技術を交差させ、明日を切り拓く通信網を構築し始める。

聖域の絆は全土へ。世界を巻き込む、巨大な革命の歯車が回り始めた。

第百十六話、いかがでしたでしょうか。

デーモン族、ドワーフ、そして二大王国の科学ギルドが聖域に集結!

技術の融合により、スマートフォンは単なる魔導具から、世界を変える「通信革命の象徴」へと進化します。

帝国が粛清に明け暮れる間、着々と進む聖域の準備。次回、ついに通信の真価が問われる時が来る!

次回:

「聖域の叡智! 帝国を凌駕する魔導回路の開発、スタート!」

お楽しみに!

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