【番外編】勇者の妹が知る裏話
あたしの名前はキャシー。どこにでもいる村の女の子。
だから、魔族にも簡単に攫われてしまった。普通、魔族と戦える村娘自体いないし、攫われるよね。
ただし、あたしを攫ったのは魔王だったと数日後に判明。
他の魔族に気付かれないように隠しているところとか、数日で見つかるところとか、もう、魔物に餌をあげていた子どもそっくり。魔王なのにね。
ついでにお母さんにバレるところが、黒髪の魔族にバレて、キーファーが魔王だとわかったのだ。
あわわわわわ・・・。
村を滅ぼされない為に魔族の生贄になったけど、その魔族が魔王だったなんて・・・。
(自主的な生贄だけど)魔族には攫われるし、攫った魔族は魔王だし、魔王は片時もあたしから離れたくないからって、眠っていようが傍に置いとくし(仕事中でも同じ部屋の長椅子に寝させられる)、
キーファーったら、気に入りすぎ!!
これじゃあ、魔王じゃなくて、幼い女の子だよ!
そんなキーファーにあたしは言えない秘密がある。それは勇者の妹だってこと。
キーファーがただの魔族でも言えないけど、キーファーは魔王だから余計に言えない。
魔族にあたしが勇者の妹だってバレたら、あたしも村人も全員殺される。勇者の出た村だってキーファーに知られていなかっただけでも幸運なのだ。
だから、キーファーに攫われた時も、村の安全と引き換えに脅されて、自主的に従った。兄さんのことがバレたら、まずあたしが死ぬ。続いて、村の皆。
あたしが攫われて村は騒ぎになったかというと、キーファーもお芝居してくれて、あたしは遠いところから来たキーファーと恋に落ちて結婚する、と両親に思わせた。お父さんが牡牛殺しなんて二つ名持ちだと判明したり、色々面白かった。
でも、あたしが勇者の妹だというのがバレたら、皆、殺されてしまう。
だから、兄さんは勇者に選ばれたことは秘密。
今日もあたしは魔王の城で三食昼寝付きの条件でキーファーの傍にいる。
「何事だ? 邪魔をするなと申し付けておいたであろう?」
何をしにダレンが来たのかわからないのは、あたしもキーファーも同じだ。特におやつの時間を邪魔されたキーファーは機嫌が悪い。
「緊急事態でございます! 陛下、その娘からお離れください!」
嫌な予感がする。
「何故だ?」
「その娘は勇者の妹でございました。陛下がお心を傾ける価値もない者にございます」
「・・・!!」
とうとうバレた!!
「勇者の妹? 本当か、キャシー?」
キーファーはあたしに優しく尋ねてくる。
「それは・・・!」
ど、どうしよう・・・!
「ご覧ください。答えられないのが答えでございます」
ダレンは勝ち誇った顔で言う。ホントのことを言ってるけど、ムカつく顔だ。
「黙れ、ダレン! キャシー。ダレンが言うことは本当か?」
ダレンを叱りつけるけど、キーファーはあたしには優しい。
「・・・」
こ、ここで下手なこと言ったら、死ぬ。死んでしまう。
どうする?
どう言う、あたし?
キーファーは何も言えないでいるあたしを見て、目を閉じてしばらくしてから、ゆっくりと目を開ける。
「――わかった」
「・・・」
あたしが固まっている間にキーファーは答えを出してしまった。これから出される死刑宣告に血の気が引く。
「ダレン。勇者の顔を気に入った女を向かわせろ」
「は? 陛下、何をお考えで?」
「?」
あたしもダレンもキーファーの考えがすぐにはわからなかった。
てっきり、殺されると思っていたのに、なんで?
ダレンもそう思っていたから、口をポカーンと開けている。イケメンも台無しな表情だ。
「勇者にも幸せを分けてやるのだ。慕ってくる女がいれば、旅も順調に進まぬ。女が複数いれば尚のこと」
キーファーは悪どい笑みを浮かべ、喉を鳴らして笑う。
「ダレン。勇者がここにたどり着くまで、どのくらい時間がかかると思う?」
ダレンは少し考えたようだけど、キーファーと同じように真っ黒な笑顔になった。
「それは・・・。勇者に幸せのお裾分けとは、陛下もお人が悪い。すぐに女共に勇者の顔を見せて、送り込みます」
キーファーとダレンの不気味な笑い声を聞きながら思った。
魔王はやっぱり魔王だった。
例の三人娘はワットの顔が好みだっただけでなく、彼と一緒に旅をしているうちにその努力家で優しい性格に惚れこんでいきます。魔王からは引き延ばせと言われていますが、これ以上魔物に殺される人を出したくないワットの気持ちを最優先してさっさと魔王のもとに導いてしまうわけです。
当の魔王も一目惚れをして、そのショックで声もかけられず、数日寝込むような人物ですから、三人娘は怒られなかったと思います。
最後までお読みくださってありがとうございました。




