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「ワット! 大丈夫?! 王女さまたちに何か嫌なことされなかった?! ワットをいじめたら焼肉定食にしてやるんだから!!
王女さまの部屋を出たら、アニーとペコリーヌがいた。
アニーは外はねの黒髪をショートカットにした中肉中背の少女で、彼女の言葉からして、王女さまに呼び出された俺のことを心配してくれたらしい。
泣ける。
めっちゃ泣ける。
能力どころか顔まで平凡な俺を心配してくれる二人に泣ける。
二人と出会ったのはここ1カ月以内で、街で困っているところを助けたのがきっかけだった。大きな街で迷子になっていた二人は、村を出たばかりの俺の姿を見ているようで、ついついお節介を焼いて、王女さまたちに怒られた。
嫌なことまで思い出した。
ともかく、旅慣れない二人は俺に付いて行くと宣言して、王女さまたちはこんななんの取り柄もない男に付いて行くなんて裏があるに決まっていると言っていたっけ。
でも、裏があろうがなかろうが、王女さまたちに捨てられた俺には、付いて来てくれると言ってくれていた彼女たちしかいない。
「アニーの言う通りだよ。王女さまたちにあんたなんか勇者じゃないって言われてさ。これから出て行かないといけないんだ」
「ええ?!」
王女さまたちが言ったことがあまりにもひどかったからか、アニーが目を丸くした。
そりゃ、そうだよな。
勇者が勇者じゃないって言われて、勇者パーティをクビにされるんだもんな。
村に来たおっさん神官だけじゃなくて、都や他国の神官だって勇者認定した俺を勇者じゃないって言ったのもおかしな話だし。王女さまたちの意見で勇者か、そうじゃないとか、そんなの決められるなら、とっくに勇者なんて決まってるもんな。
「ワットだったら、勇者じゃなくてもよい! ワシは付いて行く!」
もじゃもじゃした鳥の巣のような赤毛の少女が小さな身体にアンバランスな大きな胸を張って言った。黒っぽいローブを着た彼女は魔法使いのペコリーヌだ。
ペコリーヌはおじいちゃんっ子だったんだろう。口調が古臭い。きっと、魔法もおじいちゃんに習ったんだろうな。
元から喪失していた自信を更に失くしていた俺は、ペコリーヌが見捨てない発言をしてくれているにもかかわらず、現実逃避中だ。
「私も付いて行く!」
アニーも負けじと言ってくれる。
「ありがとう、二人とも。王女さまたちはこのまま出て行けって言うんだ。二人は荷物をまとめて来てくれ。俺は宿の外で待ってるから」
「ええ?! ワット、荷物持って行かせてもらえないの?!」
「荷物くらいまとめさせてくれてもよかろうに」
「早く縁が切りたいみたいだし」
「それ、早く縁が切りたいって話じゃないよ! ワットの持ってる素材目当てだよ」
「確かに、それはあり得るな。ワットは依頼で手に入った素材を売らずの保管しとるから、それが欲しかろうて。大きな街ばかりに泊まるから、めぼしい大きな依頼はすぐなくなってしまうしのう」
で、俺たちは依頼をこなしながら路銀を稼がないといけなくなった。だけど、割りのいい依頼なんか大きな街じゃ早いもん勝ちで、勇者だって名乗っても、全部引き受けることはできない。
強い魔物や貴重な素材集めをしたくても、王女さまたちは村長の家に泊まるのも嫌がるから、野宿なんてできない。護衛が交代で俺たちとそういった場所に遠征するのが当たり前になっていた。
弱っちいと言われる俺も、旅立つまで城で鍛えられたし、こういう遠征でなんとか足手まといにならないくらいは強くなった。王女さまたちの護衛に指名された冒険者に比べたらそれでもまだまだで、それ以外の護衛の端に引っかかるくらいだ。
「だったら、私たちがワットの荷物をまとめて持って行ってあげる。あいつらなんかにあげる理由なんてないんだから!」
「そうじゃ! アニーの言う通りじゃ! ワシらがワットの荷物を持って行ってやろう」
「アニー、ペコリーヌ・・・」
二人がいい子すぎて涙出てくる。
「ありがとう! ホント、ありがとう!」
「いいって! ワットのためだし!」
「そうじゃ、そうじゃ。お主の良さがわからぬような奴は放っておけ。旅はワシらだけで充分なのだ。役立たずな王女さま共抜きで気楽にいこうではないか」
「じゃあ、宿の外で待ってるよ」
「すぐに行くからー!」
「またな、ワット」




