深層識の巫女
「あー首がいてー。昨日寝違えたかなぁ?」
「首の痛みは肩こりからも来るみたいですよ?よければ解しましょうか?」
「いや、歩いてるからいいわ、明らかヤベー奴になるし。肩こりねぇ・・、。」
そう言って自分の肩に手を回して軽く握る響。しかし、手力を込めた瞬間その表情は戦慄のものへと変わった。
「なん、だと・・・。」
『どうかしたの?』
「カッチカチに固まってやがる・・・。、犯罪的だよこれ。おかしいって人体が出していい硬度じゃねぇよこれ。双子座の黄◯聖衣を圧縮して百分の一ぐらいにしたレベルだよこれ。」
「なんなんだよその例え。ビミョーにわかり辛い上に伝わりもにくいって。」
「いや揉めばわかるって。ほら。」
そう言って差し出された肩へ、章太郎は渋々しょうがねぇなぁとったふうに手を乗せる。
そして、先程の響と同じような表情を浮かべて驚きの言葉を口にした。
「はっ、な、なんだこれ。この薄いダイヤモンドの板を何百にも積み重ねたような硬さは。まじで人間が出していい強度じゃねぇよ。」
「そない大袈裟に言わん・・・あず◯バーや。」
きっとその何百倍も固いのだろうが、一番納得できる例えだった。多分アイスがそんな硬さを出すわけがない的な意味合いで似ているのだろう。
「なんでこんなに凝ってんだよ。俺べつに・・・、・・・色々あったもんなぁ。」
軽く思い返しても、思い当たる節しかなかったらしい。こっちに来てから響自身、激動と言えば激動の日常を過ごしてきたのだから当たり前と言えばそうか。何度も死にかけてるし。
「自己管理もできだないなんて随分なご身分ですわね?たるんでいるんじゃありませんこと?」
「原因の過半数のオメーが言うんじゃねぇよ!!しまいにゃその出来の悪い頭ん中揉み混んでやろうか!?」
「あら、だったら自分のせいですわね。自業自得ですわ余計哀れですこと。」
「殺す。」
「あーもう何でお前らはそう普通の会話ですぐに臨戦状態に入れるんだよ!毎度止めるこっちの身にもなれや!!」
走行してる間にはや数十分。響の肩こりがどうなったかはわからないが、(そもそもけほども興味もない)
ようやく目的地へとたどり着いた。
そこはこの都市近辺でもっとも大きいであろう神社の手前だ。名を。最近リフォームでもしたのか、塀の色が綺麗な白色を誇っていた。
「大きいですね。前回訪れた所もかなりの敷地を誇ってましたが、ここは・・・。」
『お城みたい・・・。』
「下手したら首里城より大きくないか?ヤベェぞこの大きさ。」
「さすがにそれはねぇよ。首里城ってあの広場的な所意外にもあるかんな?実際あそこ公園みたいなもんだし。」
「・・・そういや俺ら修学旅行行けねんだよなぁ。」
「これも一種の修学旅行みたいなものでは?」
「いやだなぁこんな修学旅行。」
十勝が顔をしかめてそう口にした。
「常に死と隣り合わせの青春イベントなんて嫌だよ。」
「しかも、現状私達は帰れないと来てる。ちょっとしたデスゲームじゃないか。」
「「「「「「沖縄行きたかったなぁ。」」」」」」
悲壮感に、皆の声が重なる。
「個人でいきゃいいだろ。金は戻ってくるだろうし・・・多分。」
「みんなで行くからいいんじゃないか。少人数旅行じゃ味わえない楽しみがあるんだよ。」
「だーから学校を介さないで行けってことだよ。そしたら変わんないでしょーが。」
「あ、成る程。でも高くね?こういうのって修学旅行だから安くなってんじゃないのか?」
「そこらは俺もしらねぇなぁ、興味もなかったし。まぁ、金でも適当に見繕って持ち帰りゃいいだろそれで金になる。」
「持ち帰れたらだけどね。っていうか霧村君いるなら飛行機代いらないんじゃない?」
「バカかオメーは。そこに行くまでの移動手段も楽しむのが旅行ってもんだろ。そんなこともわからないとか痴呆ですがこのヤロー。だいたいお前らには風情ってもんがねぇ。そんなんで人生の一体どこがおもしれぇんだよ。生きてて楽しいかお前ら。全くこれだから乙のなんたるかも知らない青二才は・・・。」
「なんで私ここまでボロクソに言われなきゃいけないの?」
戯言をかましつつ、一同は境内へと足を踏み入れる。大きな神社故か、観光客らしきものが見受けられる。とはいえども日本のごった返すほどの人混みほどでもなかった。観光といっても、テレビによる客寄せもなく、また場所も主要都市から遠いということで、それこそ旅の人や金持ち、もしくは余程酔狂な人間しかいやしない。それでもそこそこの人数がいるあたり、隠れた名所という奴なのだろう。
今回は、以前のとは違いすでに必要な情報は全て手に入れているため迷うことなくまっすぐ向かっていく。
そうして着いたのは事務所らしき場所、受付を任されている巫女二人に響は声をかけた。
「ねーちゃんたち、ちょっといいか?」
「は、はい。何かご用でしょうか?」
「あぁ、ここの神主に用があってな。呼んでもらえるか?」
「神主ですか、少々お待ちください。ただ今お呼び・・・。」
「その必要はありません。」
「!屠様!!」
凛と澄んだ女性の遮る声が聞こえて、そこにいた全員が対応していた巫女の後ろに注目する。
そこには神主と思わしき男ともう一人、あきらかに他の巫女とは違う少女が佇んでいた。
まず、装いが違う。巫女服であることに変わりはないのだが、細かな装飾や、より動きやすいような作りになっている。また、その腰に刺された三振りの日本刀も異質さを際立たせていた。
また、顔立ちも整っているようで、腰まで伸ばされた髪は、真白に透き通り、混じり気のない純白そのものだった。ただ、整っているようと憶測になっているのは、顔の半分が隠れているからである。
というのも彼女の目は光を失っているのか包帯で巻かれていたからだ。なので上半分が全く見えないのである。
「へぇ、お出迎えとは驚いた。まるで俺らが来るのがわかってたみたいだなぁ。」
「えぇ、境内に入ってきた瞬間にわかりましたよ。奥へ行きましょう。公の場で話すようなことではありません。このえさん、彼らを通してください。」
「は、はい!!」
「それじゃ失礼しますかねっと。」
それから響達は、二人の案内で建物の奥へと連れられていった。五分ほど歩いたのち、ようやくたどり着いた部屋はただの客間ではないようで、やけに書籍が積まれていた。
「まずは自己紹介から、私はここで神主を務めさせてもらっている阿頼耶識暦庵と申します。そしてこれが娘の・・・。」
「屠です。以後お見知り置きを。」
響達も、名乗る程度の挨拶を済ませる。
「あなた方の目的は、この神社に封じられている存在で間違いありませんね。」
「あっちゃいるが、さっきの入ってきた瞬間に気づいただの、なんも喋っちゃいねぇのに用件把握してることといい、どういうことだ?」
「受け継いだ者の存在というのは特殊。それが自身が維持している結界内に侵入すれば否応にもわかります。」
「・・・。」
響の顔つきが変わる。平時のふざけた態度のそれから、険しいものに。
「知ってるのか?」
「えぇ、少なくとも知識だけで言えば貴方がたよりは多くのものを持っています。」
「じゃぁ、直球で聞く。お前、何者だ?」
「ここに封じられるは、王。かの悪王を封じるために作られたのがこの神社であり、その結界の意地と封印の一切を受け継いでいるのが私です。まぁ、門番だと思って貰えば問題ありません。」
「王ということは、13の中で一番強いって認識でいいんですの?」
リコリスの問いに、屠は首を横に振って答える。
「それは違いますね。王というにはかつて彼がそうだったというだけで、総ているというわけでも最強というわけでもありません。また、受け取る力も然りです。たしかに本体の強さというのは影響します。しかし、一番大切なのは相性。人によってfamiliaよりgroly、またその逆、あるいは同等ということもあります。まぁ、十三番目だけ例外ですが。」
「例外、ですか。それは一体?」
「それは私の口からは。その時になって選ばれて見なければわかります。」
「(選ばれるねぇ。つまり一人か二人、いや最悪誰も手に入れられなくなると・・・。ただ倒すだけだとダメなのか、もしくはそもそも倒せやしないのか・・・ま、今からんなこと気にしてても身がもたねぇか。)しかしお前さん随分と詳しいじゃねぇか。王とはいえたった一人ぼっちを封じてるだけの巫女の口からfamiliaやgrolyなんて言葉が出てくるとは重わねぇんだが?」
疑いの目を向ける響にも屠は動じない。湯飲みの中の緑茶を一飲みしてから静かに答えた。
「かの王の封印を司ってきた巫女にはもう一つ、管理者としての役目があります。いつか現れるその力を手に入れた者のため、そして彼ら世界の敵のことを、いつか果たすべき大義を果たすための存在。その役目を受け継いだものは、証として体の一部を失った状態で生まれます。私の場合は視力ですね。」
自分の目を帯越しに指差しながら説明をする。そこで響は気になったのか、巫女ではなく神主の方を見やって軽く体を目で確認して見た。しかし、どこにも欠損部位など見当たらない。
そして、そんな響視線に何を考えているのかを察したのか暦庵が答える。
「その役目を受けれるにはの血が流れた女性だけです。私はただの神主ですよ。先代はこの娘の祖母、私の母です。」
成る程、その先代の世継ぎに女児は生まれなかったのだろう。
しかし、これは思わぬ誤算だった。響達は当初いつも通りここにいる輩を討ち滅ぼし、その力を頂戴するだけのつもりだったが、まさかまさかかような存在に出会うとは。おそらく彼女であれば残りが誰でどこにいてどのような力を持っているのかも知っているだろう。そうなれば今後の活動もかなりスムーズに進むはずだ。
「そ、それなら、はやくそ、その王様のところまで連れてって封印を解いて。」
ともかく、ソフィアの言う通り今は本来に目的で目先の敵であるその悪王とやらを叩くのが先だ。
「いえ、それはできません。」
『な、なんで?』
「簡単です。あなた方が弱すぎるからですよ。その程度では死にますよ。先程最強ではないと言いましたが、上から数えた方が早い相手です」
「いってくれはりますなぁ。なんもみいひんとそないなことわかりはりますの?分からへんやろ?」
「見ずともわかるといっているのです。特に貴女は話になりません。なぜ彼らといるのかも、なぜ力を受け取っているのかも疑問でなりません。」
にべもなく、ただ冷たくそう言い放つ。
そんな言葉に、辿は何も返せなかった。自分でもわかっているのだ、あきらかにリコリス達と比べて劣っていると。現時点ですでに後入りのベロニカにすら負けていることも。
唄に合わせて数多のことができるのはいい。だが、態々唄を口にせなばならぬというのはあまりに無駄でしかなかった。それで相応の威力が出るのであれば良かったが、超高火力というわけでもない。
そもそもまず前提として戦闘に置いて役割がない。前線で敵を撃つパイフェンと響。その二人にしたって戦闘スタイルの違いがある。状況を把握しつつそれを伝え、適格なサポートを行いいざとなれば前衛に出れるソフィアは大切な存在、ルールーは遠距離の専門家として。辿のそれはくくりに入れるとすれば魔法と似たものだろうが、そんなものリコリスとベロニカの二人で十分だ。長所の手の届く範囲の広さも響やリコリスでだいたいカバーできる。
そして、そんなことは本人が一番わかっていて、ずっと気にしていることだった。だからこそ、何も言い返せず、唇を噛みしめ黙るほかなかった。
「・・・、ったく、え?随分といってくれんじゃねーか巫女様よぉ。んなこと言われてハイそーですかと引き下がるとでも?なんなら神社ごと消し去って引き摺り出してもいいんだぞ。」
容赦なく切り捨てる屠に腹を立てたのか、輩みたいなことを言いながら響は眼光を尖らせる。
向こうも見た目に反して好戦的なのかヤル気MAXだった。
「では、外に出ましょうか。私に勝てば認めて封印をときます。勝てれば、ですが。」
「その余裕ヅラ原型わからなくなるまで殴り潰してやるよ。」
少なくとも、女性に対していう言葉ではないことは確かだ。




