この世のほとんどの事は武力か金でどうにかなる。
「よーし、ちゃんと数えろよ。 あとで足りませんとか言っても受け付けねーかんな。」
そう言ってパンパンに中身の詰まった麻袋をベロニカへと手渡す。金額の確認というのは大切だと思うが、それにしたって数が多いい。なんならそれだけで小一時間はかかるレベルだ。
と、見ての通り今は支持金額を渡すためにベロニカの工房兼自宅へと足をおもむけていた。ちなみに全員で来るほど広くもないので前会った六人プラス製品所持予定のルールーの七人となっている。
「何枚あると思ってるんだおい。そんな簡単に数えられるわけないだろ。」
「オーケーお前は一回小学校からやり直してこい。計りという人類の知己を知らないのかもしくは比重からの計算という方法が出てこなかったのかどっちかは知らんが明らかに恥ずかしいことのたまってるからな?」
「待て、そこまで言われることか!?確かに今のは馬鹿発言だったかもだがそんななじられるようなほどのことでもないだろ!?」
「どうも、人を必要以上に攻め立ててその表情を見るのが好きな男ーーー。」
「ただのクソ野郎じゃねぇか!!」
「byド◯小西。」
「人に擦りつけやがった!!ド◯小西激しく風評被害受けてるじゃねぇか!!明らか本人の関係のないところでしかも把握してねぇところで!!」
「お前ド◯小西が俺にしたことを知っていてもまだそんなこと言えるのか・・・?」
「なにか縁があるのか?あのファッションデザイナーと霧村との間に一体なんの関係が?」
だとしたらそう言った行動に出ても、みたいな雰囲気になっているが断じてそんなことはない。ただ、それでも理由というのは大切なもので、それを踏まえて章太郎が聞いてみる。が、甘かった。
「寧ろ逆に聞きたいんだがあると思うのか?普通に考えたらあるわけねぇじゃん。そもそもムシュー◯の人としてしか認識してないし。」
「じゃぁなんなんだよさっきのセリフは!!なにか思わせぶりなこと言いやがって!!」
「あー・・・お!あるじゃねぇか。特に何もない赤の他人という関係性が。」
「それを世間一般では関係性皆無って言うんだよ!!」
「えぇ!?」
「そんなマ◯オさんみたいに驚くな!あと知ってってわざとやってるのバレてるからな!?」
「驚き方までいちいち指示するとかお前何様だよ!」
「散々人小馬鹿にしといてお前が何様だよ!!なんでお前はそうやって特大のブーメランを気にもせずぶん投げれるかなぁ!?」
「はっはっは、途中で朽ちるほど思い切り投げてやればいいだけの話よ。」
「驚くほどの暴論!」
「どうも、暴論ーーーー」
「言わせねぇよ!?」
我が家風にツッコミを入れつつ、ここまでの怒涛のやりとりに体力を大きく消耗したのか肩で呼吸をしてゼーゼーと音を立てるW太郎。そんな二人を見て何か思うところがあったのか響はさも不思議そうに口を開いた。
「なぁ、そんなに突っ込んでて疲れないか?」
「「疲れるよ!お前のせいでなぁ!!」」
「む、なんでも人のせいにして擦りつけるのは良くないぞ!」
「それをお前から言われるのは屈辱以外の何物でもねぇなぁ!!というかなんかさっき似たようなことあったなぁ!」
「ははは、こうやってお前らは俺の手のひらで踊らされていくのさ。全て計画通り。」
「全部読んで誘導していたと!?だとしたらもうお前それでくっていけるわ!そんなやつ相手にしてると思うと泣きたくなってくるが!」
「嘘だ。」
「はえぇ肯定だなおい!」
「ほんとはただのイ◯ナミだから安心安全だぞッ☆」
「確かにこの世界ならNA◯UTOの術出来そうだけどもさッ!三万歩譲ったとしてどこに安心安全な要素があるってんだよ!!何一つ安心できねぇわ!」
「ア◯テラスに比べたら安心安全じゃねぇか。」
「比較対象がおかしい!?というかそもそもお前は写◯眼持ってねぇじゃねぇか!」
「俺レベルになると写◯眼なくたって別天津◯ぐらい出せるかんな。しかもイ◯ナミで目を閉じ潰す必要もないからな。神◯だってノーリスクノータイムで使用可能だ。」
「そのうち輪廻◯でも発症しそうな勢いだなぁおい!!つうかなんなんだよさっきからのこのNARUT◯論争は!話脱線しまくってんだよ初めからどんだけ時間喰ってんだよ!!」
「だいたい千七百文字くらいだな。」
「メタいこというな!!」
と、ここでようやく響も満足したらしい。結局ここまで散々ふざけ倒して満足したから収集するまでもなく切り上げるとは、毎度毎度迷惑なやつだ。
そしてこの世界一不毛なやりとりの合間にベロニカの方も数え終わったらしい。そりゃあ入れたお茶がすっかり冷めるぐらいには時間があったのだから終わるだろう。しかも暇している全員でやったのだからたとえいちいち数えてもちょうどいいくらいである。
「えぇ、ちょうどありました。これであとは私が完成させるだけですね。といってもそちらは長くて一週間ほどかかりますが。」
「そこに文句は言わねーさ。作ってもらってる身だからな。まぁそこいらあればちょうどいいかね。」
そう言って顎に手を乗せるあたり何か計画があるのだろうか。まぁ一週間もあれば大抵のことはできるだろうし大げさか。
と、ここでいきなり入り戸が激しく叩かれる。それは鳴り止むことはなく次第に激しさを増していき、確実に蹴り飛ばしてるだろうそれと言わんばかり。大目に見ずとも近所迷惑以外の何者でもない。
「うるせぇなぁ、何借金取りでも来たのかよ。」
「・・・凄いですね、なぜわかったのですか?」
「合ってた!?薄々勘付いてはいたがやっぱりか!」
あれだけ膨大な金額を提示されたらその考えも自ずと出てこよう。響の感が鋭いと言うよりかはわかりやすかっただけ。今思えば初めて会った時も金に困っていたし今更驚くほどのことでもないか。
「あ、ですがもう問題はありませんよ。ここに全額分ありますから。」
「でしょうね。そりゃ俺もそうするわ。今更文句とかねーけど。」
「当然です。返す気は毛頭ありませんから。」
「いやそれはそれでどーなのよ。」
「・・・ちょっと出てきますね。」
「おおい、ごまかすんじゃねぇよ。しかも誤魔化しきれてないからな?ただ強引に話を切り上げただけだかんな?そして罪悪感はあるのな。」
「それはそうだろ。これを嬉々としてやってたら人の心持ってないって。」
「だよなー。まぁ俺はそんなもん感じないが。」
「でしょうね!そんなこったろうと思ったさ!寧ろじゃなかったらそれはそれで不自然すぎて怖いわ!」
「待て、流石にそれは俺でも意を唱えずにはいられないぞ。」
「うるせぇ!常識を母親の腹のなかにおいてきたような奴のくせに!!」
「人を非常識なやつみたいに言うなや!常識が通用しないのは二位の人だけで十分だわ!」
「誰のことだよ!」
「嘘やろ、あんさんてい◯くんしらへんの?そない可哀想な生き方してはったんやなぁ。かわいそうになぁ。」
「なんか入ってきた!?勝手に哀れんでるところ悪いけど貴女はちょっと黙っててもらえるかなぁ!霧村一人で手一杯なんだわ!これ以上は捌き切れない!!」
「あん、いけずぅ。」
『なんか今のいやらしい。』
「ダメですよ、深山さん。女の子をそうやって省いちゃ。」
「清水、お前もそっち側か!!」
「(変にからんでもいいことなさそうだし、喋らないでおこう・・・。)」
それが一番賢い選択だろう。変に言葉を口にすればこのどんちゃん騒ぎに巻き込まれて無駄な浪費を食らうことはまず間違いない。一般人はいおりのように口を固く閉ざしておくように。出ないと今日から君も変人たちの仲間入りしてしまうぞ。見本のいおりも十分キャラが濃いのはさておき。
で、この間ベロニカもこの茶番に目を取られていたせいで、やのつく自由業の人たちは外で待たされていた。しかも主に二人のツッコミのせいでなかに人がいるのはわかっているのに一向に出てこないから彼らのイライラはたまっていく。それに連れてドアを叩くと言うよりかはもはや強行突破する勢いにまで至っており、流石にこれ以上はまずいかなと全員静かになってお出迎えすることにした。
「おいゴラ己ら舐め腐っとんのかいボケェい!!礼儀ってもんを知らんのか礼儀ってもんを!人がノックしたらさっさと開けるもんやろがい!!」
「ヤクザが礼儀とくとか新手の宴会芸か何かか?笑わせにくるのはそのヘンテコフェイスだけにしてくれよ。」
「テメェええええええええええ!!!・・・ん?オイ待て、お前どっかで・・、。」
「!オイあれだあれ。この前見せられた・・・。」
なにやら入ってきた男たちが響の顔を見て見合わせている。響の煽りに青筋を立てていた奴も今は落ち着いて仲間内で話し合ってるのを見るに相当大事なことらしい。
流石に目の前でテンションの落差激しく動かれると気になったのか、顎に 手を当てて、何か思い当たる節はないかと思考を巡らせる。まぁ端的に言うと、あった。
「あ、把握しますた。」
「え?何が?」
「ヒント、某日の害悪ババア。」
「あ、あーそう言うことか。」
「じゃぁ俺らが目をつけられてるってかあのババアの裏にいたのと彼女の借金先が同じだったのか。妙な奇跡もあったもんだな。」
「奇跡ってか超在り来たりな展開じゃねぇか。何この御都合主義展開。いっそ清々しいよね全く。」
響のテンションはともかく、ヤクザのみなさんからすれば願ったり叶ったり。借金の回収に来たのに加えて高額な賞金がかかっている相手も付いてきたのだからカモがネギを背負ってきたどころではない。
「へへへ、俺らの運ってのは今最高潮らしいな。」
「あぁ、こりゃあいい。」
「・・・!よし、お前ら出てくるから待っててくれ。多分長くて一時間もかからん。」
「・・・何しに行くんだよ。いやなんとなくはわかるけどさぁ。」
「じゃぁ説明せんでええやん。おー、兄ちゃんたち奇遇だなぁ。俺もあんたらに用事があってんだ。ちょいと裏まで顔貸してくれや。」
と、どっちがヤクザ者かわからないことを口走りながら、男衆の肩に腕を回して外へと強制連行する響。まさか自分たちが連れて行かれるとは思わなかった屈強なおっさんたちはきょとんとしたままされるがまま連れられていく。
それからだいたい三十分強、何事もなかったかのように帰ってきた響は一人で、ご機嫌そうに鼻歌交じりに歩いていた。
「・・・まぁ、大方察しはつくが、ここはあえて聞いておく、何してきた?」
「ちょっと潰しに。」
「そんなコンビニ行ってきたみたいなノリで言うなよ。まぁお前ならそんくらいのノリでできるだろうけどさぁ。」
『にしては時間かかってない?』
「まぁちょいと手間取ってな。まぁ、その、なんだ。多分死んではない。うん。だから安心してくれ。」
「それを聞いて安心できるほど俺らは能無しにできてはいねーよ。でもあれか。お前くらいになるとそこらへんの加減もうまくできるのか。そう考えると便利だな。」
「いや、外から事務所ぶん殴って倒壊させただけだからワカンねぇ。まぁでも大丈夫だろ。ヤクザとかたくましいし。最悪死んでても目の前で札束ちらつかせれば生き返んじゃね?」
「予想の斜め上の真相!?それにお前はヤクザを新種のモンスターか何かと勘違いしてんじゃねぇのか!?」
「そないなら、響はんやったらもっとはよう帰ってきいへんのとちゃいます?なんか寄り道でもしてはったんの?」
「ん?あぁ、最初は中入ってやばそうな書類軒並み拝借してな。拳を入れたのはそのあとだ。あれむずいんだぞ。他の建物に被害がいかないように調整するのがどれだけ熟練された匠の技だと思ってやがる。」
「俺は未だかつてここまで存在して欲しくないと思った匠の技はねぇよ、古今東西の匠に失礼極まりねぇよ・・・。というか書類持ち出して警察にでも届けに行ったのか?」
「そんなことしたら壊したの俺だってバレるだろバカじゃないの。ちょっと人の見えるところにうまーく置いといただけさ、どうせそれで十分だしな。これでヤーさん方もそれと繋がってた輩も捕まるぜ。いやー、いいことした後は気持ちがいいもんだねぇ。」
鼻歌交じりのご機嫌理由はそれだったらしい。言ってることは真っ当だし、実際良いことをしたのだが何故だろう、したのがこの男だからか素直に喜べない。
「あ、そうだ。借金帳消しにしてやったんだから二、三割キャッシュバックしてくれてもいいんじゃねぇかな?」
「やっぱ最低だなぁお前!!」




