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alchemy


 場所は変わって路地裏のバーへと移る。あのあと何やかんやあって緑髪の女性に連れられてやってきたのだが、どうやらこの店は彼女の常連店らしい。


 そして、道すがらの会話によると彼女の名前はベロニカ。今年で21歳とすでに成人しているらしい。といってもそんなの日本基準の話だが。

 生業を錬金術師、アルケミストとしており、先程は錬金術で生成したアイテムを下ろしてもらうように交渉していた最中だったらしい。


 「アルケミストってあれか?あの鉄とかから金を作るっていう。」


 「卑金属から貴金属を生成する、だな。といってもそれも過程の一つでしかないが。」


 「と、言いますと?」


 「錬金術の根本は人を神へと昇格させること。次元のシフトだ。だからその劣化である錬金も不老不死薬もただの通過点でしかない。」


 「へー・・・あ、そうか。人を神にできるんなら鉄屑を金にできて当たり前だもんな。」


 「その通り。ちなみに概念的な根本は紀元前三世紀エジプトのアレクサンドリアにて錬金術師の祖であるヘルメス・トリスメギストスが残したヘルメス文書の教義が下のものは上のもののごとく、上のものは下のもののごとしで、錬金術の基礎中の基礎だ。」


 「じゃぁ、その持ち込もうとしたって言うのは実験の過程でできた副産物とか?」


 「えぇ。正確には応用したですが。流石に研究一筋だけで生きて行けるほど世の中甘くはありませんから。。」


 そう言ってバーのマスターから差し出された容器の中身を口へ運ぶ。まだ一口目だと言うのに顔を赤らめてほろ酔い気分なのを見ると酒にはよほど弱いと推測できるが、そのくせ先程からのやりとりから察するにほぼ毎日のみにきているようで、理知的な外見と裏腹に中身はどこか抜けているのが先程からの会話でよくわかった。


 「そのくせおもっくそ断られれらけどな。あのハゲ店主曰くよほどのガラクタらしいが?」


 「誰も彼も失礼なことばかりですね。いたく心外です。一体どう見ればそうなるのかはわかりませんがこれはガラクタではなく、れっきとした利便品です。」


 「多機能性の腕時計ならまだしもその懐中時計を利便品っていうのは無理があると思うんだがねぇ。」


 そう言って指をさすのは彼女が手にしていたそれ、先程まで仕入れを交渉していた金色の懐中時計のうち一つだった。ちなみにこれがあと30個ほどあるらしく、本人的にはよほど自信作だったのだろう。まぁ結局全て突っぱねられたのだが。

 それに響が言ったとおり特段珍しげなものでもなく、利便品、というには他と比べて数歩劣るだろう。

 それこそ腕時計にすればいいのになぜ懐中時計にしたかって?本人曰くそっちの方がかっこいいからだそうだ。


 「まさか。ただの時計ではありませんよ。これには色々と便利で他にはない機能がいくつも備わっています。そうですね・・・まずは魚群探知機と地下探査機(ボーリング)。」


 「初っ端から激しくいらねぇなその機能。つうか無駄機能云々の前にそもそも用途かけ離れてるその二つを共存させようと思った神経を疑うわ。」


 「っ!ま、まぁいいでしょう、まだまだ他にもたくさんありますから。続けて写真機能に缶切り、耳かきにも使えます。」


 「苦し紛れがどんどんしょぼくなるアホの図。そもそももはや時計である意味が皆無なんですがそれは。むしろ時計じゃない方がいいまであるわ。」


 「ま、まだまだです!実はここをスライドさせてタネを入れればお手軽にブロッコリースプラウトやかいわれ大根などと言ったベビー野菜を作ることが・・・。」


 「迷走なんてもんじゃねぇなおい。持ち歩くくせに先っちょから草生えてるとか意味わかんねぇよ、無意味にも程があるわ。むしろマイナスだわアホだわアホ。実はお前使わせる気ゼロだろ。もしくは頭空っぽのかわいそうなお友達か。」


 「で、ですがこれだけは誇れます!!この時計の強度は最高峰といっても時過ではなく、理論上でしたら星の爆発にすら耐えうるのです!!」


 「これだけとか盛大の墓穴掘ってて草。いやまぁそれが本当なら確かにすげぇが所詮高々ゴミクズみたいな極めて時計に酷似した何かなそれにつける意味がさっきからいくら探しても思いつかないんですよねぇ。」


 そう言いながらベロニカの手からそのゴミクズみたいな極めて時計に酷似した何かを拾い右手で覆うようにして手に持つ響。ちょんちょんとつついてみたりとりあえずパッカパッカと開け閉めして見たりと一通り弄ったあと、最後に強度を試すためか左手で力の限り殴りつけた。

 右手で衝撃を抑えたおかげで店もといこの街に被害はなかったが、響という人物の一撃その全てを受け止めたゴミクズみたいな極めて時計に酷似した何か、略してゴミには中心に大きくヒビが入っており売りに出せるような状態ではなくなっていた。


 「お、マジか。左手とはいえ結構真面目に殴ったんだが・・・、ヒビが入ってるだけで中の機能も死んでねぇな。ふつうにすげぇ。」


 「って何してるんですかあなた!?というかどうやったらこれにヒビが入るのですか!?あり得なのですが!?」


 「100点満点のリアクションだな。お前アルケミストやめてリアクション芸人目指した方がいいんじゃね?ワンチャン出川哲◯超えれる。」


 悲鳴とともに驚愕の声を上げる彼女に賞賛を送る響だが、かのリアクション芸人に勝るとも劣らないというのは過大評価だろう。実際連太郎あたりは否定の言葉を上げている。


 「いやねぇだろ。というかあの人とは方向性が違うから比較にならないだろ。」


 「と、というか弁償した方がいいわよ。しないのは人としてどうか、と思う・・・」


 ごもっとも。いくら存在が腐り滅んだ生ゴミレベルの邪魔物であったとしても、しかしそれは店頭に陳列させられ、いつか誰かの手に渡ることを望んで作られたものであり、それを破損させたのならば相応の対価というものは払わなければならない。

 彼自身も最初から弁償する気ではいたのだが、しかしそれを先に言われてしまうと妙にイラっときたらしく眉間にしわを寄せている。感覚で言えば「宿題やりなさい!!」「今やろうと思ってたのに!!」に近い。小学生かおのれらは。


 「オメェにそれを言われるのは甚だ心底心外極まりないが、そりゃ弁償はするさ、俺をなんだと思ってんだマジで。ったく、悪いなガラクタとはいえ壊して、いくらだ?」


 「微妙に反省してませんね貴方。はぁ、まぁ元々売りに出せてなかったので卸価格の金貨150枚でいいです。希望売値価格は270枚ですから驚きの値段ですよ全く。」


 ちなみにこれは日本円にして大雑把に150万ほど。売値は300万近くにも登ると、カル◯ィエやフィ◯ップにすら引けを取らないと、とりあえず一般人からすれば何のこっちゃというレベルの話で、それだけでよくこの異常性が伝わってくる。


 「いやいやいやいや驚きは驚きだが別の意味でな!?なんだその馬鹿みてぇにふざけた値段は!?さてはお前実は売る気ねぇだろそうなんだろ!?」


 「そんなわけないじゃないですか。確かに少し値が張ってしまいましたがここまでの多機能性に加えて強度、まず妥当な値段かいっそお得な方では・・・。」


 「この使えもしない何んであるかもわからない意味不明な圧倒的蛇足効果にかかってる金かよそれ!?馬鹿だろお前!稀代の大馬鹿だろまじで!?どう考えてもふつうに売った方が売れるわボケェ!!」


 「・・・だってその方が見返りが大きいですし。」


 「ですしもお寿司もねぇわ!そもそも売れなきゃ意味ねぇんだよ考えろよボケナス!!ゴミにんな大金払うとか金が有り余ってる石油王でもしねぇよ。そもそもほしがらねぇが!」


 「それにロマン、というものは大切だと・・・。」


 「それはわかるがロマンの方向が謎なんだよ矢印が困惑して乱回転し出すレベルだわ!!んな浪漫(無駄)つける暇があるならその腐り滅んだセンスをどうにかしやがれ!!」


 流石のこれには反応せずにはいられず。響が突っ込み出すとかいう古今稀に見ぬ展開になったが、これを素でやってのけているのだからこのベロニカという女性はそら恐ろしい。

 というか絶望的にずれているのだ彼女は。だから売れないし、そのくせ妙に頑固で生真面目だからああも口論になる。多分彼女は将来悪い男に捕まる気しかしない。というか根本的にダメ男と相性がいいタイプなんだろう。ただしマダ◯、テメーはダメだ。


 結局、響も何だかんだ言ってしっかりその金額を払うあたりは誉められるポイントか。ふつうにそこまで払わなくても何も言われまい。ぶっちゃけ金貨一、二枚程度で良い。だって詐欺やら恐喝の類だもん。訴えたら8割くらいで勝てるレベルんじゃなかろうか。

 

 「ったく、ほれ150枚。なんでこんなガラクタにここまでの大金を払わなきゃいけないのやら・・・。」


 「確かに。ふぅ、これで当面は生活に余裕ができました。マスター追加お願いしても良いですか?」


 「どうぞ。」


 「(まぁ付属効果のクソ仕様はさておき、あんだけ詰め込めてかつ質自体は悪くなかった。というかぶっちぎりに群を抜いて良い。腕だけは良さそうか。それに大金見せればなんでもやってくれそうなところがペネだ。・・・さてこいつに頼むのが得策かね。)なぁよ。一つ商談があるんだが・・・。」


 「あい?なんれすかぁ?」


 甘い声が帰ってきたのでよく見てみれば、さて妙に渋くて優しげないい声のマスターから出された混合酒を口に運んでいるその表情は赤く惚けており、呂律もうまく回っていない。先程の一杯だけでも顔を紅葉させていたのだが、追加一杯加えるだけでもここまで変わるのかといっそ感嘆の声が出てきそうだった。


 「うっそだろお前。ファージネーブル二杯でここまで回るとかどんだけ酒弱ぇんだよおい。つかだったら飲まなきゃいいのに。」


 「よけいなおせはれす・・・ぐぅ。」


 「寝たし。このスピードで寝たし!!話の途中だったんですけど。」


 余程弱いのか、度数5パーセントの洋酒で完全にテーブルへと伏っぷせてしまった。可愛い寝息が聞こえるあたり熟睡しているのだろう。

 いやしかし頼みがあったのに寝てしまうとは何と魔の悪い。流石にこれは予測できないしどうしようもないと言えばどうしようもないと言えなくもない不足の事態だが、さてここで一旦冷静になって色々と頭を回してよくよく考えてみれば、それは彼自身の日頃の行いからして自業自得だと、そう声をかけてもおかしくはない、そんな状況に思えてならない。端的に言ってザマァ見ろ!といった具合である。


 「一時間もすれば起きるよ。ベロニカちゃんは回るのも早いけど覚めるのも早いからね。一時間もすれば戻るさ。」


 「ではそれまで待っていた方がいいのでしょうか?しかし一時間というのは待つにしては長いきもしますね。かといって何処かに行ってまた戻ってくるような時間でもないです。どうしましょう霧村君。」


 「あー、俺は用事あるからあれだが帰りたかったら帰っていいぞオメェーら。ったくしゃーねぇなぁ、マスター追加。」


 「かしこまり。しかし君はお酒強いね。普段から飲むのかい?」


 注文されたを差し出すマスターの言う通り、先程からチビチビと喉を通している響の顔に変化はなく、酔いも完全に感じ取れはしない。


 「いやそうでもねぇな。まぁ酒所来てんのに飲まないってのも変だからって話だ。酒豪は多分遺伝だ、いうてガンガン飲むタイプじゃないがな。両親ともに酔ったところはほぼ見ねぇ。あ、でも一回ふざけてスピリタス飲んでたが、流石にそん時は回ってたな。というか回ってなっきゃおかしいわ。」


 「さらっとゆうてはりますがあれ人が飲むもんちゃいます?96とか頭おかしいて。」


 まぁ、ごもっともで。あれをガブガブ行けるのなんて人やめた何かか、某大学の某サークルの人間どもぐらいしかいないさ。そもそもたとえ目の前にあったとしても体が拒否反応を起こして飲もうとしないと思うが、絶対にふざけて飲んではいけないと念を押して言っておく。


 「というかお前ら平然と飲んでるがいいのか?。一応未成年だぞ、俺ら。」


 「ここ日本でもねぇしいいんだよ飲酒法もねぇんだから。流石に十二、三歳までには飲ませないらしいけど、俺らの歳は別段規制されてるわけでもねぇし。まぁあれだ、郷に入っては何とやらってやつさ。あまり固いこと言ってると便秘になんぞ。」


 「いや汚ねぇよ、かにも飲食店だぞここ。つうかその口ぶりだと前から飲んでた風に聞こえるんだが。」


 事実明らか今ここで発するべきではない言葉が出てきたが、この店を仮にもと称した連太郎だって失礼極まりない。まぁそれに関してマスターは双方の言葉共に気にしている様子はないので、器の大きい彼に感謝するべきだろう。

 閑話休題

 痛いところをつかれたであろうと思われたが、響辿の二人の顔には焦りの表情はなく、代わりに口を開いて出てきたのはまるで自分たちには何一つの非はありませんよとでも言うような言葉だった。



 「そりゃしゃーねぇ。俺は悪くないし、どこぞの小悪党が無理やり連れて行くんだもん。全責任はあいつに押し付ければいいさ。お、余罪増えててウケるわ。」


 ウケるじゃない。まぁ、飲ませる方も方だが、とはいえ頑なに拒否して飲まなければいいだけの話だ。あと余罪を増やさせておいて嘲笑うとは安定の畜生。もちろんそこにしびれもしなければ憧れだなんて抱くはずもない。


 「ウチの場合は清め酒ゆうて定期的に飲むしきたりやったしなぁ。あれも相当度数あったさかい、一桁くらいじゃもう酔いませんわぁ。」


 「神酒ってやつか。霧村はともかく政宮さんのはしょうがない・・・のか?」


 「俺はともかくってどう意味だコラ。ったく、ちなみに正月に神酒を飲むのは厳密には違反だが宗教上の自由プラス風土って事で気にしてはないし宗派盾にすりゃ問題ないだろ。まぁそもそも、飲酒法には処罰はないから問題ないんだがな。」


 「そうだったなそういや。確か知ってて飲ませた大人が対象になるんだっけか。あと売った店とか。」


 「そうだが、今は関係ねーしこの機会に飲んどけ。健康面も気にすんな。肝臓ごときいくら潰れようが回復薬がある。」


 「ほんとなんでもありだな回復薬。」


 「そりゃそうさ。だってなかったら今頃俺は木っ端肉片になって地面のシミとして余生を謳歌してたかんな。そもそも謳歌する余生があるかは疑問だが。ともかくクスリ様様。もうなっきゃ不安で仕方ないね!」


 「言ってることがヤク中のそれじゃないの・・・。」


 結局全員残ることになり、とてもまぁ珍ーしく静かに待つ事一時間弱、店に雰囲気に合わせたのか、はたまた隣で熟睡している人物がいるからかは定かではないが、それでも響と辿も傍迷惑な常ボケコンビがいてのことだから快挙と言える。多分リコリスがいたら絶対にうるさくなってただろう。逆にいうとリコリスがいないとこれほど静かになるとも取れる。

 閑話休題

 やがてベロニカはもそもそと動き出しながら体を動かし、大きく伸びをして眠気を吹き飛ばしたところで自身に向けて冷ややかな目を向蹴られていることに気づく。そりゃあ話の途中で爆睡し始めたらそんな目でも見られるさ。

 

 「武器・・・ですか?」


 「あぁ、とりあえず二つ。特注で、だ。」


 さて気を取り直して切り出された響の用事とは自分たちが使う武器の注文であった。とりあえず今早急にあって願う二つ、自分のワイヤーとルールーの弓を所望しているのだが、本流武器といえばアルケミストよりブラックスミスのところに行くのが普通。ただ、それだとあまりにも脆く弱いのだ。いくら腕利きの鍛治師だろうが結局それは人の域を出ない。星の煌めきには耐えきれないし、光速の衝撃に簡単に屈してしまう。そんなもの、彼らからすれば等しくあって邪魔なゴミでしかないのだ。

 しかし、先程見せてもらったの作品。機能はさておき出来自体は認めるに値するもので、彼女の才能の高さが伺えた。おそらく、響の要望に答えられるのは今のところ彼女だけだろう。


 「なぜ私に?そういうのは鍛治職人に頼むものでしょうに。」


 「さっきのあれ。あの強度を出せるのはお前くらいだろう?いや実際はあの程度じゃ話にならねぇんだがそれ以下の代物なら折り紙細工と変わりゃしねぇんだわ。もちろんあんなもんじゃねぇよな。」


 「えぇ、あの数百倍の強度は出せますが、相応の値段になりますよ?そうですね・・・7000枚でも足りるかどうか・・・」


 「たっけ!!たっけ!!いやゆうて日本円七千万でってことはそうでもないのか?ま、まぁいいやしょうがねぇ必要経費と割り切るさ。あ、ただし、必ず作る前に確認させろよ。付属効果も基本こっちから要望出すからな。絶対に遊びで余計なクソ機能つけんじゃねぇぞわかったな!?」


 「・・・はぁ、流石にここまで大きな商談で自身の趣味を差し込む気はありませんよ。私をなんだと思ってるんですか。」


 さっきのも云百万の商談だっただろう。そのくせにあんな物を仕上げてきたのだからその言葉の信憑性といったらi◯honeの天気予報ぐらいだ。それは響も同様に捉えているらしく、その目には何一つの信用のない懐疑と不安の色に染まった光しかなかった。


 「恐ろしく不安だが、まぁんなこといつまでも愚痴愚痴言ってても始まらねぇから一応は信用しよう。明日もう一人当事者連れて詳しい話をしに行くから連絡先と住所を教えてくれ。」


 「・・・・・・新手のナンパですか?」


 「ぶっ殺すぞテメェ。」

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