終わってみれば
「やっぱりトイレットペーパーはダブルだよな、うん。」
「何の話ししてますの、一体。」
時刻は1日経って午後1時頃。またもや静香たちが世話になっている教会に待ち合わせた総勢27人。響たちはいつも通りの姿だが、そのほか全員はどうも仕草がぎこちなく感じられる。
「いや気にすんなこっちの話だ。それよりお前らは何してきたんだ?」
その理由としては至極簡単。どうやらほかの二チームも共に厄介な相手との戦闘であったようで、皆それぞれ響たちの規格外のっぷりを目の当たりにし、困惑と多少の畏怖を心の中に潜めているのだ。
「それでしたら、確か異様にデカイ象の化け物退治でしたわね。」
「象ねぇ。」
『うん、胴体は人間で人の言葉も話してた。確かギリなんちゃらって言ってたけど。』
「いやちょっと待て、何か?もしかしてお前らギリメカラぶっ倒してきたってのか?」
二人から提示された情報を元に、その相手を特定することに成功する響。だが、出てきたそいつは彼からしても驚くような相手で若干焦りながら追求に及ぶ。
「そうですわよ。私一人でやりましたけどね。」
「そりゃそうだろうよ。それがマジモンのギリメカラだったら深山たちなんかが歯が立つ相手じゃねぇもん。」
「そ、そうなのか?いやまぁ実際俺らの出る幕なんてなかったけどさ。そもそもギリメカラってなんなんだよ。」
名前の出てきた章太郎が、さっきから出てくるその名前について言及する。まぁ、普通一般人がギリメカラなんて知ってるわけもないので妥当な反応だろう。
「スリランカの仏教に出てくる魔物の一つだ。インドの方だとインドラが乗るアイラーヴァタだけどこっちじゃ、仏敵の魔王マーラの乗り物になってる。なんでそうなったかは長くなるから省くが仏教とヒンドゥー教の中が悪かったと覚えてくれればいい。要は一神話の中でも相当上位の存在ってわけだ。つうかそんなもんクエスト討伐でどうこうできる相手じゃねぇだろ。」
「よ、よく知ってんな。」
「メガ○ンやってりゃいやでも覚えるぞ。帰ったらやってみるといい。めっちゃおもろいから。それよかリコリスはギリメカラどうやって倒したんだよ。お前らなら苦戦する相手じゃないと思うが。」
「あら、大した相手でもありませんでしたわよ?長々と自分語りしてましたのでその間に頭の中身だけ燃やし尽くしただけですわ。」
聞かれた問いに、さしたるものでもないと言うかのように肩をすくめて残虐的な行動をとったことを口にするリコリス。火あぶりとかでないだけマシかもそれないが、できればあまり考えたくないような答えだ。
「いやもうちょいましな方法あっただろそれ。せめて全身丸焼きとかさぁ。ちゅーかんな器用なこともできんのかよ。」
「あら、私にかかれば造作もありませんわその程度のこと。本当なら氷針でズタボロにしたかったのですが、汚い悲鳴なんて聞きたくありませんもの。」
「何があったんだよ・・・。」
「ふん、私を下劣な目で見た罰ですわ。」
「なるほどさすがご立派様の眷属。性欲マシマシってわけか。見る目はねぇみたいだけど。」
「またですわ。毎度毎度同じことを言うだなんてひねり出す頭がないんですわねかわいそうに。そもそも、私ビジュアルで人に遅れをとることは万一にもないと自負しておりますわ。当然のことですもの。」
「じゃあ毎度同じネタつかってくるお前もボキャ貧自己申告してるとかブーメランマジウケるわ。それにお前裏返せば中身は人様に及ばないってことじゃないですかやだー。なんなの?今日自己申告2倍デーなの?腹捩切れるからやめてほしいんだけどw。」
「表に出なさい。二度とそんな減らず口叩けないように喉仏引き抜いてやりますわ。」
「上等だやれるもんならやってみろや。俺より弱いくせにピーチクパーチク騒ぎ立たされてイラついてきたところだ。」
『ダメだ、まるで成長していない。』
いつものことといえばいつものことなので、ノルマ達成のような安心感はある。そりゃあ日に3、4回も似たようなものがあれば慣れるもので、ルールーは呆れて優雅に観戦しているほど。
一方彼女よりも長く付き合いのあるパイフェンではあるが、最悪周りへの被害が心配されるため、これが始まるたびにやきもきしている。このままだと胃に穴が開かないかひどく心配だ。
「あー、えっと、そうだ!響さん、私たちのところは蠍の尾と翼の生えた二足歩行のライオンだったのですが、何か心当たりはありますか?」
「ん?それパズズやん。なんでお前らそんな名前付きのやつらに当たってんの?こちとらただのドラゴンだぞ。つまらないったらありゃしねぇ。戦うなら俺もそう言ったやつらとが良かったわ。」
「一応最強種なのに酷い言い様ですわね。竜種涙目ですわよ。」
「一応とか言ってる時点でお前も大概だがな。」
ほかの話題になるところっと態度を変える辺り本気で言っていないようにも思えるが、目はいつもマジなのでどこまでやらと言ったところ。
ともかく、二人の注意はパイフェンが対峙した相手へと向かったようだ。
「それで、パズズというのはどのような魔物なのですか?」
「あぁ、パズズは・・・。」
説明しようと口を開いた響よりも早く、その言葉を遮って続ける声があった。
「古代メソポタミアの悪魔の一柱。風の魔王のラマシュトゥを妻に持つ、風と熱病を操る悪魔の王様やな。ちなみに蝗害、イナゴやバッタによる災害の具現化とも言われとうてな、同じ蝗害やとアバドンなんかが有名やなぁ。怨霊信仰みたいなもんもあったし、一応魔王として扱われとるさかいとんでもない相手のはずなんやがなぁ。」
「人のセリフとんなよ。まぁ、概ねその通りだな。しっかしどうなんだ?ギリメカラとは同格かそれ以上なんかね?」
まぁ、そんな知識持っているのは今ここだと辿ぐらいしかいまい。といってもパズズは有名な方ではあるので博があるものであれば知っていてもおかしくはないか。
「ゆうても規模がおかしいインドやないですの。そもそもの大きさからしても化け物やしなぁ。」
「あー、たしかにそうだな。まぁ、めんどいし別にいいかそこらへんは。で、どうやってって聞く意味もないよな。お前なら実力でねじ伏せたんだろう?」
「えっと、その、そうなのですが・・・。」
『もっと言葉を選んで。』
実にその通りなのだが、乙女に向かってその言い方はないだろう。おかげでルールーからも批難の文字が飛んできている。
それに対しこりゃ失敬と反省しているのかそうでないのかわからない解説をしつつ、今度は先程から気になっていたことを輝たちに投げかけた。
「つうかお前ら今日大人しいなおい。どした。」
「いやだって、あんなの見せられたら・・・なぁ。」
「そうね・・・。」
ま、概ね予想通りといったところだろうか。とはいえここまで小さくなる必要もないとは思うが。
「なぜ、なぜそのような力があるのに・・、。」
「くどい。何度も同じこと聞くんじゃねぇよ。これ何度目だマジで。」
「じゃぁ、何が目的で旅してるの?」
「そりゃあ帰る・・・あぁぁあああ!!!やっべぇえええ、そういや俺帰還方法何一つとして調べてねぇじゃん!!バカなの?マジでバカなのかよ!!」
と、唐突に騒ぎ出す阿呆一匹。情緒不安定この上ないが、たしかに今まで帰るためになにかをしていそうで特に何もしていなかったことに気づく。別に神さま相手に殴り込みに言っても帰れると決まったわけではないし。
「落ち着きなさい、みっともないですわよもう。手がかりがないんだからしょうがありませんわ。そもそも殴って聞き出せばいいじゃありませんこと?」
「いやそれで知らなかったらどうすんだよ。」
「・・・気にしなくてもそれくらいの魔法なら私が覚えて差し上げますのに。そうゆう約束ですし。」
「おう、頼りにしてるぞ相棒。」
「全く、こういう時だけ調子がいいんですから。」
と口では言っているもののその口元は若干にやけているしまんざらでもないようだ。コツンと小さく拳を合わせる二人の姿を見ているといつものくだらないやりとりがまるでうつつの際の夢物語に見えてくる。
閑話休題
さて、合同クエストが終わったのだからこの後響たちがとる行動は決まっていると言って差し支えない。そのためには交渉材料となっていたものが重要となってくる。
「あ、せや、無事合同クエストも終わったことだし約束の情報もらうぞ。」
「あ、あぁ、そうだったな。それで、一体どう言ったところなんだ?。」
どうやら両者ともに抜けていたらしい。どちらもそういえば今思い出したみたいな顔と、すっかり忘れていたという態度がうかがえる。
色々と驚愕することが立て続けに起こって脳の処理が追いつかなかった(かもしれない)輝たちはともかく、おまんらは忘れてちゃいかんじゃろおまんらは。
ともかく思い出したのであれば話を進めていくのみ。早速響が色々と条件を出す。
「まず、悪さをするなにかが神さまに討伐されましたみたいな話を集めてほしい。それでなおかつそれに関係する場所建物を教えてくれると助かる。一応こっちでもいくつかの情報はあるけどそれでも多いに越したことはないからな。」
「?わかったけど、それを探してどうするの?」
「企業秘密だって言ってんでしょーが。」
前にも少し話たかもしれないが、もちろん彼らがここに手ブラでくると言うことはなくちゃんと事前に情報はもってきている。ただ多くあるうちを虱潰しだなんて時間と手間がかかることをする気は無いのだ。しかし帝国外のしかもなかなか探しにくい情報を見つけてきたビヨンの腕には舌を巻くものがある。
輝たちも一応は了承したようで、なぜそんなことを?と思いながらもそれぞれどこへ聞き込みに行くか検討を始めていたその時。
「・・・中央のユークリッド大聖堂。」
「うぉ!?」
突如響の後ろから場所を指定する女の声が聞こえてきた。慌てて振り返ってみるといつかお茶を汲みにきていたあの陰湿そうなシスターの姿がある。
「(俺が気配に気づかなかった!?いや、いくら話し込んでて注意力が散漫してたからってありえるか?瞬間移動の類ではなさそうだし影が超薄いだけ、か?)誰だお前は!!」
色々と考えることはあるものの、とりあえずどこぞの悪の組織の女幹部風に聞きに行く辺り割と焦ってないのかもしれない。
「・・・ソフィア。ここの修道女をやってる・・・。さ、さっきの話だけど、ユークリッド大聖堂になら似たような話が伝わってる。な、なんでも天界を追放された天使が封じられてる、とか。」
『その天使の名前は?』
「わ、わからないわよ・・・。ある天使、としか出てこないし。」
「!!なるほど、ビンゴですね。」
「えぇ、ビヨンさんからいただいた情報にもその聖堂の名前はありますわ。十中八九そこと見て間違いありませんわね。」
ルールーの問いに対して出された答えに、そこだと確信を持つ四人。一般的には固有名詞がないのは決定的な情報にならないかもしれないが彼らの探しているものは逆にそれでいいのだ。
「そんな御伽噺信じるなんて馬鹿みたい・・・。」
しかし、情報源のソフィアにはその反応、いや信じたこと自体が不思議なようで若干引きつっている。たしかにただの言い伝え一つを真に受けて行動するだなんて妙な人種ではあるうが、とはいえどもそれを神職者が口にするのは如何なものかと思うが。
「おいおい、教会で神に仕えるシスター様がずいぶんな言い様だな。」
「・・・か、神もなにもいないわよ。こんな世界。」
「じゃぁ、なんで・・・。」
「ここで育てられたからそのまま支えてるだけだから・・・。」
成り行きとはいえどもそこまで否定するのであればさっさと出て行ってしまえばいいものの、何かのっぴきならない理由でもあるのだろうか。とはいえども響たちにそれに対して突っ込む気も時間もないし、ともかく思い立ったが吉日。早速そこへ行くための準備に取り掛からなければならない。
「ま、そんなことどうでもいいですわ。それよりも明日にでもその大聖堂に行くべきですわ。準備のために動いた方がよさそうですわね。」
「そうだな。とりま回復薬を買いだめとかねぇといけねぇか。あとは獲物の整備やらかね。」
「ほんとに行く気なの?な、なにが目的か知らないけれど、た、ただの言い伝えを信じて。」
「火のないところに煙は立たぬ、ですわ。それに天使だろうが神だろうがいてくれなければ困りますもの。ねぇ。」
「ま、そりゃそうだな。それに俺は御伽噺を信じられないようなつまらない人間にはなりたくねぇし。」
「っ!?」
何か思うところがあったのか、ソフィアはまたまた何かしらを思い出したのか否か。なんにせよ響の放ったその言葉には小さく目を見開いて固まってしまった。ものの数秒で元に戻ったもののそれでも何を思考したのか若干挙動不審気味になっている。
「時間ねぇから俺らもう行くかんな。あ、深山多分一週間ぐらいは俺ら動けないと思うからそれまで待ってってくれや。」
「あ、あぁ。でも聖堂の中に一週間もいるのか?」
「別に用事自体は一日・・・、あれば方つくかねぇ。まぁ流石に日は跨がんとは思うが。」
「じゃあ、何で一週間も?あ、その際即てるわけじゃなくて・・・その助けてもらう側だから勿論そんな図々しいこと聞いてるわけじゃなくて単純に気になって・・・。」
「んなもんわーってるからいちいち言わんでええわ。一週間はないとまともに歩けるようにならねぇんだよ多分。」
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「は?」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
「?」
一同目が点になって同時に口をぽかんと開けて頭の上に疑問符をぽぽぽぽーんと大量に浮かべる。無理もないか、輝たちからすればまさか響たちがそんな重症になるようなことだなんて想像もつかないだろう。
逆に彼らの実力を知らないは一人だけなんのこっちゃと首を傾げているのだが、その半分なぜそこまで驚くのだろうというのも含まれているのかもしれない。
「生きていれば、の話ですが。」
「縁起でもないこと言うなよ。そりゃその通りだけどさぁ。」
「いやいやいやいや、待ってくれ、お前らが死ぬかもしれないってそこには何があるんだよ!?」
『逆に聞くけどそれ教えると思うの?』
まぁ、教えるわけはないだろう。それは皆もわかっていることだし聞くだけ無駄だとはわかっているのだが、しかしそれでも聞かなければならなかったのだ。そういうことはよくあると思う。聞かずにはいられないというやつだ。
「そう言うわけですからいい加減行かせてくださいまし。時間は無限にあるわけじゃありませんのよ?」
「そうだぞ。これからは10秒ごとに500払ってもらうからな。」
「金とんのかよ!?しかも高ぇ!!」
「なんと1分経つごとに衝撃の5000マシ!!」
「暴挙も甚だしいなおい!たしかに衝撃的な価格だけども!!」
「・・・500。」
「わかったからカウントダウンするな!もう行っていいって。というかさっさと行ってくださいお願いしますから!」
「はぁ、ふざけてないでさっさと行きますわよ守銭奴。」
「おい、誰が守銭奴だコラ。稼ぐところで稼いで・・・・・・。」
まーたいつものくだらないやり取りをしながら食堂から出て行く響たち。その後ろ姿を皆絶妙に色々な感情が混ざり合った面持ちで見つめていたが、一人だけ何を思ったのか面白そうと口元を緩ます人物の姿がそこにはあった。
「ふぅん。えぇなぁ。」




