クエスト
翌日、27人という大勢なため、三つのチームに分かれての探索となった。それでも一チーム9人にもなってしまうが、5パーティーをまとめたのだからしょうがないだろう。
ちなみに
第1チーム 響・輝・天音・アリス・連太郎・辿・阿吽・薫子・奈那葉
第2チーム パイフェン・玄助・京子・章太郎・瞳・ソロモン・静香・妃姫・友惠
第3チーム リコリス・ルールー・瑞季・双葉・十勝・いおり・納生・和南・夏菜
という振り分けとなっている。
それぞれ希望もあったのだが、パーティーのバランス等を考えた結果がこういう形になったのである。
また、リコリスに関してはいい機会なのでルールーの能力の相殺の練習も兼ねている。普段は響が、彼がいないときはパイフェンが行なっているので、彼女は手すら触れていない状況なのだ。流石にいつまでもその状況はまずいというとで練習がてらというわけらしい。
さて、一行はそれぞれなんのクエストを受けるか決めるためにまずギルドへと足を運んでいた。
「うん、どんなクエストにしようか?あまり簡単なものじゃ味気ないし、俺たちなら大丈夫だとは思うけど危険すぎるのはやめたほうがいいんじゃないかな。」
「5段階中の4ぐらいって所か?」
「良いのではないでしょうか?私もそれが妥当だと思います。」
妥当な所だろう。せっかくのこの人数だし、皆百戦錬磨の戦士相当の実力の持ち主だ。ちまちまとした小物を相手するより、ある程度の強者を相手取る程度で丁度良いはずだ。
輝の提案通りに話が進んでいく中、響は一人ボードの前に立ち尽くし、依頼内容を物色していた。それに気づいた辿が退屈だった輪から抜けてその隣から顔を覗き込む。
「何してはりますの?」
「んー、良いクエストねぇかなって。やっぱS級は二階なのかね。」
「ここはフェア○ーテイルやあらへんよ?いやそうやったら最高なんやけど。」
「よなぁ。お、良いじゃんこれ。」
言うが早いが、早速その依頼書をちぎり取り受付へと持っていく響。受付のお姉さんにブツを渡し、手早く手続きを進める。二、三分ののちに帰ってきた彼を迎えたのは辿一人だけで、ほかの面々は未だ作戦というか方針を決めるのに論争しあっていた。
「なんの依頼なんそれ?」
「ん、フェア○ーテイルでピンときたんだわそれにほら、敵としては程よい感じじゃね?」
「・・・いや、その理屈はおかしいんとちゃう?」
どうやらあのいつも大胆不敵な辿でもそういうような内容らしい。依頼書の内容を読んだ彼女の顔が心なしか戦慄しているようにも思える。
「おーい、お前ら、受付したからさっさと仕事行くぞー。」
「!?いや待て、何勝手に決めてるんだよ!!俺らの意見も聞かずに!」
「だってどれも似たようなもんじゃねぇか。どれ選んでも大差ないって。安心しな、一応お前らの望み通りのそこそこ難易度の高そうなやつにしておいたからさ。」
受けたのなら早急に出陣するべし。未だ話し合っている優柔不断の集まりに声をかけて催促する響。案の定非難の声が飛び交うが、特に気にすることもなく依頼書をひらひらさせながらなだめる様に次第に勢いが収まっていき、それなら・・・という雰囲気が漂う。まぁそんな幻想10秒しないうちに打ち砕かれるのだが。
一応納得したメンバーであったが、流石に依頼内容を知らずに行くというのはあり得ないので、勝手に決めた本人に問いただすかのごとく言葉が口をついた。
「それで、その依依頼ないようは?」
「竜退治〜。」
「「「「「「「はぁ!?」」」」」」」
♢
それから小一時間ほど。
響が独断と偏見で勝手に受けてきた依頼を達成するために、一同は森の中を歩き進んでいた。
依頼書によればこの森の奥深くの谷底を拠点として古くから恐れられている存在らしく、クエスト自体もその頃から常駐されているものらしい。ただ、誰もドラゴンを相手にするわけもなく今まで一度も受注されたことがないのだとか。
「・・・ねぇ、本当にやるの?竜退治。」
「そ、そうだぜ。流石に引き返した方がいいんじゃないか?」
もちろん竜退治だなんて大所業、納得いっていないものもいる。声に出した阿吽、連太郎もそうだが逆に納得いっているものは響、辿、輝、薫子の四人のみだ。
「あぁ、やってみる価値はあると思うな。俺たちだって十分強くなってるんだし、それに今は常時より人数も多い。」
「えぇ、こちらは場所もつかんでいますし作戦も立てやすくなることを考えると、良いアイディアかと。」
「そうだけどさ〜、それでもやっぱり怖いじゃん?」
リーダー二人からすればこのクエスト自体は好条件なもののようだ。危険は大きくなってしまうがさっき述べていた通り受けるとしたなら今が一番の勝機でまず間違いないだろう。
それでも命の危険が大きいのは不満の元としては十分すぎるもので、その姿を見かねてかはたまた癪に触ったのか響が言葉を飛ばした。
「何当たり前のこと抜かしてんだよオメェら。殺す覚悟も死ぬ覚悟もできてねぇやつが戦場にいるんじゃねぇ。俺が先に潰すぞ。」
その目は冷たく、軽蔑と見下し混じりの視線、低く響く声、痛いほどの殺気に皆怖気付かれ震えるものまで出てきている。また、一人ちびってしまった者もいるが、本人の尊厳のために誰とは言わないでおこう。
「あれやなぁ、撃っていいのは撃たれる覚悟のある奴だけっちゅうマーロ○のセリフやったかなぁ?うちは大好きやでぇ、そないな考え方。」
「意訳だがな。とりあえずその覚悟ができてない奴は最低の恥さらしだと思え。」
だからこそ、響は敵対した相手を生かしておくということはしないのだ。一部の例外や最初からゲームとしている者であれば別であるが、それが相手への最大の敬意であると捉えているからである。逆に生かしておくことや命乞いなんかは最も忌避するものでもある。
その気迫は凄まじく、一同は首を縦に降ることしかできなかった。いや、あとあと実際の戦場でそんな真似をして響にブチ切れられるよりかは遥かにマシなので気を強く持ってもらいたい。
「そもそも魔王倒しに行こうとしてる奴らがなんで今更ドラゴンの一つや二つでビビってんじゃねぇよ。」
「せやなぁ。まぁ、その魔王がどんくらいの力持っとるのかhわからへんがなぁ。」
辿の素朴な疑問に答えたのは薫子だった。やはり代表としてほかの生徒たちよりも多くの情報を渡されるとみるべきだろう。
「確か島一つ壊したことがあるとかないとか、そんな話を聞いたことがある気が。もしそれが本当ならとてつもない化け物ですね。」
「(え、よっわ。そんなもんかよ。もしかしたら魔王はクッソつえぇとかそんな展開かもと思ってたが、そんなことねぇの。)」
感覚が麻痺バグしている阿保からすれば高々その程度だが、一般人や輝たちからすれば脅威災害天災そのものであることに変わりなどない。だが、たしかにそれなら竜ごときでグダグダ言う暇などあるはずもなく、ここでようやく全員覚悟を決めたようで、これきり弱音を吐くものはいなくなったのである。




