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どうやっても勝てない生徒会長


 「ゴホンッ!・・・では改めまして、私は烏山女学院高等部現生徒会長姉小路薫子と申します。以後お見知り置きを。」


 烏山女学院高等部生徒会長姉小路薫子。かの名門校の生徒会長を務めるだけあり、古く帝の血筋を引いた家系である姉小路家の次女である。

 文武両道さることながらあらゆる面で英才教育を受けておりまさに完璧超人。

 また年の離れた姉は悪くいってしまえば出来が悪く次期当主としての地位も約束されている。ちなみにその姉だが実は家のコネで教師として学院で雇ってもらっており彼女の担任だったりもする。


 まぁ、本人はその優秀さからかプライドが非常に高く基本人を見下した態度で生活を送っているのだが、しかし人望は厚く生まれながらにして人の上に立つべき人物であった。


 「へー。」


 とは言えどもそんなこと響きからしたらどうでもよくそれよりもまたいじりがいのある奴が増えたことの方が興味として勝っているようであり、耳掃除をしながら話半分以下程度で聞き流している。

 無論プライドの高い彼女からしたらそんなものは屈辱以外の何者でもなく口撃に走るのだが、それが間違い。この男口喧嘩では百戦錬磨。人を煽ることに関してはカサゴもない舌を巻くほどである。


 「あなた、人の話を聞く態度がなってないんじゃありませんか?人と話すときはしっかりと相手の目を見て真摯に受け止めなさいと教育上、いえ成育上教わらなかったのですか?嘆かわしいですね。」


 「え〜、上から見下してる人と眼を合わせなきゃいけないと俺が下から除く羽目になるじゃないですか〜。そもそもぉ、人と話すときにぃ、上から目線でぇ、人を見下してぇ、話すなとぉ、教わらなかったんですかねぇ〜。あ、もしかして教わってないんですかぁ〜。あれまかっわいそぉ〜。そんなことも教えてもらえないなんてぇ、よっぽど劣悪な環境で生活してたんでしょうねぇ。」


 「せやなぁ。そもそもな話そげなこと聞かされとらんでもわかりおることやと思いますけどなぁ〜。それとも実は日本以外、それどころか人間社会とすら関わらない秘境の原住民族に出身か何かとちゃいます?」


 「あ、知ってるか?どっかの島にマジで拒絶してる民族がいるらしいぜ。」


 「知っとる知っとる。なんでもヘリで近づくだけで竹槍がぎょうさん飛んでくるらしいやねぇ。怖いわぁ。」


 「おい、あんまり近づくなよ。竹槍で左胸を貫かれるぞ。」


 「「こっわー。」」


 「あぁぁああ、もう!!いい加減にしてください!!それに政宮さん、あなたには常日頃から烏山の生徒としての自覚を持ちなさいといっているでしょう!?ただでさえ目立っているというのに・・・。」


 急に乱入してきた辿とのダブルコンボになすすべなく敗北を記してしまう。

 辿もその手のボキャブラリーは豊富だし、人の煽り方も熟知している。故にそのウザさは二倍。本人達はウサギと戦車、疾風と切り札レベルの相性の良さでノリノリだが、けしかけられる方はたまったものではない。


 「何?もしかしてお前校内じゃ有名人なの?」


 「せやで。ウチは人気者の美少女やからなぁ。目立ってしまうのも仕方ないことですわ。」


 「悪目立ちですけどね!!この問題児!」


 「会長落ち着いてください!!」


 「そうそう、あんまりカッカしちゃダメだっての。せっかくの綺麗な顔がだいなしじゃん。あ、あたし西条菜那葉、よろしく〜。」


 アンドモア集団の中からでてきた一人が軽い挨拶片手に興奮状態の薫子を静香と一緒になだめ始める。

 色の抜けた明るい髪色とウェーブをかけたであろう毛先。こんな世界だというのにしっかりとメイクが施されており、着こなしもどこか挑戦的なものがある。


 「烏山にもこういうのいるんだな・・・。」


 「そーりゃ当たり前だろ。むしろなんでいないと思ったんだよ。いくらなんでもお嬢様に幻想抱きすぎだっての。」


 どうやら十勝からすれば超名門の上流学校の生徒にギャルギャルしい子がいるとは思わなかったようで驚き半分イメージが壊されて釈然としない様子だ。

 それはほかのクラスメイト達も同じようで物珍しげに見ている。


 「あれ?もしかしてがっかりさせちゃった系?」


 「なに気にするな。あれは思考ハッピーター○系だ。」


 「俺そんな甘い煎餅みたいな考え方してないんだけど!!」


 「甘い幻想抱いてるくせにか?」

 

 「うまいなぁ、山○くん座布団一枚。」


 「誰ですのそれ!?私の名前はリコリスです!!」


 突如初対面の相手から座布団運び扱いされたリコリスがいつもの調子で激しく返すがどうやらそれは悪手だったようで、辿は面白いものを見つけたとほくそ笑んでいた。

 それに対し響も「な?こいつ超いじりがいがあるだろ?」と口では言わないものの幼子でもそれを読み取れるようなニヤケ顔で眼を合わせている。


 「そうです会長。貴方様があのような下賎な輩に気を揉む必要なんてありません。私がここでどちらが上かをはっきりさせてやります!」


 「は?お前如きがどうするって?寝言は寝て言えよクソアマ。それとも今すぐ俺直々に寝かし尽くしてやろうか?絞首と殴打好きな方選ばせてやるよ。」


 突如薫子を庇うようにして前に出たサラサラときめ細やかなショートカットの生徒がきつい眼光とともに挑戦的な台詞を響に向ける。

 発言から察するに彼女に心底心酔しきっている面倒な取り巻きみたいなものだろう。もしくはクレイジーサイコレズか。


 しかし最初は粋がっていた彼女ではあるものの、その態度と言い回しが響の癪に触ったらしく、軽い怒気と殺気を当てられて、情けなく震えてしまっていた。またその余波は後ろの薫子や菜那葉達にも被弾しており、ちょっとちびってしまった奴がいたのは内緒にしておいてほしい。本人の尊厳を守るためここではその名を口にすることはしないが、もしかたらこの先明かされることがあるかもしれないので頭の中の片隅にとどめておいいてくれるとありがたい。


 「夏菜さん、さ、さすがに名前も名乗らずにいては品性を疑われてしまいますよ。」


 「・・・水鳥夏菜。会長に何かあれば私が黙っていませんから。」


 「はっはっは、そりゃあいい。知ってるか?威勢と実力は反比例するものなんだぜ?」


 冷たく言い放ち、もうお前に興味はないと言わんばかりに響は顔を逸らす。


 残りの二人、倉橋友恵と真澄和南もどうやらさした興味は出なかったらしく、さっさと話とやらを済ませてほしいという様子だった。しかしこれでもどこにもいかず一応話は聞いてあげるだけまだましなのかもしれないが。


 とのことで、響や章太郎達も軽い自己紹介を済ませてようやく話は本題へと移っていった。


 「端的にいうと同盟を組みましょうというものです。」


 「同盟?」


 「はい、世界を救うというのはとても大変なことです。私たちは全部で25人呼ばれましたが、それだけでは不安が残ります。なのでそちらの興英の生徒と手を組んで共に魔王討伐を目指せばかかる時間もリスクも減りますし、しかも成功の目処が大きくなります。」


 成る程道理だ。この世界に呼ばれたふたクラス。いくら強い力を持っているとはいえ世界の脅威であろう者の討伐などそう易々とできるとは思えない。ならばそこで同じ境遇の者共が手を取り合うのはなにも不思議なことはなく、メリットこそ多けれどデメリットなどは即座には出てこないだろう。大きな組織になれば統括しにくくなるが、それはどこも同じ。

 この申し出は断る理由もなく、願ったり叶ったりのものではあるのだが、しかしそもそも根底から間違っている。


 「どうでしょう?既に二宮輝さんのパーティーには話を付けてあります。」


 「へぇ、あいつらもここにきてんのか。」


 「そうだよ。私たちより二、三週間ぐらい前だっけ?予定だと。」


 「確かそうでしたね。変わりはないでしょうか?」


 章太郎達は途中とある小国によっていたが、輝たちはまっすぐとこの国に向かっていたはずであり、逆算すると瞳の言っていた頃にはついている計算だ。それだけの時間があれば二つの学校間での話し合いも多くされていただろうし、輝ならば自分勝手に決めたりバカな選択などもせずに、あくまで自分たちのパーティーだけならと答えたであろう。だから彼女らは提案として呼びかけてあるのであり先ほど『には』という接続詞を使ったのだ。


 ちなみに余談だが途中まで章太郎達と途中まで一緒にいた秀助一行は、響らが帝国を出てから五日ほど経った後に帝国入りしたので、あいにくの入れ違いになってしまった。運命のいたずらかはたまたまだ会うべきその時ではないのか、ともかく再開はまだ先になりそうである。


 「先ほど言伝の魔法で読んでおきましたので、郊外に出ていなければもうじきくる頃合いです。それまで待ちましょう。彼らがいた方が話も早く進みそうですし。」


 「ま、いた方がいいのは確かだな。関係者な訳だし。だがその前にどっか店入んぞ。こんな往来で30人近く集まってしまって話してちゃ目立つしいい迷惑だろ。」


 「そういやそんなにいんのか。たしかに大通りを私たちで塞ぐわけにもいかないな。」


 その意見に皆賛同し、探すもののここらにカフェの類はなくギルドや宿屋もない。あるのは住宅街や食品関連の市の類ばかり。

 しょうがないので、静香達の泊まる教会(烏山の生徒はパーティー単位で別れてそれぞれ別の教会を拠点に寝泊まりしている。)へと赴くことに。輝たちにもそう伝えを送り、歩くこと十分ほど。少し大通りから離れた木造の教会にたどり着き、戸を開けて中へと入っていく。先頭の静香が中のシスターや牧師達に話をつけ、食堂を提供してくれるようだ。


 差し出されたコーヒーを啜ること十分程度、食堂に新しく客人が入り込み、それは軽装の輝たち出会った。その出で立ちから今日はオフかもしくは町の外での予定がなかったのだろう。


 「!!??霧村!?ま、まさか幽霊!?」


 「アーホ、こんな真昼間からこうもはっきりと見える霊がいるかっての。生身じゃボケ。」


 「いや、でもならなぜ生きている!?」


 「はっはっは、すり替えておいたのさ!!」


 「あまり適当なことをいうんじゃありませんの。話が進まないじゃありませんか。」


 「生きていたのかと聞かれたらこう答えたくなっちまうんだよねぇ。世の情けってやつ?」


 最初にその姿を見て声をあげたのは先頭にいる輝だった。やはり響が生きているという事実は衝撃的らしく物の見事にその度肝を抜かれていた。続く玄助も普段の冷静沈着さからは珍しく困惑しており、また趣味が悪いことに響はその様子を見て楽しみ余計に混乱を招くためにネタ満載の答えを返したのである。


 「ま、冗談はさておきこの通り生きてんよ。ほら、物にも触れるし足もちゃんとある。先に言っておくが何があったかは話さないから聞くんじゃねぇぞ。説明する気は針先ほどもねぇし、そもそも話す義理すらねぇ。それよりさっさと座れ、時間は有限なんだぞ?」


 「それで済まされるとでも!?貴方は・・・。」


 「じゃぁ逆に聞くが、聞いてどうする?何か変わるのか?どうせ『大変だったねー。』で終わるんだろーが。言ったところで何も進展はねぇし、もしこれからの糧に云々言うんだったらそれこそ無駄だからわすれろ。」


 「おい、流石に冷たすぎやしないか?俺らがどれだけショックだったかわかんのかよ!!」


 「そこについては謝るし、悪いとは思ってる。けどこれとそれとじゃ話が違う。妙に話を脱線させんな。」


 何度もしつこいと若干イライラしながら催促をかける。

 特に天音を筆頭に納得のいかない一行であったが、この調子では何も話してはくれまいと悟ったのか渋々と席についていった。

 座ったところで少しは落ち着いて周りがみえるようになったのか、興味は視界に確認できた見慣れない少女達へと移る。


 「ねぇ霧村くん。そっちの女の子達って・・・。」


 「あぁ、赤いのが深山のツレ。んでそれ以外が俺のツレな。経緯とかはデリケートな問題だから控えてくれ。お前らがムーニー○ンか○オレくらい寛容がありゃやぶさかでもないが。」


 「人間に通気性や弱酸性を求めるなよ・・・。」


 と、呆れるものの彼のいう通り何かしらの事情があったのならば無粋に触れるには褒められることではないだろう。そう思い一同気にはなるもののそれは胸にしまっておくことにしたようだ。


 「(アナザー、周囲を見張れ。教会関係者は声の届く範囲にいるか?盗聴の類は?)」


 「(承認・・・。どちらも大丈夫です。一番近いのが給湯室ですが、普通の話し声が聞き取れるような場所にはありませんし、遠見遠聞の魔法の気配もありません。)」


 「(ん、サンキュー。不用心なだけか疑ってかかる必要なしと見たか・・・ま、どちらにせよ都合がいいことに変わりはないな。)先に言っておくが、俺は同盟を組む気なんざ更々ねぇぞ。」


 その言葉を聞いて、章太郎達は「でしょうね。」と言った顔をしているがそれ以外のほとんどはなぜと目を見開いている。

 特に大きく反応したのは向こうの生徒会長様ーーー薫子であり机を叩き荒げる声は空気を震わせていた。


 「何故ですか!!世界の危機なんですよ!それに最善を尽くさないで・・・。」


 「“この”世界のな。ここがどうなろうが俺にはカンケーのない話だし、元の世界が危ないってならまだしも、誰が好き好んでンなところに労を割かなきゃいけないんだよ。」


 「こんなところ!?貴方は何を言っているのですか!!それではここにいる何十万何百万の人の命がどうなってもいいと!?」


 「勝手に引っ張ってきて謝罪の言葉もない相手のために命かけれるかっての。それにかんして言やあお前らには感心するよ。素晴らしい自己犠牲だ。それとも盲目って言ったほうがいいか?大衆の正しさってのに。」


 心底呆れ気味で返す響。そもそも言ってしまえば魔王側に近い彼にとっては世界を救う気があるわけもないし、じゃなかったとしても見ず知らずの人間にそこまでする気などない。ましてや自分たちを利用しようとする狂人達には微塵もそんな気が沸くはずがあるわけないだろう。


 だが、そんな事情も人の内心も知らない薫子からすれば無慈悲で無責任な言葉であり、言い方も相まって先ほどよりもヘイトが多くたまってしまう。だが、理由としては筋の通ったことを言っているので叱咤と萎縮の間のジレンマに悩みが生み出される。

 だからか少し正常な判断ができていないようで反論んとしては中学生レベルの稚気なものになってしまうのであった。


 「で、ですが、最悪貴方にも危害が及ぶかもしれないんですよ!」


 「現状じゃ何も起きてねぇだろ。勇者様がありがた〜く召喚されたってのに件の魔王様は何の行動もなし。殺して帰れる保証がない以上わざわざ倒しに行く理由もないし、まぁきたらきたで叩きのめせばいいだけの話。むしろ危害加えてるって言ったらこっちに呼んだアバズレやら神やらの方が圧倒的だ。」


 「貴方、この世界の右も左も分からない私たちによくしてくださった方達になんて口の利き方を!!」


 「だーから、その右往左往状態にした張本人だろうが。なんでマッチポンプに返す恩があるんだよ。しかも論点をずらそうとするんじゃねぇ、俺の物言いを非難するのはお門違いだろ。」


 本筋に言い返せる隙がなかったのか、代わりに響の口の悪さに論点をずらしてまで避難をあびせようとする。故意かはたまた無意識かはわからないが、それすらも指摘されたのはひどく恥ずかしい。

 だがそれでも彼女は諦めようとせず、意固地なのか負けづ嫌いなのか無駄な論争は続く。


 「それでも、無辜の命が脅かされているのですよ!それを人として放っておけというのですか!ましてや私たちはその力を持っているというのに。」


 「なんだろうとまず救いたいという気にすらならねぇんだよ。いいか、助けられるのと助けたいは違うぞ。俺は手があってなお嫌だと思う理由があんだ。帝国の奴らだけとかなら話は変わるが、この世界全部見渡せば、ヘドが出るとしか言いようがない。忌避や無関心じゃなく嫌悪で言ってるんだ。そもそもテメェだって7割方打算でやってんだろ?」


 吐き捨てるように苦虫を噛み潰したような顔で悪態をつく。また最後に言葉に薫子の表情が変わり、先程の強気なものから一転、どこか焦っているような喋り方になる。


 「な、何をバカなことを。私は人として・・・。」


 「・・・身のこなしから察するにお前は軍師タイプの人間だろう?となれば決戦の時要石になるのは間違いないよなぁ。それで向こうに帰って大人が俺らの話を信じたら『魔王を倒たパーティーの軍師様』だなんて勇逸無二の箔がつく。仮に帰れなくとも栄光は約束されたもんだからなぁ。負けて死ぬ危険性もお山の大将なら早々にねぇし、お前からしたらいいことづくめじゃないか魔王討伐。」


 反応から察するに図星か、薫子はそのきつい双眸を大きく見開いて言葉に詰まっている。またそれだけでなく顔色も芳しくない。

 

 「勘違いしてもらっちゃ困るが、俺は別にそれを否定してるわけじゃないぜ?むしろそっちの方が好ましいぐらいだ。私利私欲の方が正義のためなんかよりよっぽど清らかだね。」

 

 単純な善意より金がらみの相手の方が信頼できるといったものと似たようなところだろう。清らかかどうかは別としてたしかにこちらの方が人間らしくて親近感も湧くし好意的に捉えられる。


 薫子の方はといえばあれから口を開いておらず、論破されて何も言い返せないよう。探れば論争は続けられただろうが彼女にとってここまで反論しかつ口達者な相手というには初めてでそれが精神を大いに揺さぶっているようだ。おそらくこれ以上は何も出てこまい。

 また、タイミングとしては丁度良いか、ここでアナザーからの報告が入る。


 「(マスター、シスターの一人がきます。注意してください。)」


 「(了解)とにかく、この話はこれで終わりだ。深山達がどうするのかは知らんが、これ以上この話題を俺にふるなよ。」


 これまたナイスタイミング。そう言い終わった直後にノック音が鳴り、ドアを開けてひとりのシスターがワゴンとともに入ってくる。


 「これ、お茶です・・・。」


 端正な顔立ちの少女なのだが、目の下に異様なまでの深いクマがあり、喋り方も相まってか少々不気味だ。また、ほかのシスターたちよりも露出が少なく、というか顔と手の半分ほどしか肌が見えていない。

 言葉通り彼女はお茶を次に来たようで全員の前にカップと中央に角砂糖の入った瓶。ガラス製のティーポットを三つ置き小さく「では・・・。」と呟くと静かに部屋を出ていってしまった。


 極秘という意味では丁度いいタイミングだったが、話の中だと割と最悪な部類のタイミングでの入室だったために場には何とも言えない静寂が流れている。

 あまりよろしくない雰囲気の中、空気を変えようと輝は響に新しい話題を振るうことにした。


 「わかった。きっと何かあったんだろうし、あまり深く聞くのも悪い。でも、折角こう再開できたわけだし彼女達も元の世界の仲間なんだ。記念というか親睦会みたいな感じで、せめて一回くらい一緒にクエストやらないか?」


 「あ?まぁそんぐらいなら別にいいがあいにくこっちもやることが・・・いや待て、ふむ。条件付きでならいいぞ。」


 「本当か!?」


 「あぁ。」


 いつもだったら頭ごなしに『ヤ★ダ』と満面の笑みで答えていると頃だったが、どうも彼らというかクラスメイト全員にいらぬ悲しみを負わせたことに若干の罪悪感のようなものがあったようで色の良い返事が返ってくる。


 「条件というのはなんだ。あまり無茶難題はこなせないぞ。」


 「いや、ちょっとした情報が欲しいだけだ。条件に当てはまる場所ないし建築物を教えてほしい。」


 いくらビヨンからある程度の情報はもらっているとはいえ、来てすぐにどこにあるかもわからないものを探すというのは難しい。やはりこの街をよく知るものというのはいて困らないし、その方がクエストで一日使ったとしても効率はいいだろう。情報とはそれだけ大事なものなのだ。


 「条件に当てはまるですか・・、?それは一体?」


 「悪いがそれは教えられん。」


 またもの禁則事項に納得のいかない各々であったが、また反対して機嫌を損ねやっぱいかないなどと言われても困るので仕方なく喉まで出かかった言葉を飲むことにした。なにせもしかすればこのクエストの間に心変わりさせられるかもしれないのだから、得られる可能性は実行していきたい。


 「・・・後払いでいいでしょうか?こう言いたくはありませんが信用ができません。」


 「それはお互い様だが・・・ま、いいだろう。先に条件つけたのはこっちだしそれくらいの譲歩はしてやる。」

 

 かくして翌日、三チームに分けての親睦合同クエストが開催されるむねとなったのだ。

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