ボケが増える疲労感。
突如現れた五人組。その一人が発した言葉に一同間で衝撃が走る。
決して自分たちかそれをを呼んだ王国の上層部しか知り得ない情報を口にしたのだ。
いったい何者かと章太郎たちは身構えるが、その横で響はただ一人落ち着いていた。
もちろん驚愕がなかったわけではない。だが、だからといってそこまで警戒する必要がないと考えたのだ。訳としてはまずそこまでの戦力ではないというのが一点。警戒より興味が勝ったというのが次点。そもそも彼女らが何者かだなんて一発でわかるのだからというのが最後。
だからと言えどむやみに覗くのも悪趣味かつ面白みもないで、あくまで相手が身分を明かそうとしない時の強行策として温めておくと、次の言葉を待っているのである。
「なんや、そこのあんさんは緊張感ないなぁ。それとも、疑うことも知らへんほど心が優しゅうできとるんかねぇ。」
「ほざけおかっぱ。初対面の相手に随分と棘のついたものいいじゃねぇか。まぁ、俺が心優しいってのは間違いじゃないが。」
「いったいどこをどう見たらそういう言葉が出て来るのやら・・・。」
少女達の一人、黒髪のボブヘアー、いや話す京言葉からおかっぱと称した方が雰囲気にはあっているだろうか。それこそ日本人形のように白絹の肌をした彼女がはんなり嫌味を含めた物言いで響を指摘する。
それに対してむしろお前の方が棘のある言い方してるだと言われんばかりの戯言にため息交じりの嫌味。
だが今回は成長した響。これくらいでは額に青筋を浮かべるだけで済ませる。
こんなところで目立てば厄介ごとになるのはまず間違い無いく、先ほどのやりとりが無駄になるのを嫌って抑えているのだ。
「なんやおもろいなぁあんさんら。そこの嬢さんはそげなこと言うてはりますけど?」
「聞き流せ。見ろよこの優しさ溢れるオーラを。今回だってお前らに痴態かかせ無いようにしてやったっていうのに。」
死ぬまでは行かなくとも殺気に当てられ意識を失って失禁するぐらいにはなるだろうか。なんにせよ運が良かったとしか言えまい。騒ぎになる街中じゃなければ強烈な一陣が襲いかかってきて、最悪許容を超えてしまうこともあり得るのだから。
「あ、あの・・・、それより私の質問に答えて欲しいんだけど・・、。」
「んあ?」
遠慮がちに聞いてきたのは最初に声を掛けた一人ーーー姫カットの黒髪少女であった。
最初と違って砕けた喋り方をしているのはきっと響の言動を見てのことだろう。
しかし、思い返せばここまでの時間があったというのにその答えを出していなかったことに気がつく響。
が、
「え〜、相手に身話聞くならまず自分から名乗れってパパンかママンに教わらなかったのかねぇ。」
「せやなぁ、それが礼儀っちゅうもんやろなぁ。誰もどこぞの誰かもわからん相手にそないなこと聞かれてもあやしゅうて答えられんわなぁ。」
「だろぉ?」
そもそもこの男がふつうに答えるはずもなく、憎たらしいような煽り顔で飄々と尺に触る言い方をする。
それだけなら想像できたことだろうしどうせやるだろうと思ってはいたが、ここでまさか京弁の少女が乗ってくるとは思わなかった。こちらもニヤつきながら言っている節を見ると、根本が似たり寄ったりなのかもしれない。
「すまんなぁ、ウチかて真っ当に育てたつもりなんやけどねぇ。いったいどこをどう間違えてしまったのやら。」
「いやいや、奥さんの苦労がそれを見るように分かりますよ。これはあれだねぇ。親とか環境とかじゃなくて、生まれ持ってそこらが欠陥してるんだろうよ。常識欠けてると生きづらくないか?」
「なんでそこまで言われなきゃいけないの!?そもそも私はあなたに育てられた覚えなんてないんだけど!?」
「「うっわ〜、理由なくキレる現代の若者怖いわー。」」
息ぴったりに煽り続ける二人。ちょうど言葉が重なったことにより目を合わしてニヤリと口を歪ませ右手同士をたたき合わせる。
その様子を見て声を荒げていた少女はガックシと肩を起こし、リコリスとルールーは頭を抱え、パイフェンは苦笑い。ほかの一同は事態が飲み込めないのか目を点にして呆けている。
「もういいわ。・・・私たちはこの教国に呼び出された烏山女学院高等部2年c組の生徒。私はこのパーティーのリーダーで橘静香よ。」
短い自己紹介ではあったが、そこには決して見過ごせない単語が出てきた。だが、この阿呆が反応したのはそこではなく、しょうもない一点だった。
「「ダディャーナ○ァーン!! ナズェミテ○ンディス!」」
「なんでそう巫山戯るの!?というか何そのへんな言葉!?」」
「何お前この手のネタわかる系?」
「あんさんかてつうじるひとなんやなぁ。驚いたわ。」
「いやー、嬉しいねぇ。ネタが通じる奴がいるってのは。」
「せやなぁ。」
「そこだけで納得しないでよ!!」
またもや二人でしてやったりと手を叩き合う。バカなのか、本当にバカなのかこの二人は。
確実にほかに言及することがあっただろうに、しかもご丁寧にオン○ゥ語まで使う始末だ。常識が欠落しているのはどう考えてもお前達の方だろ。
で、一緒に巫山戯倒していた京弁の少女は自分の番が回ってきたとちょいと落ち着かせて口を開く。
「とりあえず、次はうちの番やなぁ。ウチは政宮辿。こう見えても結構なお嬢様なんよ?」
そもそも、烏山女学院は関西でも有名なお嬢様学校であり、関東の一般私立に通う響達でも知っているような名前だ。
京のとある山間部に校舎を構える、150年以上もの歴史を誇る名門校。そこには重鎮や名家の娘が通うまごうことなき本物のお嬢様学校。初等部から大学院までの一貫校であり、かつ全寮制。かと言えども外界からの交流を完全に遮断しているわけでもなく、外出もある程度自由にはできる。というかそうでもなければ皆気が滅入ってしまうだろう。なにせ最長20年近く山の奥で隔離生活など獄中とさして変わりあるまい。
さて、お嬢様学校ということは、この少女達も相応の家柄のものである。静香もとある有名大学病院の院長の子であるし、辿に関しては平安のその頃から名を残す超名家のお嬢様である。まぁ、本人の性格上そんな風には見えないし、よって家の中でも浮いてる立ち位置だが、ここ10年は家族と顔を合わせていないので、本人は気にした風ではない。
「まぁ、烏山女学院の生徒ってんならそうなんだろうよ。それで、残りの三人は?」
「・・・・・・青雲納生。」
「お、おう、そうか・・・。なんだ今の間。」
次の小柄な少女は、ワンテンポ否二、三テンポ遅れて返事をする。しかも名前だけ言ってあとは何も語らず口を固く閉じてしまった。
流石のこれには響も面をくらい顔を引きつらせてしまう。本人含めこれまでさまざまな個性強い人たちとあってきた彼ではあるが、こと最初のインパクトだけ見ればある意味彼女が一番かもしれない。
少なくとも響の中ではそこのところ『ただの人間には興味が云々何某それこれ』言うような神様的存在の少女よりも上に立っている。
「きいせんでええよ。この子いつもこんな感じやから。」
「ん、理解したわ。そういう系ね。」
それを理解したの一言ですませていいのかも不明だし、例えこれがいつも通りだとしていや一層気にかかるはずだ。普段ならそこに突っかかるのだろうが、先ほどの言い草、この男半ば開きかけている。後二人もいるからとっとと済ませたいのだろう。
「物部阿吽、よろしくね。」
全体的に色素の薄い、涼しげな眼をした少女が次に名乗った子だった。存在が希薄というか周りから少し浮いて見え、ふとした瞬間に風とともに消え去ってしまいそうな、そんな感じがする。
響は『物部』という苗字から先祖関連で何かあるのかと思ったが、しかしだからといって何ができるわけでもないし、そもそもただの考えすぎだろうと一蹴。しかし、ほかの人よりかは興味を持ったようで少し気にかけておこうと頭の片隅に置いておいた。
「申し遅れました、私秦妃姫と申します。以後ご厚意に。」
最後はそう言って深々と頭を下げた黒髪の少女だった。まさしく大和撫子、お嬢様という言葉にふさわしい容姿であり、心持ちも柔くしとやかなものである。大和撫子といえばそれこそ辿もそう言えるだが彼女の場合内面がそれとかけ離れているために、その単語は今この場で彼女に一番ベストマッチしているといえようか。
「あれまた礼儀正しい子。さっきの静なんとかとはえらい違いですねぇ、お爺さん。」
「そうやねぇ、やっぱり人としての出来が違うんじゃないかねぇお婆さん。」
まるで長年寄り添ってきた老夫婦のような喋り方でまた唐突に静香を煽りに行く二人。特に打ち合わせをしたわけでもないと言うのにこの息の合い方は異常と言わざるおえない。
「どうして矛先が私に向かってくるの!?」
「諦めたほうがいいですわよ。あの阿呆はあれがデフォルトなんですもの。巫山戯てないと生きていけない、いっそ羨ましいですわ。」
この理不尽に声を上げる当の静香であったが、その方に諦めろとリコリスが手を置く。よく煽られる被害者同士仲良くしてほしいものだし、きっと同情の気が出たのだろう。
「それにしても、お二方初対面だというのに息ぴったりですね。まるで竹馬の友のようで。」
「『うん、ちょっと異常なくらい。それにしてもおじいさんとおばあさん逆なんだ。』」
二人も出会ってすぐさま意気投合した様子に驚いているようだ。といってもそれは決して悪いことでもないので慌てたりもせずに様子を見守っている。
さて、二人がひとしきり静香をいじり倒した後に、ようやく響達も質問に肯定で返し名乗り上げた。もちろんそうでない面々に関しては適当にごまかしを入れておいたが、さて辿だけは何かあるなと目を光らせていたことには誰も気づかなかった。
また、聞くところによるとここの法王からすでに王国の召喚を聞いたことと、既にほかのクラスメイト同士が接触しているために興英の名前を知っていたそうだ。
なぜ響達を見ただけでそうとわかったかって?日本人なんて見ればわかるだろう?
「で、あんた達は俺らになんのようなんだ?」
「そ、そうだな。声をかけたんだから何か用事があったんだろう?」
響の問いに連太郎も頷く。もしかしたらいたからとりあえず声をかけたと言うこともあるかもしれないが、一般的に考えてもそれはもしかしたらの範囲を出ることなく、普通に理由の一つや二つはあるだろう。
「用、ね。あいにくそれがあるのは私たちではなくて会長なの。」
「会長?」
首をかしげるのは瞳。会長と言うからには何かのトップで、学生の中でその名前がつくのは生徒会長しかいないだろう。となるとその生徒会長のところ行かねばならないのだろうか。
「そこから先は私がお話しいたします。」
「会長!?」
凛と背筋の伸びた声が通り、空気を震わせる。見ればそこにはまた新たな女子集団がいて、真ん中のが妙に偉そうな態度でこちらを見つめている。
静香の叫び声から、彼女が件の生徒会長なのだろう
「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」
突如現れた烏山の生徒会長と思わしき少女(達)に烏山以外の面々に緊張と驚愕が走るが、ここでも一人、いや二人そんなこともなく巫山戯だす者がいた。
まぁ皆ならば言わずもがなわかるだろう。
「「誰だお前は!?」」
「お待ちください、なぜ政宮さんまでそうおっしゃるんですか!?」
「「おっと会話の成り立たないアホが一人登場〜。質問分に対し質問分で答えるとテスト0点なの知ってたか?マヌケ。」」
「あー、もう一体なんなんですかあなた達は!!」
ごめんなさい、生粋の馬鹿野郎どもです。




