新しい相棒です。
「なんだよフィーチャリング太郎ピンキーEX。いきなりそんな素っ頓狂な声出して。なんかいいことでもあったのか?もしくは頭のネジが一本飛んだとか。」
「出会い頭に人の名前をそんなふざけた風に間違えるお前だけには言われたくねぇよ!!」
「うっわ、すぐにキレる現代の若者怖いわー。」
続けていいかいしたくなる気持ちを、このままだと一向に進まなくなるとぐっとこらえる章太郎。
実にいい判断だ。この男のおふざけに付き合ってたら日が暮れるどころか丸一日はかかってしまうだろう。
「何やってますの貴方。今どう考えても巫山戯るような場面じゃありませんわよね。バカなんですの?馬鹿なんですわね。」
「じゃぁこんな状況で馬鹿相手に煽るお前は大馬鹿ってことでいいんだな。」
「は?」
「あ゛?」
「ふ、二人とも落ち着いてください。本当に今はそんな場合じゃないと思うのですが・・・!!」
さらに入ってきたのはゴシックロリータのドレスに身を包んだ少女。みんなご存知リコリスさんとそして二人の言い争いを鎮める銀髪の美少女、パイフェン。もちろんルールーも後からやってきて呆れたような顔をしている。
『とりあえず、そこの男の人と知り合いなの?』
「ん、クラスメイト。」
さらっと、しかもにべもなく言ってのける響。感動的なとまでは言わないまでももっと言い方というものがあっただろうに。そんな出身地を聞かれて答えたみたいな言い方はあんまりすぎやしないか?
しかし、等の章太郎はそんなことよりも後から出てきた美少女たちが響と親しげ(?)にしている方にこそ関心が行っていた。
「(え、何こいつ漫画やアニメの主人公かよ!?なんでハーレムなんか作ってんの!?)」
肯定、たしかに響は主人公だ。といっても内面はとてもそうとは呼べる代物じゃぁないがな。
それと、ハーレムというのは否定しておこう。もちろんそんな和気藹々としたものではない。どちらかというとよせ集ねとかいった方が正しいぐらいだ。
「クラスメイト・・・奇遇なこともありますわね。まさかこんなところで貴方の旧友に会うだなんて。」
「ま、そこまで仲が良かったわけじゃないが別に悪くもなかったし、旧友は違うと思うがまぁいいや。しっかし驚いたわ。なんか団子屋があるらしいからアルファ○ティグマ継承者と美人騎士でもいるかと思ってきてみたんだがまさか深山がいるとは思わなんだ。」
仮に章太郎がいなかったとして、少なくとも伝説の勇者の遺品を探している二人組に会うことなんてあるわけないだろう。もしいたらそっちの方が明らかに問題だ。
「というかこれどうゆう状況?」
『すごい今更感。』
普通それは真っ先に聞くべきであろうセリフのはずなのに、なんで千文j・・・ゲフンゲフン、失礼。なんでここまで出てこなかったのだろうか。
まぁ、この男だとそれが日常茶飯事に行われるのだから、考えるだけ無駄か。
「!?いやそんなこと言ってる場合かよお前!?早く逃げろ!!みりゃ状況なんてわかるだろ!!」
こんな状態だというのに自分の心配より、級友の心配をするその姿はそこの男と比べてもこっちの方が主人公っぽい。
そして、これまた律儀なことに黒づくめの男たちは待っていてくれた。先ほど言っていたとおり、関係のない一般人を巻き込む気は本当にないらしい。しかも頑なに。
「まぁそこはどうでもいい。別に逃げるほどのことでもないしな。」
「は!?お前何言って・・・。」
「それよりお前はどうして襲われてるんだ?お前が何かしでかしたのか、それともその後ろの女か?」
そのセリフに、ソロモン、そして章太郎がピクリと反応する。普段は巫山戯ているのに、こういうところが鋭いのは流石といえよう。
その反応を見てある程度の予測を立てる響。きっと目の前の級友はあの少女を庇ってこの男たちと敵対しているのだろう。
褒められる行いではあるが、かと言ってこの少女が極悪人ないし、褒められるべきでない行いをしたかもしれない。
だが、そんんなこと響にとってはどうでもいい。
「少年、言っておくが・・・。」
「あぁ、オーケーオーケーわかったわかった。んなもん興味もないから言わなくていいぞ。」
黒づくめの一人が響になにかを説明しようとしたが、テキトーにあしらい話を切って、章太郎に向けて真面目な目線を送る。
「助けて欲しいか?」
「え?」
どっちが正しくてどっちが悪者だなんて興味も関係もないのだ。そもそも彼は正義の味方でもなければ何でもない。だから、顔見知りの章太郎の方に加担する。もちろん半分はそっちの方が面白そうだからという理由でしかないが。
「まぁ、気も弾けるだろうしただでとは言わんが・・・そうそう、話変わるけどもうこの店の団子食べただろ?味どんな感じよ。」
「いや、うまかったけど・・・。」
「よーし、じゃぁここはたらふく団子食わせてくれるってことで手を打とうや。というわけで黒づくめのおっさんたち、こっからの相手は俺がやるんでよろしく。ま、相手になる以前の問題だろうけどな?」
よって行儀悪く立てた中指を動かして、男たちを手招くのだ
♢
「少年、一体どういうつもりかはわからんが、あまり自惚れるものではないぞ?」
「別に自惚れてなんかねぇけど。妥当な判断だろ。だってお前ら程度だろ?」
黒づくめの男たちは敵対することになった響に向かい直し、先ほどの相手にならないと言った、自分たちを見下した言葉に、苛立ちを含んだ返しをする。
彼のことを知らない人間から見れば、この状況明らかに不利なのは響で、男たちの言葉は正しいのだろう。
だが、知らぬが仏とはまさにこのこと。悲しいかな、この男は普通どころの騒ぎではないのだ。故にさらに傲慢を上乗せして煽る。
「貴様、いくら仲間がいるとはいえ数は倍。また、我らとて相当の使い手と自負しているのだ。」
「おいおい、勘違いすんなよ。まさかこいつらはただの観客だってぇの。手出しなんかさせるわけねぇだろ?だってこれは俺がかっさらった案件だぜ?」
まるでちゃんちゃらおかしいと、首を傾げ肩をすくめて再度煽る。そんなことを繰り返していれば相手型も堪忍袋の尾が切れるというもの。黒づくめの男たちはここまでコケにされたのは初めてだと、文字通り食い殺さんとするばかりの勢いで響めがけて飛びかかっていった。
さて、先ほど自分たちで言っていた通り、彼らは相当のやり手だ。まず、個人で国家騎士団の正体程度は潰せるし、そこに熟練されたチームワークが入るため、その脅威は人からすれば計り知れないものになる。
だというのに、一向に響に対して攻撃が当たらないのである。どれだけやってもどれだけやっても最小の行動で避けられ、いなせられ。挙句暇なのか連れの女子どもと駄弁り始める始末。
そうだろうとも。この男変えすればこの程度、死にかけの蝿がごとき遅さか弱さなのだから。なにせこの男は、とっくに人の域を超えているのだから。
人間に怪物を倒せることなどありはしないのだから。
故に、あまりにも無益なのだ。
「あー、あれじゃん。これから団子食うのに血まみれとか食欲失せるやん。そうだな、リコリス。」
「なんですの?」
「切り口氷でも土でもいいから夫妻でくんね?焼いて閉じてもいいけど。」
はぁ、しょうがありませんわねぇ。いいですわよ。ですからっさっさと終わらせてくださいまし。」
「あいよ。」
一連のやりとりの後、響は一本の大太刀と呼ぶには長すぎる刀を取り出す。いつもの長柄の異剣ではない。彼らにはそれすらも使う必要性はないのだ。
彼が帝国の鍛治職人に打ってもらった新しい相棒(というにはいささか脆いか。)を出すその過程ですら、絶え間ない攻撃はかすりもしなかった。
そろそろ響も飽きてきた頃、というかさっさと団子を吟味したいので、無慈悲に一薙獲物を下ろす。
その姿、章太郎たちからは鞘から抜いて持ち直したようにしか見えなかった。きっと黒づくめの男たちも同じものを目撃しただろうが、それを確認するすべはない。
なぜなら彼らは皆、その躯を地に伏し、切り傷口は氷結されていたからである。
「どや。」
やけに得意げな顔をした響が、その中心で広角をあげていた。




