アクエ○よりポ○リ派です。
パチパチと、火が燃える音が聞こえて、少女は目を覚ました。
まず入ってきたのが集めた枯れ枝が燃え盛る様。焚き火の灯りがほのかに周囲を照らし、また炎特有の暖かさが肌に伝わってくる。
上を見れば月のない星降る夜空。これと周りの暗さから時刻は少なくとも日付が変わる方が早いかすでに変わっているかのどちらかだろう。
とりあえず、このままじっとしているわけにもいかないのでゆっくりと体を動かして活動に向けた準備運動とする。
「お、起きたのか。質問とかは後回しにしてとりあえずこれ飲んだ方がいいぞ。寝起きは水分飛んでるし、疲れ時果てて寝落ちしたんならなおさらだろ。」
声がした方を見れば火を挟んだ向かい側に座った一人の男、歳は同じくらいなので、少年が正しいだろうか。それが水飲み容器を差し出していた。
瞬間、体を強張らせ臨戦態勢をとる少女。同列して体に手を当てて何かされていないかの確認もとる。
「・・・なにもしてないぞ?それに俺は怪しいもんじゃぁって、まぁそんなこと言われたってハイそうですかって信じるわけないよなぁ。」
そう後頭部を掻きながらどうしたものかと頭を悩ます少年。
ここで少女は冷静になって状況を確認してみることにした。
まずは自身のこと。記憶にあるのはこの森の中を逃げ回り、その途中疲れ果てて近くの樹木に寄りかかったところまで。となるとそのまま眠ってしまったのだろう。
次は目の前の少年についてだ。一番危険なのは自分を殺そうとしてくる敵。そうなるとあの容器の中の液体に致死性の毒が入っている可能性は高い。
だが、もし殺そうとするのならそんな回りくどい真似なんてせず、眠っている間に胸をグサリとやればいいだけの話だ。もしかしたら毒殺に矜持をかけている特殊な部類の人種という可能性もなくはないが、まぁゼロに等しいだろう。
次に危険なのは麻痺薬の類が入っていて、身体の自由を奪い暴行に及ぶという可能性。
しかしこれも先程と同じく眠っている間に行えば済む話。しかし自身の体には弄られた跡や、下世話な話犯された形跡は見受けられず、そういった目的ではないのだろう。あるいは意識がある相手を無理やりする方が興奮するといった変態という線もあるかもしれないが、そんなことを考慮していたらキリがない。
そうしていくつかの可能性を巡っていき、目の前の少年が、100パーセント信頼に値するとまではいかなくとも、己が敵や悪漢の類ではなく、そうなるとある程度の緊張感と警戒心を持って接するのが一番の得策という結論に至った。
差し出された容器を受け取り、「・・・ありがとう。」と呟き、口の中にその液体を運び入れる。
すると今まで味わったことのないような適度に味の効いた甘い感覚が下を中心として口の中に広がっていくではないか。見ればその液体は薄く半透明に濁っていた。
「なにこれ、初めて飲んだ・・・。甘い海水?」
「そう聞くとポカ○も不味そうに聞こえるから言葉ってこえーな。気に入らなかったか?」
「ううん、美味しいしこの味好きかも。これ○カリって言うんだ。変な名前。」
そう確認を取る少女。変な名前といっているが、その響きがちょっと可愛いから地味に気に入ったことは内緒である。
「俺も名前の由来は知らないなぁ。まぁ、気に入ってくれたなら何よりだ。ポ○リは体内の水分に近い濃度らしくてただの水に比べて体への吸収がいいから脱水症状防いだりするのにはもってこいってCMでやってたから渡したんだが甲斐があったな。といっても見様見真似で作った紛い物だけどな。」
ちなみにポ○リに特に意味はなく明るい感じがするから付けられたそうな。つまりどうでもいい情報。
まぁ、名前に意味がなかろうと水分補給のお供としての機能が高いことに変わりはない。寝てる間というのも水分は消えていくし走って汗をかいた後というのであればなおのこと。脱水症状侮るべからず、章太郎のこの判断はなかなかの英断ではなかろうか。
「腹減ってないか?といってもレーションと具のないコンソメスープぐらいしかないけど。」
勿論本来ならパンや干し肉と言ったよくある旅のお供セット程度ならあるのだが、残念ながらそれを持つのは彼の担当ではなかったため、今は非常用に皆常備している携帯食シリーズぐらいしかないのだ。
「ありがと、それじゃあ貰うね。」
そう言って章太郎から新しいカップとレーションを受け取った少女は食事を始める。ただ、食事と言ってもほんの少量な軽食程度。ものの数分で終わってしまうものだが、あるのとないのでは段違いだろう。
「うっし、それじゃぁひと段落もついたことだし、そろそろお互い何者でなんでこんなところにいるのかについて話すとしようぜ。」
「っ!?」
章太郎が切り出したその話題に少女の表情が硬くなる。どうやら知られたくない何かが存在するらしい。
そう露骨に表情を変えては例え相手がチンパンジーやアウストラロピテクスであっても気づくというもの。
「あー、話しにくいんだったら別に名前とかそのぐらいでもいいぞ。」
「・・・いいの?」
「まぁ、そこいら辺はおたがいさまというか、なんというかそんな感じだよ、そんな感じ。そもそもこういうのは言い出しっぺから始めるもんだよな、悪い悪い。改めて、俺は深山章太郎。年は17だ。」
「ミヤマショウタロウ?もしかして日出国の人?」
その質問に、あーどうしたもんかと頭を掻きながら唸る章太郎。流石に異世界召喚云々の話をするのはまずいだろう。まぁ、こっちもあまり詮索しないと言ってるしおあいこだと適当にはぐらかすことにした。
「まぁ、その認識でいいや。どうせあんまり関係ないし。で、俺はもともと教国を目指して・・・。」
そうしてことの経緯を説明していく章太郎。しかし何故だろうか話が進むにつれてそれを聞いている少女の目が呆れたようなそれに変わっていくのだ。という不思議でもなんでもない、ぶっちゃけ皆同じ反応をするだろう。
そうして全て話終わったその後、少女は章太郎に対して至極真っ当な感想を述べたのである。
「それ迷子になってるのあなたの方じゃないの?」
「おまっ、それくらい気づいてるわ!でもなぁ、そうでも言い聞かせてないと惨めになってくるんだよ、この歳で迷子になったこととか、その他諸々色々来るんだよ!」
「・・・なんかごめん。」
どうやら彼自身も気づいてはいたのだが、見て見ぬ振りをして盛大な虚勢を張っていたようだ。むしろそっちの方が後々虚しくなるだけだと思うのだが、そんなことを言っても無駄だろう。
「ま、まぁ俺のことはいいや。これ以上は触れないでくれ。もうあんたの番でいいだろ?」
見ているこっちまでしょうもなくなってくるのでもう触れないでいてあげよう。いつまでも同じことで揚げ足を取るとバカに見えてく・・・今どこかの男女二人組の殺気を感じた気もしたが気のせいだろう。
「う、うん。私はソロモン・パニエンスラ。歳は16でその・・・ごめんなさい。」
自分の年齢の後で言い澱み、謝罪の言葉を述べる少女もといソロモン。やはり秘密にしておきたいのはなぜこんな場所にいるかのそれのようだ。
とはいえそこまで気にするようなことでもない。なにせ章太郎の方も隠し事はあるし、最初に言いにくいことは言わなくていいとも言ってあるのだ。
「別に謝る必要はないって。まぁ今日はもう遅いし、ここらで終わりにしようか。といってもさっきまで寝てたし眠気はないと思うけど・・・。」
そういった直後に欠伸が漏れ、軽く目頭に水分が溜まる。
それもそのはず既に時刻は深夜一時過ぎ。普段ならそこまでではないだろうが、しかし今日は森の中をずっと彷徨い歩き続けたのだ。強烈な睡魔が襲いかかるのも必然といえよう。
「うん、寝たばっかりだし、そんなに眠くないから火の番と見張りしてるね。」
「まじか、助かるよ。じゃぁ5時くらいになったら起こしてくれ。」
そう言って自分の腕時計をソロモンに渡す章太郎。幸いこちらにも時計は存在するので時間を読むのは造作もない。周りがデジタル時計な中アナログ時計を使い続けていてよかったと思う瞬間である。デジタルだとこっちの人間はわからないだろう。
「それじゃぁよろしくな。おやすみ。」
「うん、おやすみなさい。」
疲れからかはたまた時間帯からか、横になり目を閉じた章太郎はすぐに夢の中へと落ちていった。




