その日、運命に出会う
とある国境の森の中、ひとりの少年がてくてくとひとり足を進めていた。ひとり、と言う言葉通りにその周囲一帯に人影はなく、隣を歩くような人物はそれこそ影も形もあるはずはない。
もちろん通信機器の類や常人には見えない何某なんかがいるはずもなく、この森林帯内を彷徨っていた。
「ったく、連太郎達はどこ行っちまったんだ。この歳で迷子とか将来が心配だぞ全く。」
盛大なブーメランというかそれ自分に銃口向けた状態で引き金引いてるぞ。普通多数人からひとり逸れたら残った大人数の方を迷子とは言わないし、10人この状況を見たら12人はお前が迷子だと声を揃えていうに違いない。
さて、聞こえる内容から察した人もいるかもしれないが彼の名前は深山章太郎。
まぁ見ての通りパーティーメンバーとはぐれてひとり寂しく森の中を放浪中だ。
時系列としては二パーティーが小国へたどり着いて約1ヶ月ほど、丁度教国へと向かっている最中のことである。
「結構歩いたと思うんだがなぁ、まだ着かないのか。その前にあいつら探し出さなきゃならんしどうしたもんか・・・。」
能天気なことを抜かしているが、これ普通に危険な状態なんだが。食料の問題もあるだろうし、そもそもなにが出てくるかわからない。
しかも恐らく他の面子はこの阿呆を探しているだろうし、迷惑極まりない男だことで。
そんなこんなでかれこれ3時間ほどは歩き続けて、流石に限界がきたのか丁度都合よく近くにあった岩らしき物体に腰をかける。らしきとは言ったが特に他意はない。恐らく見た限りでは岩である、と言うただそれだけだ。別にこれが実はダンゴロムシの背中でしたとか、別にそんなことはない。
ちなみに、逸れてからここに至るまで、一度も魔物の類とは鉢合わせていない。流石の幸運と言うべきだか、だったらなんで迷子になるんだよと言う感想が頭をよぎる。
「方角はあってるはずなんだけどなぁ。太陽の動き的にこっちが西のはずなんだが。」
携帯用レーションを頬張りながら落ち始めた日を眺めて愚痴る章太郎。
たしかに方角はあってはいるのだ。しかし、そもそもこの森自体が東西に長く伸びている代物であり、むしろ横幅は決して大きなものではない。北に向かって1時間も歩けば正規ルートである本道に出ることができるし、まぁそうなれば合流も早急に済ませられるだろう。最も、この森の中を進んでいけば教国自体にはつけるので遅かれ早かれ再開はできる・・・はずだ。
「これもしかして横に行った方が道に出られんのか?」
お、どうやらようやくそこに気づいたらしい。まぁ、長らく歩き続けてもあたりの景色が変わらないのだから、その考えに至るのも特に不思議ではないのだが、ただ一つ問題があった。
「よし!そうと決まればさっさと進むとするか!!」
それは、他のメンバーがいる元来た坑道とは反対の方へと歩いき出したこと。
いや、方角のわかりにくい森の中でしっかり90度曲がれたこと自体すごいことなのだが、だからといって最初の目測を見誤ってはわけない。これでは結局再開が遠ざかるばかりだ。
ほんと幸運の女神に愛されているのか阿呆の神様に愛されてるのかわかったもんじゃない。いやいっそ二方から超愛されているんだろう。
それから数十分ほど。微妙にうねりながらもほぼほぼ真横に向かって進んでいった。
さすがというべきか、やはりここまで来ても一切襲撃の類はなく、その運の良さに感心するが、だからだったらどうして迷子になんかなったという思いは大きくなるばかりだ。
いっそこの迷子自体が何か幸運繋がるものなんじゃないかと邪推したくなる。人間万事塞翁が馬と昔から言えれている通りに、結果を見てみないとわからない。
「今ってどのくらいのところにいるんだ?マジで目印の一つもない代わり映えのしない風景だから・・・!?」
さて、一寸先は闇とはよく言ったものだ。不意に思い立って独り言とともにあたりを見回したそれが、運命の分かれ道だったのだろうか。
目の中に、なにかが飛び込んでくる。
丁度樹木によって死角となっていたそこに座り込んでいるそれは、きっと丁度ここで見回すと言う行動をとらなければ見逃していただろう。
そこにいたのは端正な顔立ちの少女だった。少々癖のある赤髪を肩上で切りそろえた彼女は樹木に背を預けて気を失っていた。いや、かすかに聞こえる寝息から気を失っているのではなく、単に眠っているだけのようだ。
「こんな森の中で居眠りって相当な神経してんな・・・。ん?なんか妙に汚れてるし、ぼっさぼっさしてるしこれ疲れ果てて眠っちゃった系?」
章太郎の言う通り、その少女の服や肌には土ぼこりが付いており、髪の毛や上着は乱れている。順当に考えて、何かから逃げてきたのかもしれない。
「こんなところで疲れ果てるって、妙な魔物にでも出くわして逃げてきたんかな?」
さて、この偶然とも運命とも取れるボーイミーツガール。ここからラブロマンスが始まるのか、それとも月並みな話で終わるのかは知り得ないが、少なくとも今ここでやることは一つだろう。
「流石にこれほっておくってのはできねぇよなぁ。かといって疲れてることころ起こすのも悪いし、・・・しゃーねぇか。」
そう言って少女の近くに腰を落とす。
太陽は沈み始めた夕焼けの頃。もしかしたらそこそこ長い夜になるかもしれない。




