ロイヤルストレートフラッシュ!!
ダニアンの店での騒動から二週間ほどの月日が経ち、響たちは当たり障りない毎日を過ごしていた。
とはいえ、この男が二週間静かにしてなどいられるはずもなく、街中でばったり出くわした占い師の女をいじめ倒したり、リフォーム中の現場に赴いて作業しているダニアンを冷やかしたりだとか、被害者一同がマッハでハゲそうなほどのストレスを与え得て、愉快痛快というように笑い楽しんでいた。一人最初っからハゲているのもいるが、そこはご愛嬌。
そんなこんなで(一人)日々を楽しんでいた一行は今、ギルドの中で暇を持て余していた。
と言っても、別段怠惰の極みのような生活をしているわけでもなく、今はビヨンからの新しい情報を待っている途中だった。そのため、こうやって時たまギルド内で彼を待っている時があるというわけだ。
それがない日は先程述べたように人々をからかったり、鍛錬の10や20をこなしたり、たまにクエストを受けて小金を稼いだりなど、そう言った風に過ごしていた。一応レベル上げもしてはいたのだが、もう随分と上がってしまったせいか、そこいらの小物ではもはや手に入る経験値は微々たるものでしかなく、この二週間で1、2上がった程度でしかなくもうこの辺りでの経験値集めはむつかしいのだろう。
「そういえば、そっちの世界だとこういう予定のない時はどう過ごしてますの?っく、ワンペアですわ。」
「ツーペアです。私も興味あります。そちらの世界のこと。」
さて、ビヨンが来るまで、暇つぶしとして駄弁りながらポーカーに興じていた。話題はリコリスが響の世界のことをふってきたところである。
「んあ?休日?と言ってもそんなに面白いもんじゃないぞ?大体はゲームしたりアニメとか特撮、バラエティ見たり、つ○やらニ○動見たり、あとは本読んだりとかそんなもんだぞ。っとロイヤルストレートフラッシュ。」
響の返しに頭の上に疑問符を三つ四つ浮かべる二人。この世界で生まれ育った二人からすると、ほとんど聞いたこともなく想像すらできないことであろう。
「えーと、なんなんですのそれって?フラッシュですわ。」
「ゲームというのはチェスとか双六の類でいいのでしょうか?どれも一人でやるには限界があると思うのですが。あ、フォーカードです。」
「違う違う。まぁ王道のRPG、ロールプレイングゲームで説明するが、簡単に言うと物語があるだろ?あれの主人公を自分の手で動かして話を進めていけるんだよ。しかも映像付きで。基本ストーリーはあるけれど、それに沿っていくのであれば、どう言う鍛え方をしてもどんなパーティー組んでもいいって感じだな。他にもそれを恋愛オンリーに絞ったやつとか、パズル系とかレースやら格闘色々あるぞ。最近はソシャゲが市場を占めてるけど。」
「ソシャゲ?」
また新たに出てきた単語を聞き返すリコリス?パイフェンも同じく疑問に思ってはいるが彼女の場合おそらく何かしらの略称じゃないかと理解いるようだ。とはいえそれがなんの略でどういったものかまではわからないらしい。
「ソーシャルゲームの略でな。基本的にはこのスマホ使ってやるんだが、あいにく電源切れてっからまともに使えはせんな。まぁ電源ついたとしても結局回線繋がんねぇから音楽プレイヤー程度にしか使えんけれど。・・・そういやログボも途切れてるしイベも全く走れてねぇ!やっべ割と早く帰りたくなってきたわ。」
ひらひらと自分のア○フォン8を見せてみる響。ホームシックになる理由がソシャゲとか、やっぱり普通じゃない。
「 ヤベェこっちいる間のアニメやニチアサも見れねぇし新刊や新作ゲーも買えねぇじゃねぇか!!こりゃ本格的に早く帰らねぇと!!」
夢も希望もねぇなこいつ。なんで異世界だなんて一般人からしたら夢のようなところにいて、そんなくだらない現実で帰りたがるんだ。ある意味ここはアニメやマンガ、ラノベゲームぼ世界だぞ。
「ま、まぁそれはいいや。とりあえずゲームはこんな感じだな。人によっちゃこれに家買えるレベルの金つぎ込んでる人もいるぞ、主にガチャだけど。あ、ロイヤルストレートフラッシュな。」
その話を聞いてうっそだぁという顔をする二人。安心してほしい。そんな廃課金者、ごく一部だ。大体行ってもバイク程度が普通であるいやまぁ課金してる時点で普通とは一体と言ったところなんだが。
「じゃぁ、他のはどんなものなんですの?アニメとか言うのはよく話に出てきますが・・・。!!フルハウスですわ!!」
「・・・ブタです。」
「アニメの説明となるとまずはテレビからだな。まぁ、テレビっていうのは、発信したかったり、需要のある映像をを撮ったり作ったりして、そこから離れたところでも大勢の人でも見られるようにしたものでな。アニメはそれを絵を動かしてるようにしたもんだ。ちょいと待ってろ。」
そういうと響は持っているトランプを一旦テーブルの上に置いてノートを取り出し、そのページの端に何か描き始めた。それは一ページだけでなく全てのページに及び、要するにパラパラマンガを描いていたのである。
それが終わると二人の方に向け、ページを送り出す。
「まぁ、原理としてはこんな感じだな、ちょとづつ違った絵を高速で見せることで動いてるように見せんだよ。」
「「ほぇー」」
ノートの端に描かれた棒人間がカバディする様を見て、簡単の声を漏らす二人。いや、別にパラパラマンガ自体はいいのだが、なぜカバディしてる様子なんだ。走ったり、せめて野球してる様子とかでも良かっただろうに。
「もちろんこれよりも数十倍はクオリティは高いし本編は20分ぐらいあるけどな。それでいろんな物語を動かして、声優って言う吹き替えやキャラの声を代行する人が声を当てたり効果音や音楽入れたりしたのが一般的なアニメだな。今だと3Dアニメとかもあるけど説明するのが面倒すぎるからパスな。あ、ロイヤルストレートフラッシュ。」
机に置いたトランプをひっくり返しながらそう言う響。ついでに動画チャンネルの説明をして、次のゲームに移る。
「と言っても、金があれば外出ぐらいはするがな。映画見に言ったり買い物しに言ったり時たま近場の観光地に旅行に行ったりとか。あ、映画は馬鹿でかいテレビみたいなもんな。ほれ、次のカード引くぞ。」
「なんというか、そっちは娯楽が沢山あるんですのね。退屈しなさそうで面白そうですわ、!!ストレートフラッシュ!!」
「それだけ娯楽が多いってことはその分平和といいますか、危険は少ないんですね。確か、魔物の類もいないと言っていましたし。あ、私もストレートフラッシュです。」
「!?」
リコリスが、え、まじで!?そんなことあるん!?みたいな顔をしている。みたいな顔をしているだけなので別に彼女がいきなり関西弁で話し出したというわけではない。
「まぁ、本当に平和な世界なんてありゃしないんだろうけどな。あったとしてもそんな世界怖くて行きたきゃねぇが。というわけで俺はロイヤルストレートフラッシュだから今回も俺の勝ちだな。」
「いや、おかしいでしょう!?ありえませんわ!!4回連続でロイヤルストレートフラッシュって確実にイカサマしてますわよねぇ!?そうじゃなきゃあなた今にでも心臓止まってもおかしくないほどの運使い果たしましたわよ!?」
さっきからずっとスルーしてきたのだがここでリコリスから怒涛のツッコミが入った。なにせ四連続のロイヤルストレートフラッシュだ。とんでもなく馬鹿げた確率で、パーセントで表すと5.0625e−16、分数なら約1秭8千垓分の1とかいう、もはやなんだそれと言った数だ。天文学的にもほどがある。
「お前なぁ、詐欺師から教わらなかったのか?イカサマというのは見破られなければその時点で真実となるって。」
「詐欺師に何かを教えてもらうことなんんてまずありませんわ!!」
「しっかし、かけもなにもねぇのにイカサマしてもなんも面白くねぇな。」
「じゃぁするんじゃありませんわ!!」
と、普段通りにうるさく騒いでいるときだった。急に騒がしかった周りの声が消えて、リコリスの叫び声がギルド内に響き渡る。
で、よくあるちょっと大声で喋った途端周りが静かになって目立ってしまうあの現象に見舞われたリコリスは、恥ずかしそうに顔を赤くししゅんと小さくなってしまった。
だが、ギルドの冒険者たちはまるで気にした様子もなくある一点を見つめている。
流石の響たちも気になり、その方を向くと、ひとりの少女が入ってくるところだった。
その少女はとても美しく、その軽くウェーブした透き通るようなブロンドの髪は肩のあたりで切りそろえられており、瞳は青く美しい。胸は慎ましいながらも、少しあどけなさの残る顔立ちをしている彼女にとってはちょうど良いと言ったところか。しかしなんと言っても注目すべきはそのミニスカートから伸びる脚。やや低めの身長や幼い顔立ちに会わず、それは長く美しい曲線美を描いている。太ももの肉付きも、膝の形も、ふくらはぎの膨らみ方も、全てが理想的で、もはや至高の御御足とでもいうべきか、神々しさを覚えるほどに、美しかった。
美少女と言って差し支えないその容姿に加え至高の美脚を持つ存在。きっと誰もほっとくはずがないと思われたのだがしかし、むしろなんと皆その少女を避けているではないか。
それだけではなく、ひそひそと陰口をつくような、そんな感じで皆なにかを言い合っている。
それでいてその少女も少女で様子がおかしく、なにやら暗い顔をしつつも怯えながらカウンターへと歩いていく。
「(なんだ?このクッソ嫌な空気は?あの女に対してのものだろうが、何かしでかしたのか?とはいえあの女も怯えているようだし・・・わからん。)」
その少女はカウンターへ来たところで受付のお姉さんに声をかけようとするもなぜかやめ、また声をかけようとしてやめというのを繰り返している。
流石に受付のお姉さんも困ったらしく、遠慮がちに、まるで腫れ物を触るかのような声色と態度でどうかしましたか?」と尋ねる。
するとさっきまで繰り返し声をかけようとしていた少女はピタリと止まり、下をうつむいたままだんまりを決めてたちすくんでしまう。
「(なんだ?喋れないのか?あの女。)」
そんな風に考えて観察しているとなにかを諦めたかのように一層顔を下げて踵を返すと小走りにギルドを出て言ってしまった。
後に残ったのは妙に嫌な雰囲気。
「(まぁ、いっか別に。どうせあの感じじゃここにくることはないだろうからもう会わないだろうし。)」
そうして、小一時間ほど待った後に来たビヨンからの新情報は特になにもなかったのである。結局今日やったことといえばポーカーだけと言う、結局怠惰の極みに変わりなかったのだ。なんだこの無駄な時間。




