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関係性は変わりやすいもの



 一行はギルド内の小部屋を借りてそこに身を移していた。そこへ移動してからと言うものの、妙に空気が重い。


 というのも、普段からぞんざいに扱っているのにこうゆう場面で過保護が発動し、ビヨン相手に相当のプレッシャーを放っている響と、普段ぞんざいな扱いしかされていないのに、今回異様に保護されて戸惑っているというか、照れくさいというか、ちょっと嬉しいというか、でもだったら普段からもっとまともな扱いしてくれだとか、色々と感情が混じり合っているリコリス。響ほどではないにしろ、ビヨンに対して相応の緊張感を醸し出しているパイフェン。ことの発端であるビヨンという気まずさMAXの4人であるからして。



 「言っておくけど・・・・・・」


 さて、この重い雰囲気の中の沈黙を最初に破ったのは、以外なことにこの空気を作り出してしまった張本人たるビヨンであった。


 「私は別にリコリスのお嬢ちゃんをどうこうするつもりも、わざわざ誰かに言いふらすなんてこともしやしないわよ。」


 「・・・というと?」


 「そもそも私は確認しただけでそれだけでおしまいにするつもりだったのよ。たしかに不用意に聞いたのは私の落ち度だったけれど、わざわざ抱えたトラウマが知られてないところで言いふらすだなんて悪趣味なマネ、私がするはずじゃないじゃない。」


 そう、半ば呆れたように弁明?を語る情報屋。肩をすくめてそういう様子を見て、響とパイフェンのプレッシャーが少し緩まる。

 

 ビヨンの言ったように、実はここ、帝国では異眼の魔女の名前は知られていないらしく、彼?の口からその単語が出た時、近くにいたライオットたちはなんのことだろうと首をかしげる程度だった。これが王国のギルドではそうもいかないだろう。全員とまでは行かないまでも、ある程度力のある冒険者なら一度くらい名前を聞いたことがあってもおかしくはない。


 ちなみに、パイフェンの名前はビヨンでも聞いたことがないらしい。というか、妲己やそれに関する情報は、あの村の中でも虚ろになっていたので、もはや世間の中では良くておとぎ話がせいぜいと言ったところになっているのだろう。もしかしたら、そっちの方は知っているのかもしれないが。


 「一応はその言葉を信じよう。だとして、お前はこいつに対してなんか思わないのか?なんかこう・・・。」


 「あら、そんなわけないじゃない。」


 とりあえずは納得したような響が出した問いに、心外だと言わんばかりにビヨンがそう答える。


 「いくら曰く付きで異眼の魔女だなんて呼ばれたとしても、私と変わらないひとりの乙女じゃない。怖がる理由なんてありゃしないわ。」


 かっこよすぎませんかねこのオカマさん。言ってることがイケメンのそれでしかない。ただ、お前とリコリスを乙女というくくりにしないで欲しい。あんたは乙女じゃなくて男女(おとめ)だろうが。


 「それに、異能二つ持ち程度に遅れを取るほど、堕落はしてないつもりだしね。」


 不敵な笑みを浮かべて、自信満々に男女(おとめ)はそう宣言した。


 「(へぇ、こりゃまた随分と自信ありげじゃねぇか。・・・丁度いいや、アナザー解析頼む。)」


 「(承認・・・・・・完了。解析結果表記します。)」


 ビヨンカカ・ルーナダウナー

男 27歳

 Lv,48

 能力なし

 HP1011/1011

 MP662/662

 攻撃 464

 防御 377

 魔攻 404

 魔防 363

 俊敏 400

 《スキル》

 炎魔法Lv,7、水魔法Lv,6土魔法Lv,6、風魔法Lv,6、光魔法Lv,6、闇魔法lv6、回復魔法Lv,5、強化魔法Lv,3、隠行Lv7、暗殺術Lv9、近接格闘術Lv8

 《称号》

 情報屋ビヨン、性別を超越したもの、姉御、女子力モンスター、圧倒的強者、

 《装備》

私服


 「(あ、うん。こりゃ納得だわな。)」


 とりあえず、このオカマの規格外さがよくわかった。

 いや、規格外さで言ったら響たちの方が圧倒的だし、強さ的な意味でも上なのだが、考えても見て欲しい。

 このステータス、明らかにこちらに召喚された2-Bのクラスメイトたちよりも強いのだ。それに響たちだってヤク漬けのドーピングであげたもの。もとを見ればリコリスやパイフェンは圧倒的に負けている。


 どうやら、オカマツエェェェェは健在らしい。ツエェェェェというよりヤベェェェェと言った方が正しいかもしれないが。


 「(つっよ。めっちゃつっよ。バケモンだろこの人。しかも装備品なんてないようなもんだし!スキル見た感じ武器を使わなくても基本的に問題なさそうだし、その方が油断を誘ったり俊敏に動けるから職業柄良さそうだけど、暗器の一つも持ってねぇのかよ。某暗器使いの先輩も一番は素手って言ってたけどさぁ!?)」


 ポーカーフェイスを貫いて何事もなかったかのようにしているが、心の中では十二分にうるさかった。ただまぁ、気持ちは分かる。


 「(ま、まぁ、とりあえず俺らに危害を加えるつもりはないみたいだしいいか。それよりも、この圧倒強さは是非とも仲間にしたい。仲間とまでは行かなくても、味方程度でもいい。しかも情報屋ていうのがでかい。たしかに、アナザーに聞けばほとんどのことは分かけどそれは知識だ。情報ってのはどうしても生身の人間が聞いたり見たりして、喋って書いて行かなきゃ掴めない。生きてんだ。それを上手く扱えればそれは強力な武器になる。となると、もう少し深めて行った方がいいかもしれねぇな。ならある程度は話して信頼を取った方がいいかも知れん。最悪、こっちには提供できる情報はいくつかあるしな。)・・・悪かった。こっちの早とちりというかなんというか、そんなんで迷惑かけちまった。」


 「いいのよ。私も配慮がなかったわ。あなたたちがああいう対応するのは間違ってないし、非で言えば私の方が大きいわ。」


 「そう行ってくれると助かる。それで、リコリスのことも知っているみたいだし、その情報屋としての腕を買って頼みたいこともある。」

 

 「あら、何かしら?」


  気軽に聞いているようにも聞こえるが、目が本気だ。響の口調から、話の重要性を察しているのだろう。


 「あぁ、その前に、一つ情報提供がてら話しておきたいことがある・・・。」



                   ♢



 響が伝えたのは、自分がこの世界の人間ではなく召喚された者だということ。

 それで情報として一番そうでもいい王国の姫の裏の顔を売っておいた。秘密にする必要性も重要度もないし自分たちに被害が及ぶわけでもない、切っても痛くない手札である。

 で、どうやらあの姫さま、黒い噂がまことしやかに囁かれていないこともないようで、ビヨンも妙に納得していた。



 「まぁ、というわけで俺は残念ながら日出国の出身ではねぇんだわ。つーかあれだな、話に出てきたからかなんなのか、ちょっときになるわ日出国。ここと同じく自由国なんだろ?」

 

 「まぁそうね。ただ、ここと違って向こうは多宗教国家というか、特定の宗教を国が決めてないの。でも信仰自体は強いみたいで、それぞれ色々な神さまに願ってるらしいわよ。八百万の神っていうらしいわね。この都市の近くにも神社って言う向こうの教会みたいなものがあるから、行って見たらどうかしら?」

 

 「面白そうだけどいいや。神社ある時点でなんとなくは掴めたわ。とりあえず、本題に入るか。」


 どうやら相当日本と似たり寄ったりな国らしい。響は、いつか行ってみるかなぁと心の隅に留めておきつつやっと話を進める。


 「そういえばそうですわ。結局今の今まで何をしにきたのか何も聞かされていないんですが。」


 「確かに、探し人がいるとは聞いていましたがその後の要件までは聞いていませんでした。」


 と、ほぼ何も知らされていない状態の二人がそう首を傾げながら響の方を向く。

 その当の本人はと言うとまさか「そうだったか?」なんてほざいて二人と同じように首をかしげる始末。いや、3人揃って首をかしげるとか、あの状況からどうしてこうなったというんだ。


 「まぁいいやどうせ今から説明するし。といっても要件増えたんだけどね、つい今しがた。とりあえず最初にそっちの方から説明しようと思う。」


 「あら?もう一つ追加ね。いいわよ、いってちょうだい。」


 「昔話の傾国の悪女の話、あんたは知ってるか?」


 響が口にしたのは、この間空前の死闘を繰り広げた妲己の伝承についてだった。

 傾国の悪女、その言葉が出た瞬間、子孫たるパイフェンの体がぴくっと反応してしまう。それを目ざとく拾い上げたビヨンではあったものの、持ち合わせの情報からではその関連性を見出すことが出来ず、一旦放置することにしたようだ。いやはや、恐ろしいほどの観察眼である。


 「えぇ、一応知識としては持っているわ。でも、そんな御伽噺がいったいどうしたっていうの?」


 「あの話の美女はさ、明確な名前ってのが出てこなかっただろう?それでしかも誰もその名前を知っているやつもいない。そりゃあ探せば一人か二人くらいはいるかもしんねぇけどそんな例外は置いといてだ。あんたにはそれと似たように、名前がなくなっている御伽噺ないし昔話ってのを探してもらいたいんだ。多ければ多いほどいい。報酬は話一持ってくるごとでどうだ。」


 響の言うとおり、あの話には妲己という名前は出てこず、その名前を知る者は直結の子孫であるパイフェンのみだった。

 そこで響が以前巡らせていた考察が出てくる。

 響はそこについて、自身の存在を天界に悟られないようにするためと結論づけ、本人の口から明確な答えは出ていないが、流れ的におそらく当たっていた。


 そして、話の中にはもう一つ不明な点が残っており、それが妲己が戦った天の使いに関するところだ。

 アナザーでは規制というかロックがかかっており検索が出来ず、本人に聞こうにも、それをする余裕などあるはずがないほどギリギリで、結局何一つとしてわかっていなかた。


 そこで考えたのだ。天の使いが出てくる話自体はきっとそこまで少なくはないだろう。だが、きっとそれは浅いものばかりでそれを集めたところで大した情報にはならない。

 なら、ほかの方面から攻めるのだ。もしかしたら、妲己のように倒されて、英気を養うために自ら名前を消しているような奴がまだいるかもしれない。もしかすると、響が考察していた中にあったように、天界ないしは神から名前を消された奴がいるかもしれない。

 そういった話であるならば、あるいは重要な情報があり得るかもしれないし、例えば妲己のように未だ存在する者もいて、話を聞き出せるかもしれない。

 何より、直接天界や神のことを調べるよりかは目立たなくて済む。


 なかなか回りくどい方法ではあるが、それでも安全と確実性、そして一つの情報量などを合わせて考えるなら、なかなかの案ではないだろうか?


 「・・・なかなか興味深いことを調べるわね。なんでそんなことが知りたいのか、理由を聞いてもいいかしら?」


 「そいつはむつかしい相談だな。残念ながらそいつを話すにはもう少し信用が欲しいところだな。あ、勘違いしないでくれよ?別にあんたを信用しきってないだとかそういうことじゃないぞ?ただこれに関してはトップシークレット以上なもんでな。」


 「それはつまり、ことと次第によっては教えてくれるってことかしら?」


 「ま、そういうことになるな。現状ではまだ難しいってことだ。」



 「いいわ。その理由ってのも気になるし、ぶっちゃけほかの仕事と並行してできるてのものだから国もならないでしょうし、その仕事引き受けさせて貰うわ。」


 「お、そうか。じゃぁ、契約成立だな。」


 そういって再度握手を交わす両者。

 いい感じなのでここいらで締めでもいいとは思うのだが、まだもうひとつ要件は残っている。


 「それで、だ。本来の目的の方、これについてのことなんだが・・・」


 そういって携帯用の鞄の中からとあるものを取り出す。


 「あ、それは!そういえばそんなのありましたわね。すっかり存在を忘れていましたわ。」


 取り出されたそれを見て、リコリスが思い出したように声を上げた。


 机の上に取り出されたそれは、かつて響がとある山賊どもから巻き上げたネックレスである。


 「あら?どうしたのこれ?」


 「あぁ、ちょいととある山賊を潰した時の戦利品でな。十中八九盗品関係だと思うんだが、見た感じ割と装飾とかから見ても重要そうなもんみたいだし、こいつの持ち主を探して欲しいんだが・・・。」


 「まさか、返して差し上げますの?」


 「んなわけねぇだろ。高額で買い取らせるかたっぷりと謝礼金もらいに行くんだよ。常識考えろや。」


 「うっわ。こんな非道徳的かつ一個人範囲の常識、初めて見ましたわ。」


 やっぱりこの男の方が数十倍は山賊やらなんやらにふさわしいと思う。もうそれはぴったりなほどに。鬼畜すぎる男の名は伊達じゃない。


 「その理由に関してはあえて何も聞かなかったことにするわ。それで、このネックレスはコーン一族のものね。ほら、この部分にリスの装飾が施してあるでしょう?これはコーン家の家紋なのよ。」



 確かに金枠の部分に、リスを模った装飾が施されているのがわかる。どうやらいともたやすく見つかったようだ。これから行われるえげつない行為を考えると、いっそ見つからない方が良かっただろうに。哀れなり家。

 

 「コーン家の屋敷ならこの首都リイドから馬車で2日くらいの場所にあるわ。どうする?馬車のチャーターぐらいならしといてあげるけれど。」


 「まじでか、そりゃあ助かるわ。それじゃぁ、一つ目の方も含めてよろしくたのむぜ。何かわかったり連絡することがあったら、この宿に泊まってるからよろしく頼むわ。」


 そういって、料金と一緒にメモの紙を机の上に置く響。


 「えぇ、了解したわ。それじゃぁ安心して任せて起きなさい。期待を裏切るようなことにはならないと誓うわ。」


 そういってビヨンがお金と紙を手にしたところで、今回の話し合いは幕を閉じたのである。

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