自然災害よりもタチが悪い。
「おい、まじかよ。まさかこんなテンプレ的展開に出会うとかちょっと今俺乾燥してるぞ。あ、ちげぇ感動だ。」
その感動ゆえか何なんのか、謎のいい間違えをする響。
というか、この状況で感動するなんぞ、周りの人たちには理解できようはずもなく、響の方をギョッとした目で見ていた。ちなみに件のチャラ男さんもだ。
まぁ、我々からしたらわからなくもないが、そんなテンプレなんて知るよしもないこの世界の人々からしたらなんのこっちゃという話である。
「な、何を言ってますの?」
「いや、気にすんなこっちの話だ。とりま、あんたは二人をナンパしに来たってことでFA?」
「え、エフ?」
「あぁ、ファイナルアンサーの略だよファイナルアンサー。」
「そ、そうか。うんまぁ、そうなんだけど・・・」
と、なぜか弱気になって答えるチャラ男。この男、ちょっと気づき始めてしまったのだ、もしかして変な相手に声かけちゃった?と。
「普通こういう時って私たちを守ったりなんなりするもんじゃないんですの?それがどうして感動なんかしているのか疑問でなりませんわ。」
「きっとお前らにはこの気持ちはわからんよ。」
そりゃそうだ。
「しっかしあれだなお前さん。なかなか物好きじゃないのさ。」
「へ?」
響の言葉に素っ頓狂な声を上げるチャラ男さん。何故だろうか?とても嫌な予感がする。
「スタイル良くて家事万能。気配りもできてそこそこ頭も回る。のくせ気取ることもない完璧美少女のパイフェンはわかる。けど、よくこの地雷厨二メンヘラ女なんかにも・・・・・・。」
その瞬間、響の姿が一瞬にして消えた。否、みれば数メートル先の椅子が山積みになっていたところにそれらしきものが見える。そして、響がいたところにはリコリスが片足を上げて前に出している。いわゆるヤクザキックの構え。
つまるところリコリスが響を思いっきり蹴飛ばしたのだ。
「・・・おい、クソアマ。テメェ事実言われたからって蹴り飛ばすとか随分とステキな思考回路してんじゃねぇか。あ゛?」
椅子の山から出てきた響が、鬼の如き形相で戻ってくる。心なしかいつもより口が悪くなっている気がしないでもない。
もちろんその怒りの矛先自分を蹴り飛ばしたリコリスであり、そしておのリコリスも相当切れていた。理由はまぁ、言わなくてもわかるだろう。
「そんなわけないでしょう?あなたが事実無根のふざけたこと抜かすからでしょうが。それに前伊言いましたわよね中二病はあなたほ方だって。まさかそんなことも忘れてひとさまのことをとやかく言うだなんて一体何本頭の中の神経が切れてたら抱けるのかぜひ教えてほしいですわね。」
こっちもこっちで相当に口が悪い。というかこれ、二人ともマジギレしているように見える。いな、完全にブチギレている。今までのやり取りがまるで赤子の遊びに見てくるほどに、二人とも完全にキレている。
立ち込める怒気というかさっきというかプレッシャーがものすごいことになっており、ギルド内のほとんどの人間がそれにおびえている。それと同時にみなこう思った、てめぇチャラ男、何てことしてくれたんだと。
いやまぁでも普通ナンパしてこんなことになるだなんて誰も思いはしいないだろう。だからチャラ男のことは許してほしい。そもそも響があおらなければこうはならなかったし、リコリスも蹴り飛ばすまでしなければよかったのだから。
「オーケー、上等だ。今こもでケリをつけてやる。きっとこのギルドのあたり一帯更地になるだろうがこの際関係ねぇ。本気でぶっ潰してやる。」
「上等ですわ。墓に供える物はクサヤで十分ですわよね。」
悲報、帝国ギルド首都リイド第三地区支部、クッソどうでもいい理由で消滅のお知らせ。痴話げんかで滅ぼされるとかたまったものじゃない。
やるならせめて人のいないところでやってほしい。最悪ギルドどころかリイド全体が焦土と化す可能性だって十分にあり得るのだ。はた迷惑だなんて話じゃない。
「術式23~25、重ねて三つ展開。」
「(しょ、承認)」
まさかの身体強化まで使う始末。命令されたアナザーさんもめちゃくちゃ戸惑っている。
「バカの一つ覚えみたいにまたそれですの。そもそも強化魔法はあなただけのものじゃないってことを教えて差し上げますわ。」
そう言って左目の眼帯をとろうとするリコリス。
うんあれだ、こいつらただの筋金入りの馬鹿だ。もうどうしようがないほどに思考回路が常人のそれと逸脱している。それはもう盛大に。
「いい加減にしてください!!」
一色即発のその瞬間、そんな声がギルド内に響き渡った。さて、その声の主であるが想像の通りパイフェンである。というか、この状況でそんなことが言える兵彼女しかいない。
「お二人ともいい加減にしてください!!今回はやりすぎです!確かに頭に来るのはわかりますが、少しは周りのことも気にしてください!!ここは町中の、しかもおおきなギルドの中なのですよ!?そんなところで私たちみたいなステータスのものが争ったらどうなるかわかるでしょう!?喧嘩するんのはいいです。でも、やるならだれも人がいない辺境の地でやってください!!」
うん、ド正論だ。どうせならこの馬鹿どもにもっと言ってやってほしい。この二人をしかれるような存在など、おそらくパイフェンぐらいしかいないだろうから。
で、そんな言葉に少しは頭を覚ましたのか、二人が放っていた厚賀徐々に弱まっていく。
「・・・悪かったよ、少し頭に血が上りすぎてた。これからは気御付ける。」
「・・・・・・私もですわ。」
なんだろう、明日には空からサンゴヘビでも降ってくるんじゃないだろうか。この二人が素直に謝るだなんて、それほどまでに珍しい。やっと学習したと思うとうれしい限りだ。
「今回はパイフェンに免じて不問にしといてやるよ。」
「それはこっちのセリフですわ。」
前言撤回、やっぱりこいつら馬鹿だったわ。さっきと何もかわってない。
だがまぁ、一応事態が収まったのは事実。
気を取り直して、響はいまだ震えている冒険者たちの中を進み、受付のカウンターへとたどり着いた。チャラ男?そんなものは当の昔に逃げ出している。
カウンターにつくや否や、非人前で使うようのカバンから昨日のヒュドラの素材を取り出して置き、受付のお姉さんに声をかける。
「ちぃと、これを買い取ってほしいんだけどいいっすか?」
一応、初対面だし、年上ではあるだろうということで敬語なのだが、響が敬語というのはなかなか慣れない。
「か、買取ですか!?しょ、少々お待ちを。」
かわいそうに、受付のお姉さんはおいつめられた小動物のようにおびえながら素材をもって裏へと駆け込んでいった。一度盛大に置けたのだが、うんみなかったことにしてあげよう。
「なんであんなにおびえてんだあの人?」
お前のせいだよお前の。
それから数分してお金の入った袋と伝票をもってお姉さんが返ってきた。どうやら、買取に冒険者登録はいらないようだ。
昨日あっけなくやられたヒュドラさんの一部は金貨60枚となり、まずまずといった結果といっていいだろう。もちろん、素材自体はまだまだたくさんあるので、そのうちまたどこかで売りさばけばまたいい金が手に入る。
「それで、換金しましたが、もう一つの目的の探し人というのは誰なんですか?」
取り合えずはひと段落したところで、今だ詳細のわかっていなかった事柄について、パイフェンが響に尋ねる。そういえばそんなことも話していたが、いかんせんそれまでに無駄なことが多すぎて、忘れかけていたところだった。さすがに当の本人は覚えているらしく、ついにその答えが明かされる。
「あぁ、探し人つっても、別に特定の個人を探しているわけじゃなくてだな。こう、情報屋というか、その手の情報網が広いやつを探していて・・・・・・」
「あら、それなら私がいいんじゃない?」
そんな高いような低いような声が聞こえる。
声の王を見ると、ひとりの人物が。細身ながらもしかりと筋肉のついた引き締まったからだ。八頭身の高身長にぴしっとした姿勢、モデルのような歩き方。その顔にはしっかりと化粧が施され、香水のいい匂いがしてくる。そんな男。
「きっと、私にならあなたの望みをかなえられるわよ>」
ウィンクしながら体は男心は乙女なそれがそう口にした。




