朝っぱらからお騒がせします。
場面と時間が移り変わって翌日の9時頃。場所はとある宿屋の一室。
あの後エセ占い師のモーラを気が済むまでいじり倒した後(いじめともいう。というかいじめの方が正しい。)色々なんやかんやあって案内された宿屋に到着した。
そのまま二部屋借り夕食。その後またもやひと悶着あってから就寝して、一時間ほど前に起床。騒がしく朝食をとってから今に至るというわけだ。どこにでもあるごくありふれた日常での一幕なので、別段語ることもないだろう。
さて、ここは響が寝ていた部屋なのだが、今日一日の予定を話会うために、リコリスとパイフェンも部屋の中で座っていた。
「と、言うわけでだ。これから第一回今日は何しようか考えよう会議を始めたいと思います。わーい、どんどんぱふぱふー!」
「・・・・・・」
「えっと・・・・・・」
どうも響と二人の間には大きなテンションの差があるらしい。リコリスは冷え切ったジト目であきれたように無言で響を見ているし、パイフェンはどうしていいかわからず戸惑いながらも恐る恐る拍手をし始めている。もちろん頭の上にはクエスチョンマークがついたままだ。
「なんだよお前ら。人がせっかく盛り上げてんだからのって来いよ。ノリがわるいなぁ。」
「いや、そんなわけのわからないおかしなテンションについていけるのはノリがいいんじゃなくてただ阿呆なだけですわ。」
「お前この言葉を知らないのか?『テンションおかしければその日もおかし』って。」
「いや、結局おかしいんじゃないんですの!」
「この場合は風情があるって意味のおかしだぞ。古文で習わなかったのか?」
「知りませんわよ、そんなの!大体古文って何なんですの!?」
「おまっ、一般常識知らなさすぎるだろ。まぁ、簡単に言うと昔の言葉やら字やら分やらのことだな。大体は平安時代のものがおお・・・・・・」
「あなたの世界の過去なんて知ってるわけないに決まっているでしょう!!!ここは、私たちの、世界なんですの!!!」
声を荒げてそう叫ぶリコリス。確かに彼女の主張ももっともなのだが、しかし忘れていけないのはここが宿屋の一室だということ。つまりほかの客もいるということであり、リコリスたち二人が使用している隣の部屋はともかく、目の前、左隣りそして廊下全体に叫び声が響いているのである。要は近所迷惑。
「ほら、そう騒ぐな。近所迷惑になるだろうが。」
「誰のせいだと思ってますの!!」
「おーけーわかった。もう俺のせいでも何でもいいから声を抑えてくれ。話は進まないしマジで近所迷惑ってか騒音公害だから。何なら謝るから静まれ。」
珍しく響がサクッと折れたことにより、なんとか怒りを抑えておとなしくリコリス。一体全体どういった風の吹き回しでこんなにも簡単に折れたのかは知れないがそのおかげで、いつもの半分以下の時間で話が進みそうだ。
そのことに、いつも二人のやり取りについていけなくて若干影が薄いような気がしないでもないパイフェンは安堵のため息を吐いている。この三人の中で一番まともなのは彼女なのに、一番苦労しているのも彼女。まぁ、よくある貧乏くじの一つだ。
「今日は予定があるからこんなところで油売ってる暇はねぇんだよ。」
「予定・・・・・・ですか?」
「そう、予定だよ予定。取り合えずこの町に来たらやっておきたいことがあってだな、まぁそのための下準備というわけ。」
「?一体何をしでかす気ですの?」
「しでかすって何だおい。・・・・・・話が進まないからまぁいい。取り合えず、一番やりたいことってのが家を買うことなんだよ。」
「家、ですか?」
パイフェンの問いに、うなづき言葉を続ける。
「そう、家。取り合えずちゃんとした住居が欲しいんだよ。こう、毎日毎日宿屋に泊ってたら宿代がバカにならないだろう?それにかえって気が休める場所があるっていうのは精神的にも肉体的にもありがたいしな。」
確かに、これからどれだけこの世界にいるかはわからないが少なくともひと月や二月ということはあるまい。そうなると、響の言う通り宿代はかなりの値段になるであろうし、毎日宿というのもしっかり休めないだろう。
となると、家を買ってしまった方が、アドが高く取れそうではある。とは言え、もちろんそれなりにまとまった金が必要ではあるので、そうそう簡単にはいかないだろうが。
「なるほど、つまりはそのための資金集めというわけですね。」
「しょゆこと。とりあえず手始めに昨日手に入れたヒュドラの素材を買い取てもらいにギルドにいこうと思ってな。ちょっと探し人もいるし。」
「探し人、ですの?」
「そ、探し人。ま、そこは行ってからのお楽しみってことでいいだろ。俺もとしても早くハナコを自由にしてやれる所が欲しいしな。」
そういって日脚ぶりに登場したペットのイシマジロ戯れ始めるのであった。
ちなみに、そのおかげで約二時間ほど出発が伸びたりもしたのだが、今回は割愛という形をとらせていただこうと思う。
♢
というわけで、なんだかんだ道中でも色々とあったのだが、何とか目的地に着くことができた。
つまりここはギルド帝国首都リイド第三区域支部である。本部自体はこの首都にあるのだが、城の中にあり、ギルド本部はこちらの世界で言うところの省みたいなもので、実際に冒険者たちが出入りできるのは支部だけなのである。
ちなみに、本部が城の中にあることから気づいた人もいるかもしれないが、ギルドというものは国家が運営しているものであり、国ごとに存在しているのである。
なので、ほかの国で冒険者として働こうとするならばいちいち手続きが必要という、なんともめんどくさいシステムをしているのである。
「あれ、響たちじゃないか?」
何やら、参院を呼ぶ男の声が聞こえ、それの方を見ると、そこには昨日危ないところを(一応成り行きで)助けたライオットたちがいたのだった。
「どうしたんだい?何かギルドにようなの?それとも私たちを訪ねてきたとか?
「ちげーよ、なんでそんな自意識過剰なんですかねあんた。正解は前者の方だ。」
マイナのふざけたような問いに、突っ込みつつもちゃんと言葉を返す響。関わりを持ったせいか、他の人と比べると気に入っているのか受け答えのノリが違う。
「あぁ、もしかして昨日のあのでっかいやつの換金かなにかか?」
「ん、正解だ。まぁ他にも用事はあるんだけどな。」
その答えに成る程と頷いた後、切り上げるようにルーカスが声を上げる。
「まぁ、立ち話もなんだし、とりあえず中に入ろうぜ。」
「そうですわね。出入り口でたむろしてると他の人の迷惑になりますものね。」
「普段大声で騒いで周りに迷惑かけてるくせに自分のことは高い棚に上げてよくそんなこと言えるな。心底感心するよ。」
「だ、か、ら、貴方のせいでしょうが!!何度言ったら気が済みますの!?」
「おいおい、挙句の果てには責任転嫁かよ。いやもうその都合の良さには天晴れとしか言いようがないぜ。」
「今、ここであなたをぶっ殺しますわ!!」
さて、いつもの如く言い争いになるかと思ったが何と、今回は遂にリコリスがぷっつんしたらしく遂に手が出た。
高らかに殺害宣言をし、勢いよく響に対して飛びかかったリコリス出会ったが、しかしその標的によって2秒で取り押さえられてしまう。
「お前バカかよ。いくらステが高くたって魔法職のお前が前衛の俺に肉弾戦で勝てるわけないでしょーが。そもそもステ自体俺の方が高いんだし。」
「うがぁぁああああ!!」
呆れたようにもっともなことを呟く響に抑えられて、怒り心頭のリコリスがなんだかよくわからない声を上げる。御多分にもれず辺りに響き渡る音量であるからして、周囲の人が異様なものを見るような目で見ていた。
「あ、あの響さん、すごい注目されてるのですが・・・」
「ん、あぁこりゃいかん。すいませんね皆さん。うちのじゃじゃ馬が騒がしくて。よくよく言い聞かせますんでお気になさらず!」
パイフェンの忠告により、今現在の自身の状況確認んした響は、周りの人に聞こえるように声量をあげ、申し訳なさそうに弁明の言葉をあげた。
あたかも頭のおかしな仲間にいつも苦労してますとでも言うように。
もちろん、そんな風な感じでものを言えばリコリスがまた騒ぎ出したのだが、これ以上はほんとに話が進まなくなるので飛ばすことにする。
さて、リコリスの沈静化にまた少なくない時間をかけて、やっとこさギルドの門を潜る。
中はまぁ、みんなが想像するとおりのもので、特に変わったこともなく、多くの冒険者で賑わっていた。
「うん、普通だな。」
この男はギルドに何を求めているのだろうか?むしろ普通でいいと思うのだが。
さて、ギルドの中に入ってきた新しい顔に、中にいた冒険者たちの目線が集まる。それは、新顔にもの珍しさを感じたのもあるだろうが、きっと3人のうち二人が目を見張るような美少女だったと言うこともあるだろう。
そんな冒険者の中から、一人何やらチャラそうな男が響たちの元へとやってきた。
「(お、お?これはもしやあれっすか?)」
何だかよくわからないが、おそらくあれであろうと察し、妙に期待を膨らませる響。
きっとみなさんも何が起こるか想像がつくだろう。
そして、チャラ男が響たちの目の前に来て一言。
「お嬢さんたち、よかったら俺のパーティーに入らないか?」
というわけで異世界名物、ギルドのナンパ野郎の登場だ。




