一言で言うなら説明回です。
門を潜り抜け、首都リイドへと足を踏み込れた響たちの目に入ってきたのは、活気に溢れた街並だった。
その道の両端で営まれている数多く多彩な出店や商店の数々には人が出入りしている。
待ちゆく人は十人十色様々で、老若男女、身なりの貧富問わずその大通りを行きかっていく光景はある種の異質と捉えることもできよう。
街並み外見は王国と同じく中世ヨーロッパのそれと酷似していたが、建物や屋台などといったものがひしめき、ぴっちりと配置されているせいもあってか、幾分か文明が進んだようにも感じられる。
中央にある白と思しき建造物を中心として階段状に高台となっており、何弾も重ねたウエディングケーキのような作りとなっていた。
「随分と栄えていますのね。驚きですわ。」
「そうですね・・・・・・住人達の全員から強い生気がみなぎっているのが感じられます。」
女子二人が、その光景に感嘆の声をこぼす。確かに、この光景を初めて目にすればそういった感想が出てきても不思議ではないだろう。逆に、ここの住人であるライオットたちは何事もないような顔をしているし、門番として幾人もの訪問者を見てきた門前兵士Aは「ここに始めてきたやつは大体皆そんな顔をするんだぜ。」といったような顔をしている。というか顔に書いてある。
「確かに栄えてはいるな。まぁ、大通りの一部分だけ見てそんなこと言ってもどうしようもないとは思うがな・・・」
なにやらここに空気を読まない男がいたようだ。どう考えても響である。
いや、まぁ彼の言う通り比較的栄えているというか、おそらくもっとも盛んなところを見て栄えているというのは、言ってしまえばあさはかな考えではあるのだろうけれど、それでもこの場面でそんな正論をもちだすのは野暮というかやはり空気を読んでいないという表現が正しいだろう。KY。
「随分と冷めてんなぁあんた。なら聞いて驚け。俺たちが今見ているこの最外層は首都リイド中でも一番の貧相地域なんだぜ。まぁ、さすがにここは外門から通ずる大通りだからにぎわってはいるが、内側の階層はもっとにぎやかになっているし、大通りを外れりゃ静かになるし人も減るが住居がほとんどを占めるから当たり前だ。」
要はケーキの最下層が一段ずつ上がっていくごとに住民は豊かになっていくようだ。だからといって下の階層の人間が上の階層に行けないなんてことはないし。扱う品物やら構える店やらに合わせて住みやすい地区に住民が家を建てただけで、差別どうのこうのではないらしい。
「!?そりゃぁマジか。つーこったぁあれか?スラムとかそんな感じの貧困街だったり、犯罪者とかそんなのがたむろするごみ貯め的なそんななにかもないってのか?」
「・・・・・・随分と酷い言い方だな、あんた。まぁ、一応そういうもんはねぇな。国の方から最低限の衣食住は供給されるから生活できないってこともないし、そのおかげでよほど治安が悪いっていうところはないんだよ。」
「生活を国が保証してんのか!?実力主義はどこ行ったんだよ!?」
さて、響の驚きも理解できるし、その疑問に対してもおおむね他社が持つそれと何ら変わりはないだろう。
何せ、響のいた元の世界でも、衣食住すべてを国家が補てくれるようなところなど聞いたことはない。(食のみであれば毎月一定数配給されるところがある。)
さらには帝国のポリシーたる実力主義。そんな方針をとっているというのに、弱者たる貧困層を囲うというその行為はまさしく矛盾を表しているといっていいだろう。
「代々の皇帝様のお考えでな。いくら実力があったとて、そのいる環境がひどければその差異を開花させることなく埋もれていってしまうから最低限の生活を保障することによっていかんなく能力を発揮できるようにしてくださってるのさ。」
「なるほどねぇ。一応いいたいことはわかったけど、それを実現するのってなかなか難しいんじゃねぇか?主に金銭面で?税とか恐ろしく重いものになりそうなもんだが・・・・・・。」
「それに関しちゃぁ問題ないさ。ここはほかの国と違って教会に金を使ってないからな。その分をそういった福祉関連に費やせるんだ。それでもお釣りが出てくるくらいだよ。」
「いや、何。つーかあれなのか。他のお国はそんな大金を教会に寄付とかしてんのかいな。無駄使いもはなはだしいなおい。」
「そんなことこの帝国以外では口が裂けても言うんじゃないぞ。王国とかなら禁固刑ですむかもしれんが教国でそんなこと言ったら最悪極刑まであり得るんだからな。」
「え、なにそれ物騒すぎやしないですかねちょっと。」
門前兵士Aの言葉を言いて少しばかりか顔を引きつらせる響。
この口の悪い男のことであろうから、教国とやらに住まおうものなら一週間もたたずに国家を敵に回すことはまず間違いないだろう。というか、一週間もつかすら不安である。
「まぁ、あそこは根っからの宗教国家だからしょうがないさ。ほかの所だって教の教えは最重要視されるからなぁ。」
「あら?ならどうしての国は宗教を軽視していますの?」
「一言でいえば神の教えじゃ腹は満たされないかだな。別に俺らだって神様たちは存在しているとはおもうし、その教えっていうものが間違っているとも思ってはいないさ。でもな、それだけじゃ食っていけないし、何より楽しくなんかないだろう?尊さだけじゃあ生きてけないし、それだけだなんて生きてる意味がなくなっちまうってな。ここはそんな考えしてるやつらの集まり場なのさ。」
そう言って人ごみの中に目線を打つ数門前兵士A。その集まりの一人一人が一日一日を楽しんで生きている。その表情が、王国のそれと比べて圧倒的に明るく楽しげなものとなっている。
やはりそれは、自由度が高いことの影響が大きいだろう。自由というよりは、思想によっては弾圧されるという圧迫感のなさといった正しいであろうが、簡単に表すならやはり、自由という言葉を用いるのが一番いいだろう。
もちろん、それにだって色々とデメリットというか悪い部分もあるし、逆に宗教によって統一が取れることによるメリットももちろんあるので、一概には何とも言えない。一長一短、そんな言葉を用いるのがいいだろうか。
「なるほどねぇ。つまりは俺らみたいな自由人にはうってつけというか楽なところってわけか。」
「自分んで自由人とかいうんですのね。というか私たちまでそのくくりに入れないでくださいまし。」
「少なくとも真面目ではねぇしほんとに自分で言うのもなんだが結構俺自由に動いてると思うぞ。」
「自覚はあったんですのね。驚きですわ。」
「言っとくけど俺について行動してるてめぇものお仲間だかんな?少なくとも自覚なしのどっかの誰かさんよりかは数倍はましだろうよ。」
「・・・・・・食事前に少し運動するのも健康的でいいかもしれませんわね。」
「お、つきあってやろうか?まぁ、とても残念なことにお昼は固形物食えなくなるだろうけどな。そしたら健康もクソもなくなんぞ?」
ま―た始まった。
もう何かのノルマでもあるんかというくらい自然な流れで言い争いになる。
さすがにこう何度もこの二人の言い合いに時間を割くのも面倒くさいしはっきり言って何度も何度もくどいことこの上ないので、もう、無視していくことにしよう。
「それで、三人はこれからどうするんだ?俺たちはこの後とクエスト報告のためにギルドに向かうが・・・・・・。」
「あぁ、そうだな。取り合えずまずは今日の寝床を探さなきゃいけねぇから宿屋探しだな。・・・・・・なんかデジャブな気がするのは気のせいか?」
そんなやり取りの後、ライオットんたちにお勧めの宿屋とその場所を教えてもらい、そのままわかれることになった。
宿屋に行く道すがら、適当な食事処で空腹を満たして、わりかし上機嫌で人々の行き交う参道を歩んでいく。
「もし、そこの御三方。」
そんなどこにでもありそうな時間、それをやぶって入ってきたのはそんな言葉。
その音は高く透き通っており、声の主が女性であろうことは一瞬で把握できた。
見ればそこにいたのは黒いフードを被った女。歳のほどは二十歳すぎといったところか。
首には派手なネックレスを幾重にもかけ、その指には重そうな指輪。体のあちこちに宝石と思しきものをあしらっており、その用意されたテーブルの上には怪しげな煙を出す壺や香、数珠や水晶玉などが置かれており、見た目からするとまさしく占い師といったところだ。
「せっかくこの帝国に来たんだ、景気づけにこれからのこと、占ってかないかい?」
うん、普通に占い師だった。なんのひねりもなく。
(((うわぁ、こんなべたな占い師いるのかよ・・・)んですの・・・)んですか・・・)
当の響たちも、その見た目通りの問いに驚きを隠せないようだった。




