喧嘩するほど仲がいい?
「しっかしやっとこさ到着か。思ったよりも時間かかったなぁおい。ここに来るって決めてからどれだけ経ったよ?」
「確かに随分と時間がかかりましたわ。もうそろそろ二週間ぐらい?ですわね。」
「そういえば響さんたちは王国からいらしたんですよね?」
ふと響がこぼした言葉にリコリスが反応する。
一行が進むのは首都に通じる街道。
そこを、響たち三人と、先ほどヒュドラの脅威から救ったライオットのパーティーの計七人で歩いていた。
さすがにあの巨体を引きずっていくことはできないが、ヒュドラの素材というのは貴重であろうことから捨て置くのはもったいないということでうまく四人の目を盗んで倉庫の中へと放り込んでおいた。無論後で売りさばいて金にするつもりだ。
さて、そんな二人の会話に対して質問をぶつけてきたのは魔法使いのフィーレだった。
「あぁ、そうだぞ。・・・・・・そういやあれだな。」
「?なんですの?」
「いやな、よくよく考えたらお前とあってからそんだけしかたってないんだなぁと思って。」
「確かにそうですわね・・・・・・。もっとたっているものだと思っていましたわ。」
そうなのである。この二人、普段のやり取りから、すでに何年も腐れ縁の続いている悪友のようにしか見えないのだが、実のところたった二週間程度の付き合いなのだ。パイフェンとはほんの数日の差であるし、何ならハナコの方が倍以上一緒にいるのだ。
だというのにここまでなじむということは、よほど二人の相性というものがよかったのだろう。ある意味運命の出会いかもしれない。
「仲が良かったから長年の付き合いかと思ったんだが、割と最近になってからの関係なんだなあんたたち。」
「別に過ごした時間イコール仲の良さじゃないだろ。ほら、ルーカスにだっているだろ?あってすぐに意気投合するやつ。二人もきっとそういう関係なんだよ。」
「なるほど、それもそうだな。」
どうやらライオットはなかなか柔軟な感性をしているらしく、逆にルーカスは脳筋とまではいかないまでも、割と見た目通りの性格をしている。
「まぁ、気が合うってわけじゃあないんだが・・・・・・」
「そうですわね。大体こんな人と気が合うような人間なんているわけありませんわ。もしいたとすればきっとそれは人型のナメクジか何かですわねきっと。」
「マジで喧嘩売んのもたいがいにしろよお前。何ならそのナメクジと仲良く友達ごっこでもさせてやろうか?あ゛?」
「ほんとその口の悪さのいは心底あきれますわね。さぞ、ろくな育ち方をしなかったのが目に見えますわ。」
「よし、そこに直れクソアマ。体中にセメント流し込んでみるも素敵な銅像立ててやる。」
「それ銅像じゃないじゃないですか(笑)」
「マジでシバくぞ地雷女ぁ!!」
「・・・・・・なんでこの人たちすぐに言い争いになるんだろ。」
またも始まった響とリコリスの言い争い。ついさっき同じようなやり取りをしたばかりりだというのに懲りないというか学習しないというか。そんな二人を見てもあきれている様子だった。
「こうしてみると不思議ですね。まるで仲がいいようには見えないです。」
「いえ、なんだかんだ言いあってはいても、二人ともちゃんと仲がいいですよ。」
の言葉に否定の意を示したのはこの中で一番長い間二人のやり取りを見てきたパイフェンだった。
「そ、そうですか?とてもそういう風には見えないんですが・・・・・・」
「確かにこう見るとそうですね。でも、もし本当に仲が悪かったのならここまで一緒に来てなんかいませんし、何より、一通り事が済めばまるで何事もなかったかのように日常に戻ります。それが何よりの証拠ですね。」
言い争っている二人を微笑んだ表情で見守り、そう説明する。
確かに、この二人は何かあるとみるに堪えない醜い争いを始めるが、いつの間にかその争いもやめてまたいつものようにたわいのない話を続けている。
仲が悪いというわけではない。悪態の付き合いも二人とってはコミュニケーションツールの一つであり、また、信頼や友好の証でもあるのだろう。
どうもこれにはパイフェンでは溶け込めそうもない。というかこの先もこれに混ざりこめるような相手というのは現れないであろう。多分。
さて、そんなこんなでさらに半時ほどの時間を費やし、本当にようやく目的地の門前へとたどり着いたのであった。
その前には多くの人だかりができており、それは恐らく身体検査を受けるためのものだという予測がついた。
さすがに城もある首都であることからか、その警備は国境間所のそれとは違い懇切丁寧なものになっているようだ。もっとも、あの間所が座右過ぎただけかもしれないが。
閑話休題
やっとたどり着いた目的地、その間の旅が長く濃いものになたこともあり、響たち三人のてんしょんもあがっている。
それだけでなく、先ほど危うく死んでしまうような体験をしたライオットたちも、緊張の糸をほどいてほっと一息をついているようだ。
要は全員気を抜いているということである。
あぁ、だからといってめちゃくちゃ強い頭のおかしな奴があらわれて誰か殺されるとか、ずっと隙を狙っていた何物かがしめたと言わんばかりに襲ってくるとか、誰かしらの隠し事がばれて大惨事になるとか、そんなよくある展開にはならないのだが・・・・・・。
ならなぜわざわざそんなことを掘り下げたのかって?へへへ、そいつぁなんとなくってやつですかいな、旦那方。
「おや、ライオットさんたちじゃぁないか。今回の任務はもう終わったのかい?」
そう言って近づいてきたのは、門番をしているであろう兵士の一人だった。名前はわからないので、便宜上ここは門前兵士Aとでもしておこう。
「あぁ、クエスト自体は問題なく終わったよ。ただまぁ、 そのあとが問題でしたけど・・・・・・。」
「?何かあったのかい?」
「まぁね・・・・・目標を倒して帰ろうってした時にいきなり強いモンスターがあら荒れてね。危ないところをこの三人に助けてもらったんだ。王国からの旅人らしいよ。」
そう言って響たちの方へと手をやって門前兵士A に鍾愛をするライオット。それを受けて双方は軽い挨拶を交わした。
「そうか、君たちが・・・・・・。いやなに、部外者ながら俺からも礼を言わせてくれ。」
そう言って頭を下げようとする門前兵士A。その様子を見て慌ててライオットが止めに入る。
「やめてくれよ。あんたが頭を下げる必要はないじゃないか。」
「そうだぞ、ライオットの言う通りだ。俺らとこいつらの問題であってあんたが頭を下げるようなことじゃぁない。それに俺も気まぐれと戦利品から出る利益のためにやったんだからそもそもそこまで感謝なんぞしなくていいんだ。まぁ、それでもこいつらの無事に頭を下げるってんなら有難くもらっておくからさっさと頭を上げな。あんま下げ続けてると腰痛めんぞ。」
「あ、あぁ。送させておらうよ。・・・・・・。ゴホン、では改めて。ようこそエヴェン帝国首都・リイドへ。君たちの訪問を俺たち帝国人は快く歓迎しよう!!」




