誓いを胸に抱いて
万事休す。
まさしく今の状況にふさわしい言葉だろう。
渾身の一撃はむなしくも防がれ、響は潰された。残っているリコリスもすでに先ほどの一撃にすべての魔力を使い切っており、反撃に出ることは不可能。そもそも、以前の傷もいまだに残っている状態、体を動かすこともままならない。
唯一この場で無傷なのは敵味方含めて遠くで観戦していたパイフェンだけだが、無論戦力の一つにもなるはずがなく。
「余計な傷を受けて随分と消耗したが何、そこな女を食らえばお釣りもこよう。むしろこのまま器に入って現世に舞い戻れるやもしれん。少々器の方が育ってないようにも思えるが体を慣らすために早めに入るとしよう。」
食うという言葉に、リコリスが身構え、先程まで、その先頭の激しさに唖然としていたパイフェンの表情も、恐怖と絶望へと移り変わった。
「しまいだ人の子よ。あの男も倒れ貴様にもなに一つの力も残っていないだろう?あのしぶとい男のことだろうから死んではおらんかもしれんが、すでに虫の息。先の一撃で魔力も使いきったと見える。もう妾に向かう術は何もあるまいよ。」
あまりにも早い敗北。
神を倒すと言っておきながら結局はこの程度。複数人係ではあれどその配下に膝をついた相手にすら勝てなかった。
きっと人としては間違いなく最強であっただろう。魔王であろうが赤子の手をひねるがように倒せるだろう。
竜や幻獣、一国の軍隊などでは話にならないほどに強くなったはずだ。
けれど、挑む頂はあまりに高すぎた。その存在はあまりに大きすぎた。
一個人が同行できる相手じゃなかったのかもしれない。きっと勝つことは不可能だったのだろう。
あぁ、とリコリスは死を覚悟する。
無駄な思いだったのだろう。世界を否定したこと自体が間違いだったのだろう。そもそも髪を殺す云々だってただの八つ当たりでしかない。不幸を気取った子供のわがまま。
ふと、思い出すものがある。
それは始まり。響と初めて出会って、契約を交わしたあの時。
あの時、自分が感じた感情は何だったか。怒り、憎しみ、恨み。
一人で勝手に粋って勝手に恨んだそんな感情。けれど、それを背負ったのは自分ひとりじゃない。
いつもふざけた調子で、自分を疲れさせるあの少年。
誓ったのは一人じゃない。二人で神を倒そうと誓ったのだ。肩や、か会えるため、肩や怒りのため。
だから、この思いは私一のものじゃない。彼の願いも他紙の思いも、二人のもの。
それを思い出すと同時に、途端にばかばかしくなってくるリコリス。
あぁ、八つ当たりがなんだというのだ、わがままで何が悪い。
こちとらさんざんな人生を歩んできたのだ、八つ当たりの一つでもしないと気が済まない。
なら、せっかくだ一番上にぶつけたらどれだけ爽快なことか。せっかくやるならb盛大にやろう。そもそも神がこんな世界を作りださなきゃよかったのだ。どうせはたから見たら狂信者しかいないような宗派の神だ、消した方が世のためだろう。
つまりはとても簡単な話。むかつくから殺してやると。
だというのならこんなところで絶望している暇なんてない。
瞳に灯がともる。
「・・・・・・なんだその目は。まるであきらめていないようだが?」
「フッ、あたりまえですわ。こんな序盤も序盤で死亡エンドだなんて私たちは認めませんもの。」
余裕が現れてきた顔で妲己にの言葉を鼻で笑い飛ばす。
「口では何とでも言えるが体は動くまい。ましてやおぬしは魔法使いタイプであろう?魔力がなければ何もできまい。」
確かに魔力をなくしたリコリスには妲己に有効な攻撃手段なんてない。常人には驚異的であろう肉弾戦も、魔法職の彼女のものであれば妲己にはききめが薄いだろう。
だが、それがどうした。
効き目が薄い?大したダメージは出ない?そんなもの、そんなもの矮小だろうがなんであろうがダメージが通ればそれで問題ない。
ゆっくりと立ち上がるリコリス。体の痛み?傷?気合で耐えればどうにでもなる。
立ち上がるリコリスをみて、眉間にしわを寄せながらいかぶかしむ妲己。すでに満身創痍の体で何をするかと牛木に思っているようだ。
別に何もおかしな話ではない。なにせ相手は攻撃手段をうしなった死に駆けの女。いくら窮鼠猫をかむといっても牙が折れればかむことすらできない。
だから、この状況で攻撃できるリコリスがおかしいのだ。
「ハァァ!!!」
反応することが、彼女にはできなかった。
油断をしていた、というよりもありえない攻撃に反応できなかった。
まず先ほどよりも動きが速くなっていた。
傷を負っているはずなのに、死にかけのはずなのに、だ。
一瞬んで肉薄した彼女は驚くべきことに自分の足で思いっきり妲己の腹部を蹴り上げる。
飛ばされた妲己であったがその中で体制を立て直し、蹴られた腹に手を当てる。ダメージは大したことはない。
なんともない。なんともないはずなのに、どうしてこうも胸が騒ぐ。
感じた子世もない焦りが妲己に訪れる。
相対する女はすでに死にたい。吹けば折れそうなほどあのに、どうして攻撃を入れられる?どうしてそんなう自身に満ちた顔をしている!?
「何を驚いた顔をしていますの?そんなダメージ、貴女なら何の支障にもならないでしょう?」
座った目であっ気に殺意を向けるリコリスの手にはいつの間にか回収していた出刃包丁が握られていた。人形がないなら自分が振るうまでと切っ先を相手へと向ける。
「・・・・・・でかい口を叩くなよ小娘。手負い一人に何ができると・・・・・・」
「一人じゃ、ねぇよ・・・・・・」
聞こえた声は男のもの。
おかしい。今この場所にいる男はたった一人。しかもその一人もつい先ほど完全につぶしたはずだ。男の声謎聞こえていいはずがない。
そんな妲己の自問自答を待たずして、続く言葉があたり響く。
「相方に無理させて自分だけくたばれるわけがねぇだろ。」
恐る恐る響がたたきつけられた方に目をやる妲己。衝突とともに巻き上がった砂埃はすでに晴れ、仰向けに倒れている響の体が見えた。
その口が、三日月形にゆがむ。
それだけではない。左腕が動き出し地面を押して、ゆっくりとその半身が起き上がる。右足が曲がり、足の裏が地面に接する。右手には長柄の刀が握られており、それを軸にゆっくり、少しずつ立ち上がっていく。
(し、信じられん!!なぜあの状況で立ち上がる!?いや、そもそもなぜ意識がある!?そして何より、なぜ今だ多々会おうとする!?)
妲己の感情が驚愕一色に染まってゆく。
二人とも、ボロボロで、今にも倒れる寸前。隙だらけで簡単に払えそうだというのに、それがデッキなかった。訪れた驚きがそんなことを考える暇すら奪ったのだ。
響が、その手に持った刀を握りしめて構える。
頭蓋骨にはひびが入り、肋骨は全て折れて肺に刺さっているものまである。大量の血が体中から流れ餌出て、ろくに呼吸もできないせいも相まって、目が霞、意識がもうろうとする。いくつかの健は立たれて、激痛でうまく力が入らない。五臓六腑は潰され抜き出され、何一つとして無事な部分はなく大半が原型を留めていなかった。
きっと今の自分は何よりも弱い。この体ではきっとまともに動けないだろうし、刀を扱うこともままならない。一撃に込める力も魔力もとうに使い果たし、何も残っていない。
それでも、それでも
生き残るために、その刀を振るわなきゃならない。
まさに一瞬。築いた時にはすでにその刀は振るわれた後。切り後から血しぶきの隙間から、鬼のような形相の響がのぞめる。
妲己の驚愕はさらに大きなものへと変わっていく。どうしてこいつらはそんな体でそんな速度が出せる!まるで不死身の怪物ではないか!と。
驚くのもつかの間、今度は肩に何かが食い込む感触がする。何とか骨でとどまり断ち切られずには澄んだが、刺さっているのは包丁の刃。リコリスが力の限りに振り下ろしたそれが肉を割いたのだ。
骨によって止まっているというのにそのまま無理やり骨ごと断つ気でさらに力を籠めるリコリス。
ハッと我に返り、刺さっている刃を抜くためつかもうと手を伸ばすーーーーが、
「まず、一本!!」
下から払われた刀にて、左腕が断ちきられ、宙に飛ぶ。
傷雨口から大量の鮮血が溢れ、鉄のにおいを漂わせる。
その光景に自身の目を疑う妲己であったが、襲う痛みに現実と理解し、急いで二人から距離をとる。
看破入れずに第二撃が飛んでくるかに思われたが、二人とも、肩で息をしながらたたずんでいる。どうやらともにあまり余裕はないようだ。
「なぜ、なぜだ!!なぜそんな体でここまでできる!!なぜ死に体の癖に先ほどまでよりも強い!?」
吐き出すように問いかける妲己の言葉に、二人顔を合わせて向き直したのちに口をつく言葉は一言一句たがわぬ同じ一言。
「「気力」」
相手よりもよまいのなら、大きな差があるのであれば、万全でないのだとしたら、それなら背l馬手、気力だけは何物にも勝るように。
足りないさい差、早さも火力も体力も何もかも気力で補えば。
死にたくないなら死ぬ気で芯化を燃やすのみ。
少女には果たすべき願いがある。それがかなうまでは消して立ち止まることはできない。
少年には昔誓ったものがあるい。天寿を全うするまでは死なないと。死ぬまで楽しく生きてやると。
それぞれ胸に秘め死思いは違えど信念は同じ。何が何でも死んでやるもんかと。
それが二人を動かす。体も体力も優に限界を超えたとしても、気力と思いだけで動かす。
すでに二人はパイフェンの事情など頭になかった。このままではいずれ彼女は器としてその身体を使われる。そんなことはもはやどうでもいい。
このまま妲己が復活すればこの世界が危ない。はなっからそんなことは頭の中にはない。
では。、彼女のためでも世界のためでもないなら何のために県を握るか。そんなものは決まっている。自分自身のために他ならない。
妲己を倒して、生き抜くため。そして、証明するのだ。見てみろ、不倶戴天を下したぞっと、俺らの牙はお前たちに届くんだと天に向かって強く吠えるために。
いつかたどり着くその時まで首を洗って待っていろとたたきつけるために!!
「そんなもので立っているというのか貴様らは!!そんな感情一つで刀を振るうというのか!!」
「そんなもんだろうが何だろうが、現に俺らはこうして立って、動いてるんだ。自分の見聞きした門を否定するんじゃねぇぞ。そうなったらお前は傾国の悪女でも世界の敵でもなんでもねぇ。ただのイカれたバカ狐だよ。」
睨む瞳は爛爛と輝き、放つ口調は静かに、しかして強く。
今必要なのは理屈や根拠だなんてつまらないものでも何でもない。戦えるか否か。勝つか負けるかの四つ。単純明白シンプルなもののみ。
そして、二人の仲に戦え内藤選択肢はない。まして負けるなどという考えはない。
ただ勝つために瞳より強くその魂をもやうのみ。その熱量すべて鵜をぶつけるのみ。
「っ・・・・・・!!減らず愚痴をっ!!」
一瞬その気迫にひるむものの、その手の中のに黒槍を呼び出し、二人へと突撃していく。
突き出される穂。横から振るわれそれを受ける刀。飛び散る火花。三者の顔が迫りあう。
響の左手が刀の柄から離れ握りこぶしを作り繰り出される。妲己はそれを新しく出現させた二本の黒槍に防がせるものの、次なる一撃----リコリスの蹴りの再来でいったん体を後ろに引かせ、距離をとりつつ、躱す。
だが、即座にその距離を詰めてさらなる猛攻を浴びせる響とリコリス。妲己は新たに黒槍を幾本呼び出すものの、余裕がない。
片腕を失ったというのも大きいが、伊尼子の状況への焦りや困惑といったものが相まって、判断を鈍らせ動きを鈍らせている。
(な、なぜだ!先程までは何ということなく対処できていたはずだ!!だというのにどうしてこんなにも苦戦する!?)
その現状にまた焦り委は大きくなり、さらに動きを鈍らせる妲己。まさに府のスパイラル、坩堝にはまるとはこういった状況か。
無論、彼女の動きが鈍くなれば、瘴気と二人の攻撃も激しくなる一方で、だんだんと優劣が目に見えてくる。
次第に防戦一方へと追い込まれる妲己。二人係で立ち回り、資格を作りそこから攻めていく響とリコリス。まるでさっきと立場は正反対。誰がこの光景を予想できたことか、一寸先は闇とはよく言ったものである。
とはいえ黒槍の防御壁は流石と言わざるを終えず、郵政でありながら、響たちも攻めきれずにいた。
しかし裏を返せばそれはこの黒槍達をどうにかすれば勝つことができるということ。
となればやることは一つ、黒槍の排除ないしは機能停止。さらにこちらとしては二人いるということで黒槍の処理ととどめ薬とで分担することができる。
さて、そうすると配役だが、先ほどのように火力が足りなくて殺しきれないというのはあまりにも悲惨である。であれば本職の響がとどめを刺すことが吉。
特段何か会話をしたわけではないのに二人とも同じ思考へとたどり着き、目を一瞬合わせるだけでそれぞれの役をこなそうと動き始める。
一方攻め立てられている妲己もどうにかこの状況を打開するために策を練っていた。
この劣勢を優勢をつかむこと。ならどうやってその優勢を作り上げるか。人が最も油断をするときは勝利を確信したとき。その時こそが最大のチャンスと踏んだ彼女は危険ではあるが、あえて自身に隙を作り、誘い込むことにした。あくまでギリギリの状況で、相手に悟られぬように。
不意にわずかにだが緩む黒槍の防御壁。
無論二人がそれに気づかないはずはなく、ましてそれを見逃すなんてことはない。
このチャンスをものにすべく、最後の気力を振り絞ってさらに加速するリコリス。黒槍の盾の中心部分に手に持った出刃包丁をたたきつける。
その接触とともに火花が飛び散り、鈍い金属音を上げる。当然その衝撃波すさまじく、包丁を握るリコリスの腕にもジンジンと痛いくらいに伝わってきた。
その衝撃で一気に崩れかかる防御壁であったが澄んでの所で届かない。本来魔法職のリコリスではあと言って足りない。
だから、その一手を加えるだけ。
「『悲しき子』!!!」
その叫び後追えとともに黒槍の壁に突き刺さる裁ち鋏。それを持つのは一体の人形。
雀の涙にも満たないような残り粕のような魔力と、そこから自然回復した微力な魔力。複雑な動きはさせられないし、動かせるのはほんの数秒。
だが、たった一撃くらわすのであれば単純な直線でいい。ほんの一瞬でいい。
その一手によってその壁の形成を崩していく黒槍。妲己を守っていたものはなくなった。
さぁ、自分の役目は果たした。だから、必ず決めて来いと塚するそれを横目に見ながらリコリスは落ちていく。
長かった戦いにもついに終わりが訪れる。この一撃で決めれば勝ち。決めきれなければ負け。先ほどと同じ状況だがただ違うのは両者ともに満身創痍。もう、まさかはありえない。
その事実から刀をつかむ右手に力を籠める。
さぁ、その身を切り裂いて勝利をつかみ取ろうと後ろに回した刀を上へろ振り抜こうとする響の目に飛び込んでくるのはその時を待っていたといった表情で最後の黒槍を突き出そうとする妲己の姿。
「妾の勝ちだ小僧!!」
声高らかに吠え、その手の槍を突き出す妲己。
完璧なタイミングでの不意打ち。これを防ぐ術など万人になく、ただ絶望の淵散っていくのみである。
不意、であれば。
高速で突き出される黒槍。
だが、それは彼の左手によってつかまれる。
あぁ、最初からこの男は読んでいたのだ。このタイミングで攻撃が来ることを。
だから勝利の油断なんてしなかった。なぜなら先ほどそれで死にかけているからだ。
もし、戦い始めでこの状況だったのなら、その槍は響の体を貫いただろう。もし先ほど渾身の一撃を耐えられて返り討ちにあっていなかったら、きっと勝っていたのは彼女の方だっただろう。
けれど、人間は学習する。
一度痛い目を見たことを警戒しないはずもなく、その学習は見事に実をなした。
そして、線上に手もしもなどない。あるのは今そこにある結果のみ。もしだなんてそんなものはないが故に結果は一つ。
「バーカ、俺らの勝ちだ・・・・・・!!」
響の構えが変わる振り上げるその構えから刃を上に向けた突きの構えへと。柄を握る拳は力強く。刀に込める力は全身全霊。上げる咆哮はさながら獣が如し。
「くたばり、やがれ!!!!」
掴んだ黒槍を力の限り引き、相手の体を持ってくる。
そしてその力を利用して放たれた渾身の一撃が、妲己の心の蔵を突き穿つ。
「クソババァァァァァァァァ!!!!!!」
その咆哮とともに、逆手から持ち換えられ、天に向かって振り切られる天ノ尾羽張。
その刃は心臓を、首を、その美しき顔を、頭を切り裂いて、血しぶきを盛大に上げさせる。
心臓に脳、二つの最重要機関を立たれれば、たとえ何物であろうと生きてはおられず、それは彼女も例外ではなく。
ゆっくりと、その身体が光となっていき、それに合わせて三人を囲っていた結界もはれていく。
本来すでに肉体を持たない妲己であるのだから、死体が出来上がるはずもなく、きれいに光の残滓となって消えていった。
戦いの果て、その勝利をもぎ取ったのは響とリコリスの二人。
踏み入ったのは、不倶戴天の境地。
♢
「響さん!!リコリスさん!!」
緊張の糸が切れ、地面へと落ちてそのまま仰向けになっている二人に駆け寄ってきたのは目を涙で腫らし曽於顔をゆがませているパイフェンだった。
(あ、やべ此奴のことすっかり忘れてたわ。わりぃ)
その姿を見て響がまず最初に思ったのはそれだった。あまりにもひどい扱いだと思おうが、まぁ、まず最初に済まないという感情が来る辺りまだ救われているのかもしれない。
「だ、大丈夫ですかっ!?」
「いや、これで大丈夫だと思うんだったらお前のその顔についてるのは二つの節穴だよ。どう見ても大丈夫じゃないでしょこれ。肋骨全部折れてるしいくつかは肺に刺さってる。内臓はぼろぼろのぐちゃぐちゃで相当な量なくなってるし、血も全くもって足りてない。おまけに頭がい骨にひびが入ってるんだからたまったもんじゃねぇ。俺の世界だったら信夫確定だよこれ、魔法なかったら助からないからね。というか、今こうやって意識持っててしゃべれるのが不思議でたまらねぇよ。奇跡とかそんなレベルじゃねぇっての。」
「いや、そこは嘘でも大丈夫っていうところでしょうに・・・・・・。というかなんでそんなに、しゃべれますの・・・・・・?」
駆け寄って心配そうに問いかけるお会いフェンに、死にたいの癖にやけに饒舌に愚痴をこぼす響に、息を上げながらそれに突っ込むリコリス。
激戦の後だというのに雨、そこにはなかなかカオスな空間が作り出されていた。誰のせいかはいうまでもないが。
取り合えず、魔力のある限り二人に回復魔法をかけるパイフェン。二人も、自然回復した分でちまちまとヒールしていく。
「まぁ、なんだ。取り合えず、妲己もいなくなってパイフェンも器?になることはないし、俺らも何とか生きてるし、いい結果なんじゃねぇの。」
「そうですわね・・・・・・。それにこれで私たちも通用することが分かったというのも大きいですわ。」
「そうだな・・・・・・。とはいえ死に物狂いで何とかって感じだが。」
二人で、静かに勝利の喜びを分かち合う。本来ならもっと派手に盛大に歓喜しているのだが、今の二人にはそんな余裕ない。多分そんなことをすれば死んでしまう。
だが、その勝利も胸の奥からこみあげてくる高揚もすべてまぎれもない現実のもの。そんなものを抱きながら、響はぽつりとつぶやくのだ。
「・・・・・・トイレ行きてぇ。」
最後まで閉まらない男であった。




