エピローグ・歩く人影は三つ
「で、結局一緒に来るってことでいいわけ?」
「はい、お二人には返しても返しきれないほどの恩がありますし、妲己もいなくなった今、この村に住み続ける意味もありませんので。」
妲己との死闘から一週間程経ち、場所は村の出口付近。
いつ死んでもおかしくないような重症を負っていた二人も、この一週間パイフェンの自宅で休養したお陰か今はほぼ完治したと言ってもいい程に回復していた。
「いやまぁ確かにアイツ倒したのは俺らだけど、途中から私怨めっちゃ入ってたしなぁ。そんなに感謝されても困ると言うかなんと言うか。」
少し困ったような顔をしながら答える響。
そんな彼の様子を見て、リコリスが少し驚いたように声を出した。
「珍しいですね。貴方がそんな素直な反応するだなんて。明日は海鼠でも降りそうですわ。」
「え、何それ怖い。つーかこっちにもいるのね海鼠。」
いつも通りの二人のやりとりに、クスクスと笑いをこぼす。
まるで先の戦いが嘘のような光景。まさか今ここで夫婦漫才をしている二人が不倶戴天の頂にたったなど、誰も思いはしないだろう。
「まぁ、来てくれるなら歓迎するぞ。となりの奴は料理すらまともにできない女子力皆無の残念なお方だからな。そう意味でも助かるわ。」
「喧嘩売ってますの?喧嘩売ってますの?」
「嫌だって本当のことじゃん。別に俺だってそこまで料理できるわけでもないし、いてくれないと困るでしょ。ポケ○ンでいうタケ○ポジのやつわ。」
半ギレで食ってかかって来るリコリスに対してどうどうとなだめながら説明する響。
それを聞いて「ポケ…なんなんですのそれ?」と首を捻るのは自然の事。
こっちの世界のネタが異世界の住人で有るリコリスに通じるはずもなく、ガッカリしたように響はため息をついた。
「まぁ、要は俺らだけだと生活面が悲惨なことになるから頼むってことだ。ちゅーわけで期待してるぞ。」
誰かこっちのネタ分かる奴いねぇかなぁと思いつつも気を取り直してパイフェンに向かって再度申し込む。
「はい。私はお二人のように強くはないのでお役に立てるとしたらそれくらいかと。」
笑いながらそう答える。
彼女自身もけっそて弱くはないのだが、比較対象があまりにも企画外すぎる。この二人に対して入ってすぐに戦力になるような奴はいないだろう。
「そこらへんは気にすんな。別に俺らも最初っからこんなバケモンじみたステータスしてねぇからな。まぁ三日とかそこらへん経てばステータス的には同レベルにはなるだろうよ、たぶん。」
「三日・・・・・・ですか?」
たった三日で、しかも何か修行をするような雰囲気でもないその言葉に、首をかしげて頭の上に疑問符うを浮かべるパイフェンだった。
「なんで三日なんですの?私の時は一日、しかもかなりの短時間で無理矢理でしたわよね?」
なぜ自分だけそんな目に合わなければいけないのかと憤慨し、響に対して食ってかかるリコリス。
それをどうどうとなだめながら響は説明をする。
「おちつけ。ぶっちゃけ今回俺らのステータス足りてなかっただろうが。そんな分けだから俺らもまたやるんだよあれを。三人分も作るとなるとそれだけ時間もかかるっての。」
「またあれをやりますの!?」
「あそこまでハードにしないし、ならねぇよさすがに。先に進むんだからそんなバンバン魔力使えないっての」
「それなら、先に彼女の分を上げてからやればいいんじゃないですの?別にそこまで私たちの方を急ぐ必要ないんじゃありません?」
「大ありだわバカチンが、もしまたすぐに妲己レベルの敵が出てきたらどうする。確実に積むぞ俺ら。妲己戦じゃぁなぜか経験値が1も入らなかったんだから、せめてステータスだけでも強化しておかなきゃいけないでしょうが。」
そう、実はあれほどの死闘だったというのに、終わってみれば全くもってこれっぽっちも経験値が入っていなかったのである。それを見て響が今までになく絶望したんはまた別の話。
「・・・・・・はぁ、もう何でもいいですわ。時間をかけてやるのでしたらまだましですもの。」
「決まりだな。まぁ反対されても無理やりに飲ませるつもりだったが。あぁ、じゃぁパイフェン取り合えずステータスを見せてくれ。何ができて、どういう戦闘スタイルなのか把握しておきたい。」
なにやら恐ろしいことをサラッとこぼし、取り合えずと彼女にそう頼む。
パイフェンはその頼みを快く承諾し、二人にその画面を見せた。
フー・パイフェン
女 18歳
Lv,31
能力《透化》
HP240/240
MP440/440
攻撃 65
防御 43
魔攻 55
魔防 40
俊敏 67
《スキル》
炎魔法Lv,2、水魔法Lv,2、風魔法Lv,3、闇魔法Lv,3、光魔法Lv,2、回復魔法Lv,3、強化魔法Lv,4、妖術Lv5
《称号》
妖狐、嫌われ者、家庭マスター、悪女の血
《装備》
一般服
「なるほどなるほど。お前さんも能力者か。」
「まぁ、先祖を考えればあまり不思議なことでもありませんわね。で、一定どういう能力なんですの?」
「ええっと・・・・・・、私の能力は一時的に体をすべてのものからの干渉を無にすることです。発動すると、その時間だけすべての攻撃などが透けていきますね。ただ、ほんの一瞬の間ですが。」
言われた通り、自分の能力『』について説明をするパイフェン。
能力としては防御特化の能力ではあるが、うまく使えば攻撃にも応用でき、かなり汎用性の高い能力だと言えよう。
「なるほどなぁ、こりゃまた随分と反則くさい能力なこった。しかし妖術ってのはスキル判定なんだな。てっきりそっちが能力だと思ったんだが・・・・・・。いや、そうなると居るかどうかわからんが他の妖怪変化の類も同じ異能になっちまうからこれでいいのか・・・・・・。」
なにやら疑問を浮かべて勝手に自分で納得する響。
そんな響を置いておいて、リコリスア話は話しを進めることにした。
「それで、基本的な戦術は一体どんな風になりますの?ステータス的にはかなりはばが広そうですが。」
「基本は体術で、そこに魔王を組み込んでいくのが基本形ですね。形としては響さんに近いと思います。ただ、私は武器の類は使わないので全く同じというわけではありませんが。」
中華系の類にもれず、彼女の得手は己の拳や脚を使った体術が得意なようだ。無論、そこに魔法や妖術が組み込まれていくので、格闘家というよりはそれこそ封神演義の仙人やその弟子たちのようなものといったほうが正しいだろう。
「なるへそ、期待にもれずって感じか。となると、鍛えるなら体術による体裁きやらなんやらだな。まぁ、その前にステータスを上げなきゃダメだけど。」
そう言って一旦話を区切って歩き出し、二人の前へと出る響。そのまま後ろに振り向いて二人を促した。
「ほれ、そろそろ行くぞ。別に急いではいないけど駄弁って時間潰す意味もないからな。」
「そうですわね、行きましょうか。」
「はい、そうですね。」
三人で、歩き出す道。次の目的地は隣の帝国だ。




