不倶戴天
辺境の陰に包まれた家からさらに森奥、一つだけ大きな石が置いてあるそこに件の少女、フー・パイフェンは立ちすくんでいた。
その石の付近は異質なもので、虫の一匹どころか草花の一本も生えておらず、鳥の鳴き声も聞こえない。瘴気とでもいうのだろうか?まるでなにか生物に対して危険な気が漂っているかのようだ。
おそらく情人であれば何分と持たないであろうが、長い間その場所に居続けているところを見ると、彼女が只者ではない実力者ということだろうか。もしくは何かこの瘴気に対して特別な耐性でもあるのかもしれない。
「やっぱり私はこうして生きていくしかないんですね。事情の知らないだけで、そんな二人に勝手に期待した私がばかでしたね。」
沈んだ声でそう零す。その顔は暗く目も少し赤く腫れているように思える。期待していた分その反動は大きかったらしい。勘違いであるのだからそもそも落ち込む必要はないのだが、行き違いというものは恐ろしいものだ。
とはいえあんな言い方」をした響が悪いのだが。
「何をばかなことを考えていたんでしょうか・・・・・・」
そう言いながら異質なその石に手を乗せる。
あるだけで草木を腐らせるほどの瘴気を発している石なのだ。じかに触れれば手が腐り落ちるだけでは済まないだろう。
だというのにパイフェンが触れていても何も損傷ないのを見ると、やはり彼女にはこの医師に対して特別な何かがあるのだろう。
「はぁ・・・・・・きっと私はこのままなんでしょうね。だとしたらこんな世界。何をしても嫌われるのならいっそ。」
「いやぁ、こんなところできぐうだなぁねぇちゃん。ところでなかなか興味深いこと言ってた気がするんだが詳しく教えてくんね?多分同業者だろうしさ。」
後ろから、声が聞こえる。聞き覚えのある声が。
ハッとして振り返るパイフェン。
そこにいたのは見慣れた二人。一人は黒のゴシックドレスに身を包んだ眼帯の少女。もう一人は黒髪の少年。
「な、なんで・・・・・・」
「なんでももくそもないっての。まぁとりあえずは誤解を解きにきたんだが・・・・・・。まぁ面白そうなことを言ってたもんでな。ちょっと詳しく。」
♢
「まぁ、とりあえず悪かったな。別にお前のことを嫌ったとか気持ち悪いとか思ってるわけじゃないから安心してくれ。」
「そうですわ。今更その程度であなたを嫌いになる訳ありませんわ。」
「お二人とも・・・・・・」
嬉しさに泣きそうになるも必死にこらえるパイフェン。頑張ってこれ得ているものの頬を伝って流れ落ちる雫。先ほどまでの絶望もあってかどうやらjかなり来るものがあったようだ。その顔は涙ながらも魅力知己なもので、それを見ていた二人も微笑んでいる。
「そ、そのすいませんでした。話もろくに聞かず一人で勘違いしてしまって。」
「気にしなくていいんですのよ。悪いのはろくに気も回さずに聞いてきた隣のアホですもの。」
「喧嘩売ってんだなそうなんだな?」
リコリスの慰めのこと場に切れる響であったが、残念ながらスルーされてしまう。
とはいえ誤解も解けてめでたしめでたし・・・・・・と行くはずだったのだが、問題はさっきのパイフェンのセリフだった。
あのセリフは二人にとっては聞き逃せないものである。
「それでさっきの発言についてと俺が聞きたかったことについてだが・・・・・・」
「さっきのは忘れてくださ気が動転していただけなので・・・・・・」
少し恥ずかしそうにそう答える。まぁ、この世界でそんなことをいってると普通の人には頭のおかしなかわいそうなお友達と思われてしまうだろう。
しかし、いま話しているのはは常人とは程遠い二人。
「いや、俺らからするとそう思ってくれた方がうれしいんですけどね。」
「え?」
響の言葉にきょとんとするパイフェン。
その様子にニヤッと笑う響。まるでその反応を待っていたとでもいうようだ。リコリスも「さて、ここからが本番ですわね。」とつぶやいている。
「取り合えず、世界に復讐したいなら手をかすぜ。まぁ、俺らの事情にも付き合ってもらうが。」
「そ、それはいったい・・・・・・?」
素直に疑問を投げかけるパイフェンに対して、「今から説明するけど、ここだけの話にしてくれよ?下手すりゃこんな序盤でフルボッコにされて、殺されかけないからな。」と冗談交じりにこたえている。
だが、いざこれまでのことを説明するのにふざけているのはダメだと思ったらしく、いつにもなくまじめな顔をして話始める響。
「・・・・・・最初は俺の正体?からか。いやまぁ正体とかいうほど大したもんじゃないけど。ほら、ナニモンだって話だ。」
~少年説明中~
十五分ほどかけて、自分がこの世界に来てから今までの出来事を説明する響。
それが終わると今度はリコリスがじ真の人生について語りはじめる。
とはいえあまりいい記憶ではないし、はっきり言って彼女の大きなトラウマだ。無理をしているのか手少し震えている。
それ見気づいた響。今まで市もとにいたハナコを抱き上げ、彼女に渡す。
ハナコを受け取ったリコリスはそれを抱きしめその温かさを感じる。すでに古江は収まっており、気も晴れたように話は再開した。どうやら響のハナコで精神を安定させる作戦はうまくいったようだ。
二人のちょっと長い話も終わりが近づき、最後のまとめとでもいうべきところに入る。勘違いしてほしくないのは二人、特にリコリスが自身の過去を語って道場を引いてるわけでも、傷のなめあいをしようとしてるわけではない。俺たちは過去を、秘密を教えたんだから、お前も教えろ。お前の願いに手を貸してやるかえらお前も俺たちに協力しろという、交渉というか脅迫の手札として切ったのだ。
「あぁ、別に同情の言葉も慰めの言葉もいりませんわ。そんなもの、何にもなりませんもの。」
「まぁ、他人の過去やら秘密やらにつらかったねだのなんだの言っても逆効果だからな。だから、俺らは人の過去やら出生にはなにも言わないしどうも思わない。それは俺らがどうこうする問題じゃないからな。自分のことは自分で解決しろ。」
間を開けて、続きを口にする。
「・・・・・・ただ、もしそこで利害が一致するなら、進む道が同じなら、目指すものが一緒なら手を組もう。似た者同士だ。裏切ることは、きっとしない。」
「どう、して、あなたたちは・・・・・・・」
震えたか細い声が、パイフェンの口からこぼれる。なぜ、周りにばれる危険をおかしてまで 、自分に話しをしたのか、どうして自分にそこまでして、自分を選んでくれたのか。そんな考えから出た言葉だった。
「気に食わなかったんだよ。」
「え?」
「気に食わなかったんだ。あの村の奴らが。悪意を持のはいい。誰を嫌いになろうが憎もうがいい。だって人間だ。皆仲良くしましょそうしましょ見たいな気色悪いことあってたまるか。でもなぁ、存在そのものを否定するんじゃねぇ。少なくとも、そこにいたあかしを、意味を、否定することも奪うことも絶対にさせない。・・・・・・悪いな、長々と話して。とどのつまり、俺の自己満足と気まぐれ。ついでにたまたまだよたまたま。まぁ、単に俺ら二人があんたを気に入ったてのもあるが。」
途中までかなり強く感情的に語っていた響だったが、最後のほうになると熱も冷めたのか茶化すように占めてしまった。
その様子から、なにかむかしあったのだろうかと疑問を浮かばせるリコリスだったが、別段自分の望みとも関係なさそうだし、言いにくいことを無理やりききだすのもああれなのでいつか自分から打ち明けてくれるまで待とうと思うのであった。普段は言い合ったりあきれたりしていても、なんだかんだ、初めてできた味方と呼べ思っているようだ。
(まぁ、私の考えすぎということもありますし、今はいったん置いておきましょう。)
さて、すこし話が脱線してしまったが、響の言葉を聞いて、パイフェンは覚悟を決めたらしくm、ゆっくりと口を開いた。
「私の話をする前に、まずこれを見せないといけませんね。」
そう言って、なにか小さな声で呪文?のようなものを唱えだすパイフェン。その呪文が終り、一瞬の淡い光が収まってからでてきたそれに、二人は言葉を漏らす。
「狐・・・・・・・?」
「あなた・・・・・・獣人でしたの?」
取り合えず、獣人の説明は省こう。おおむねみなが思っているそれで間違いない。獣人についてのもっと細かい話はまた今度にすると約束しよう。
今大事なのはパイフェンの頭と臀部についたそれ。ひびきが言った通り、彼女の髪の色と同じ銀の狐耳と三本の尻尾。見事なそれらが生えていた。
「残念ながら、私は獣人ではありません。これは私の先祖、お二人が知りたがっている女から受け継いだものです。」
「ということはその女が・・・・・・」
「いえ、彼女は・・・・・」
「神霊、だな。」
突然、割り込んできた、響に、二人の視線が集まる。
「え、えぇそうですが・・・・・・」
いきなり先を越されたパイフェンが困惑しながらも答える。なんでわかったのか不思議でたまらないといった顔だ。
さて、党の響だが、どうやら、やっと確信がつけるパースが見つかったようで、最後の考察タイムに突入していた。
(さてと、傾国の悪女に狐といったら候補はほとんど絞られる。彼女が中華系の名前だからおそらくはアイツだろうが、後ろの石が何とも言えないがまぁ、あれは名前が変だけで本質は変わらないからな。呼び方がどうなっているかって話だ。それよりも・・・・・・)
またもまあ割を置いてけぼりにして思考に走る響。
それをも見て、パイフェンは何事kと不思議がり、リコリスはまたかと頭をいか変えてため息をついている。
(なぜ白髪じゃなくて銀髪なんだ?あれであるなら白狐であって銀狐じゃないはずだ。・・・・・・おれの元居た世界とちょっと違うのか?ちゅうか、話自体いろいろとこっちと違ってるし今更か。取り合えず後回しだ。最後の答え合わせと行こうか。)
「なぁ、パイフェン。あのでかい石の名前、殺生石じゃないか?」
ずっと瘴気のようなものを発していた石を指さしながらそう問いかける響。
またも、言い当てた響きに驚きを隠せないらしく目を見開いて、少しの間彼を見つめたのち、はっとしてパイフェンは肯定を返す。
「 は、はいそうですがなぜそれを・・・・・・?」
「よし、ビンゴだ。」
にやりと口をゆがませながらそう言う。ドヤら彼の見立ては当たっていたようだ。
「 俺たちの世界のとある国には封神演義ってのがある。絶世の美女に化けtれ、時の皇帝をたぶらかし国を廃退させた妖がいてな。それを仙人とその弟子とかが不思議道具の宝貝もって討伐しに行くっていう話なんだがな・・・・・・。」
一拍置いて、二人の顔を確認する。
二人としてはいきなりほかの世界の昔話を聞かされて、きょとんとしているが、響は気にした様子もなく、話を続ける。
「で、その妖はきょうりょくな白狐でな、以前にもほかの国で王をたぶらかし、仙人たちにやられた後も、俺のいた国でもさんざん悪さをして払われて石になったんだがな・・・・・・。」
話を聞いていくうちに二人の顔が変わっていく。特にパイフェンのそれはリコリスより大きく、それは殺生石の何たるかを知っていることにより¥るものが大きかった。
「その話は・・・・・・」
「気づいたか。そう、こっちじゃいろいろと変わっているもののやってることは変わらない。その殺生石の元であり、パイフェンの祖先。傾国の悪女の名前はーーーーー」
響がその名を呼ぼうとしたその時だった。一瞬嫌な空気がアtらりに広がり、そののち、玉を転がしたかのような怪しい声が響いたのである。
『おい小僧、妾の名を着やすく呼ぶな。不敬であろう?』
三人が突然の声に驚きあたりを確認して焦っているその時、瘴気を放っていた殺生石が怪しく不気味に紫色に光りだしていった。その光はだんだんと強くなっていき、やがて眼も開けられないほどに強くなる。同時に、背中に今まで感じたことのない悪寒と、えもいわれぬような緊張感、不安や未知への恐怖といったいろいろな感情が押しかけてくる。
ヤバイ、何かヤバイものが来る。と三人は迫りくる感覚から悟る
光が止み、瞼を上げると先ほどまであった殺生石の姿わなく代わりに一人の女が妖艶な雰囲気を漂わせながら浮いていた。
美しい銀髪をたなびかせながら口元を扇で隠し、その死体は気崩した優美で豪華な着物に包まれている。その頭には狐の耳がついており、九つのおおきな尻尾は身体を預けるゆに使われている。まわりには人魂やお札のようなものが浮いており、手には酒を抱えている。そして何よりもでかい。少なくとも響の三倍ありそうだ。
それは先ほどまで、殺生石であったもの。パイフェンの祖であり、彼女の今の元凶であり、傾国の悪女。天の使いに敗れたまさしく世界の敵----
「・・・・・・妲己。」
『小僧、どうやら死にたいようじゃな。まぁ、貴様程度肩慣らし程度にはちょうど良いか。』
さぁ、少年よ。不倶戴天の頂に挑め---------




