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失われた名前。

 一日目の予定をすでにおえて、響とリコリスは『坂の木亭』に戻っていた。とりあえず今日はこれからの食材と薬品関連を一定量用意でき、かつ自分たちの個人的な買い物もできたということで満足げな様子である


「いやぁ~、まさかこっちにもルトは思わなんだ。」


「どうしますの、その大量のはちみつ。流石に買いすぎですわよ?」


 と、早速買ったはちみつを開けてジュースを作ろうとしている響に例によって呆れた顔をしながら問いかけるリコリス。

 それに対して響はコップの中に入れたはちみつと水、氷を混ぜながら答えた。


「いや、今のみてなかったのかよ。これ作んのに大量のはちみつ使うんだぞ。10杯で一本はなくなるんだ。問題ないだろ。そもそも腐らないし。」


「そうじゃなくて、もっとお金は計画的に使ってほしいと言ってますの!!」


「いや、そういいつつお前だってなかなかお高い人形をだな・・・」


「私のこれは武器でもあるからいいんですわ!!あなたのそれは完全に趣味じゃないですか!!」


 自分の胸に新しい人形を抱きかかえながら強くそういうリコリス。

 そう言ってるけどそれだって武器になるってだけで趣味じゃねぇか、と思いそう来るなら俺も徹底抗戦だと口を開く。


「そうは言ってもな。食事をする上で調味料は大事だぞ?。いつも同じパン食ってたら飽きてテンションが下がるだろうが。それにおんなじ味のジャムやマーガリンだってそうだ。それにこれは今俺がやっているように水さえあれば飲み物にもなるし、味だって何種類もあるんだ。腐る心配がないんだからあって困らないだろ。それにもpしかしたらこれから行くところ先々には売ってないかもしれない。別に俺一人で独占するわけじゃないんだし、そこまで言うことないだろ。なぁハナコ?」


「キュ!!!」

 

 まるで「もちろん」とでもいうように答えるハナコ。そのようすをみてだろぉ~となでる響。そのせいでリコリスが悪いような雰囲気があたりに出てきたような気がする。



「はぁ、もういいですわ。それよりも下に降りて夕飯いましょう。そろそろおなかがすきましたわ。」


「そうだな。もういい時間だし飯にするとしますかね。」


 というわけで二人して下の酒場に降りて各自好きなものを頼む。

5分ほどして料理が運ばれてくる。響はビーフシチューにバケット。リコリスはロールキャベツとサンドイッチ。談笑しながら食事を続けていると、なにやらおかみさんが二人の机にやってきた。

 

 何事かと二人ともに頭の上にはてなマークをいくつか並べて何か用かと聞いてみるとどうやらこの町の案内役を頼んだパイフェンのことだった。


「あんたたち、悪いことはいわないからあの͡娘に近付くのはやめた方がいいよ。案内役ならモットいるだろうよ。」


 やはりみな彼女にいい印象は持っていないらしく、けげんな顔をしてさながら井戸端会議をしているおばちゃんのようにささやいてくる。

 とわいえ、残念ながらいきなりそんなことを言われてはいそうですかと聞き入れるわけもなく、まして二人はすでにパイフェンのことを気に入ってるので変えることなんて絶対することはある訳もない。


 それに加えて村の皆の態度、物言いに少し・・・そこそこイラついていた響はおかみさんに尋ねることにした。


「なぁ、おかみさん。なんであんたたちはパイフェンのことをそんなに嫌ってる?少なくともそれを聞くまでは俺たちは彼女から変える気はないぞ。まぁ聞いたところで気が変わるとは思わないが。」


「そうですわね。いきんありそんなこと言われても納得できませんわ。ちゃんとその理由をいってくれませんと。」

 

 二人とも真剣なまなざしでおかみさんを見つめる。いや、響に関してはにらみつけているという方が正しいだろう。普段ンはおちゃらけているような響きだったが、その視線には有無をいわせぬような凄みがあった。


そんな顔を向けられてはおかみさんもたまったものではない。言われたとおりにおかみさんは話し始めた。



 「かなり昔の話なんだがね。・・・・・・・」


                     ♢


 十分ほどの時間がたち、その間に彼女とその祖先に関する話を聞かされていた二人だったが、感じることは違っており、生い立ちが特殊なリコリスはへぇ、そんなことがあったんですわね。とのんきに感心しているだけだったが、昔話や神話というのはとても良い情報源であり、そこから何か発見があるかもしれないとおもい、その話に関していろいろと考察していた。


 (一つの大国を滅ぼした傾国の悪女か・・・・・・。心当たりはいくつかあるが、それは俺たちの世界のことだからあってるとは・・・・・・。いや、まて。俺の持っている刀は天ノ尾羽張・・・十束剣。日本神話において、伊弉諾が、母である伊邪那美を死なせる原因となった自らの子、加具土命を分断するために使った剱であり、武御雷たちの親ともいえる兼だ。形は変わってはいるが同じものであることには変わりない。現に刀には神特攻もある。竜特攻は謎だがな。つくなら天ノ羽々切うが・・・・・。もしかして一色たになってるのか?)


(おっと、脱線してたな。取り合えず考えられることは、あっちの世界であるものはこっちでもある可能性があるってことだな。それに一番気を引くのは天からの使いってやつだ。少なくとも、神の使う言ってことは俺たちの敵・・・・・・。)


「なぁおかみさん。さっきから女女って言ってるがそいつの名前は何なんだ?」


「そういや・・・・・・何だったかねぇ。えぇっと・・・・・・」


(覚えていないのか?話からして有名な話だろうし、覚えていないというのもおかしな話だ。まぁ、アナザーに調べさせればいい話なんだが。アナザー、この話について調べてくれ。特に女の名前と天からの使いについて教えてほしい)


(招致しました。)


 そう言って幾分かの時間がたったのち、帰ってきた言葉は響の想像していたものとはまるで違っていた。

(マスター残念ながらこの話に対する情報はこれ以上はありませんでした。女性の名前も、天からの使いの情報もございませんでした。)


(どういことだ?まさか規制でもかかっているのか?)


(天の使いに関しての情報は規制がかかっているのですが、女性の名前に関しては規制ではなくそこだけ抜けています。消しゴムで消された感覚が一番近いです。)


(消えている・・・・・・?しかも名前だけ・・・・・・。別にわざわざ消さなくても規制をかければいいのにどういうことだ?)


 どうもそこが気になって仕方がないらしく、おかみさんやリコリスそっちのけでいろいろあれこれ考えをめぐらす響。リコリスが不思議がって顔を覗き込んで来るものの、気にする様子もなく口元に手を当てている。というかぶっちゃけ単に気づいていないだけだとはおもうが・・・・・・。



(考えられるのは三つ。一つ目は規制をかけている存在が名前を知られたくないんじゃなくて、残しておきたくなかったという可能性。二つ目はそもそもそれに対して意味なんてなくてただの気まぐれという可能性。三つめは規制がかけられなくて消すしかなかったという可能性。)


 そう、考えられる可能性を提示していき、それぞれに考察をしていく。だが、どうもふにおちないものが多く、なかなか考えはまとまらなかった。


(まず二つ目に関しては考える意味がなくなるから省くものとしよう。なら一つ目だが残しておきたくないんだったら、そもそもその子孫を起こしておくはずもないし、最初の時に子もろとも追いかけて殺しているはずだ。よって1は違うはずだ。となると3だが・・・・・・。1のことを考えると規制できなかってのは正しいんじゃないのか?でも、名前を消せるなら子孫だって消せるだろうになんで生きている?)


 考えをまとめていくうちに少しずつ道が少なくなっていく。つまりそれは正解に近付いているということであり、響の頭にはまた新しい可能性あ浮かびあがっていた。


(まてよ、そもそも規制した奴と消した奴は違うんじゃないのか?だとすれば納得がいく。問題はそれが誰かと消した理由だ。おそらく消したのは女本人なんじゃないのか?今まで子孫が殺されたり見つからなかったのも女の力で名前も何かしらそれに関係があって消したんだとしたら・・・・・・。)


「・・・これ以上は新しい情報が必要だな。となると本人に聞くのがいちばんか。」


「さっきからどうしましたの??いきなりだんまりかと思ったらいきなり話をまとまったふうなことを口にしたりと。まとまったのなら私にも教えてくださいまし。一人だけ仲間外れはいやですわ。」


 さっきまで完全に放置だったリコリスはそこそこに怒っているらしく頬を少し膨らませて拗ねているご様子だ。

 一緒にいたおかみさんは「仲間外れ?」と二人しかいないのに仲間外れとはいったいといった風に首をかしげていたが、どうやら響はもういちいちどうこうごまかすのもめんどくさいので無視することにしたらしく、拗ねているリコリスに対してだけ言葉をかけた。



「とりあえず、その話は部屋でするからさっさと食っちまおう。悪いな、ほおっておいて。」


 謝罪の言葉に満足したらしく、彼女の期限も治り、食事は進んでいった。

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