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蜂蜜と燻製と


翌日、太陽がそこそこ空へと昇り始めたころ、二人はゆっくりと動き始めた。

 

 このまますぐに目的地である帝国に向かってもよかったのだが、とりあえず1日は滞在して、これからの準備をすることにしようといいう取り決めになったのである。


 「まぁとりあえずは食料だな。あとは回復薬とかそんなんだな。特にMP系はあるだけ欲しいところだな。俺燃費驚くほどに悪いし。」


 「ついでにその奪い取ったそれも換金したほうがよろしいんじゃないんですの?」


 リコリスが指さしたそれはあの山賊たちから奪い取った一つのネックレスだった。


 「奪い取ったとは失礼な。頂いたと言ってくれ。それにまだこいつは売らんよ。もっとふさわしい場所があるのさ。」


 そういって黒い笑みを浮かべる響。その顔を見てリコリスが若干、いやかなりと言っていいほど引いていた。幸いなのは周りに人がいなかったことだろう。いたら絶対に不審人物といて通報されていたに違いない。


 「ついでに村の中も散策してみるか。なんかうまいものでもあるかねぇ。」


 「完全に観光気分ですわね・・・・・・。遊ぶのもいいですけど先にやることやってからですわよ?」


 「へーへー。じゃぁまずは薬品からだな。さてと・・・道具屋はどこにあるんですかねっと・・・・・・。」


 そういって大通りに出、探そうとするものの翌々考えたら、ここの文字は読めないし、まず道具屋になんて入ったことすらないので外見から探すこともままならない。


 となると残すところの方法は誰かに聞くしかないので、昨日と同じくあたりをみまわしているとなにやら見たことのある銀髪が目に入ってきた。


 「お、奇遇だな。まさか昨日の今日でまた出くわすとは思わなんだ。」


「あら、昨日ぶりですわね」


 「あなた方は昨日の・・・・・・」


どうやら二人はこの女性となかなかにして縁があるらしい。昨日道を尋ねた人物に翌日も道を訪ねることになるとはそうそうあるもんじゃない。


「・・・・・・一体どうなさったのですか?」


銀髪の女性は、 いかぶかしむ用に尋ねてくる。


「いやさね、また道を聞こうと思って。」


「物好きな人もいたものですね。二度も同じ人物に尋ねるだなんて。」


「そりゃぁそうだろ。初対面のやつより少しでも見知った顔のほうが道だって尋ねやすいさね。」


「いつも思うんですがどうしてコロコロと口調をあ変えるんですの?」


「さぁ?趣味じゃね?」


「まともに答える気がないのと適当なのはよく伝わりましたわ。」


 はぁ、とため息をついて額に手を当て、疲れたようにそういうリコリス。もうこの馬鹿には付き合っていられないといったふうだ。実際かまわずに無視するのが吉だろう。

 

 閑話休題


 二度も声をかけられた女性もどうやら初対面の時よりは気をゆるしてくれたらしく、あきれながらも聞いてきてくれた。


「それで、今回はどちらに?」


「道具屋にとおもったんだが・・・・・・そうさなぁ。」


 響はどうしたものかと少し悩んだ後、考えがまとまったようで、懐からお金の入った袋をとりだして女性に答える。


「なぁあんた、俺らにガイド役として雇われる気はないか?金ならある程度払うぞ?」


 (アナザー、ガイド役の相場ってどのくらいだ?)


 (金貨1枚から3枚といったところです。といっても基本ガイド役は一週間単位のものですが・・・)


 (了解。)


「二日で金貨5枚でどうだい?」


「正気ですか?」


 女性がそういうのも無理はない。なにせ相場の2倍以上だ。しかもそれをたった二日、本来の仕事量の三分の一以下でだ。破格の値段にもほどがある。

 金遣いが荒いと言えばそうだが、思い切りがいいとも言える。金をためておくだけではなく使うところでしっかりと使うのは経済的鬼もいいものだろう。


「ですが・・・・・私が一緒にいればあなたたちは。」


「気にするか。それに俺らはつい昨日ここに来たばかりの旅人。ここの事情なんて知らん。」


「しかし、そんなことは村の人々にはわからないのでは・・・・・」


「いや、俺はともかく隣にこんな派手な奴がいるんだぞ。こんなやつ村に住んでたらいやでも覚えるだろ。それが知らない顔店なら必然的によそ者だと思うだろうさ。そもそもここに長居する気ねぇし。」


「あなたさらっと人をディスってますわよね?気づいてますわよ?」


 リコリスの講義をサラッと聞き流し、そのまま女性に向き合って手にした五枚の金貨をひらひらとみせる。

 そのようすをみていた銀髪の女性は少し、いや結構悩んだのち少し気負い名がtらも了承をしてくれたのであった。



                      ♢


 響たちが出会った銀髪の女性。名はフー・パイフェンというらしく、齢は18とのことだ。どうやら町はずれの小さな小屋に住んでいるらしい。普段は冒険者としてモンスターを狩り、食いつないでいるそうだが、あまり金銭的に余裕がないので今回の仕事を引き受けてくれたそうだ。


(中国名・・・・・・?ここには中国語もあるのか?)


 響が、名前を聞いてまずおもったのがそれだった。確かにこの世界にきて日本語と軽い英語しか聞いてこなかったので、ここにきて中華系の名前というは注目すべきことだろう。)

  

 というわけで、困ったときのアナザーさん。響は自身の感じた疑問をそのまま万能AI(?)たるアナザーに聞いてみることにした。


(名詞としては存在しますが、意味まではみな理解していません。例えば麻婆豆腐という料理は存在しますが、アバタの作った豆腐料理という意味を知っている者はいませんし、そういう名前のそういったものとしか理解していません。名前に関してもそうですね。代々そういった名前だから似たような語感の名前を付けた、という程度です。)


(なるほど・・・・・・要は特に意味はないって認識でいいってことだな。)


(はい。それで問題はあまりありません)


(了解っと。)


 浮かんだ疑問も無事解決したので当初の予定通り買い出しに行くことにした。

 取り合えず最初は食料ということで大通りに出て、出店風の八百屋や精肉店などを散策していく。


「旅に出るのでしたらなるべく日持ちのいい干し肉やドライフルーツをお勧めします。」


「いや、そこは大丈夫だ。だけどまぁ旅っていう感じを出すためにもそういうのも欲しいな。」


「いや、別にいりませんわよ。普通の食事のほうがいいですわ。」


 本来旅での食事といえばパイフェンの言う通り保存のきく干し肉やドライフルーツ、瓶詰や香辛料につけたものが一般的だが、響たちにはアナザーの保管庫があるので期限を気にしなくて済む。

保管庫の中は時間という概念がないので、永久にもの腐らせずに入れておけるのだ。


「わかってないなぁ。雰囲気だよ雰囲気。旅してるのにいつもの食事とか風情もないし面白くもなんともないだろ?せっかく旅してるんだから楽しまなきゃ。」


「まぁ、退屈な旅というのもいやですが、だからこそ食事はいいものにするべきでは?」


「そじゃぁ旅してますよ感出ないだろうが。旅には旅の楽しみ方があるんだよ。あ、おっさんスモークチキンとスモークチーズ、桜チップの奴を5キロと1キロ頼む。」

 

 ちょうど通りかかった燻製店に顔を出し、店主のおっさんに声をかける響。

 通りかかったにしてはいささか買いすぎな気もるが、まぁ、腐ることもないので大丈夫だろう。


「あいよ、金貨2枚な。しっかし兄ちゃんこれまたたくさん買うねぇ。」


「好きなんだよ。燻製。あ、ついでに勲玉も25頼むわ。」


「銀貨3枚な。たくさん買ってもらった礼だ。5個おまけつけとくよ。」


「お、太っ腹だねぇ。」


 そう言って代金を支払い、気前のいい店主から商品を引き取る。そのまま中から勲玉を三つ取り出し、お供の二人にそれぞれ渡す。


「ありがとうございます。ですが・・・・・」


「気にすんな。ただでもらったもんだから別に一個や二個どうってことないっての。」


 そういって自分も勲玉を食べ始める。


 そのままいろいろな店を回っていたが、その中で響は気になったことがあった。

 みなパイフェンのことをあからさまに避けるのだ。

基本的に口をきこうともしないし、しゃべるにしても本当に必要最低限のもの。しかもあまりいい顔をしてるとは言えない。中には近くに行っただけで露骨にいやな顔をするものまでいる。

 みな、なるべくいないものとして扱うし、不思議なことにどこからも陰口のようなものは聞こえない。

まるで関わったらろくなことにならないといった風だ。

 パイフェンのほうもそれを理解しているらしく、まるでいつも通り、気にしていない。さりとて肩身を狭くして歩いている。


(やっぱり何かあるな・・・・・・。こいつは見ているだけでも気分が悪い。どこ行ってもつまはじき物はいるってことだな。しかも見たところによると本人に非はないとみた。あるならもっと直接的に何かあるはずだ。胸糞悪い) 


 違和感に気づき、冷静に分析するため響は歩きながら頭を回転させていた。その中で芽生える感情は不快感だ。

 じめっとしたいやな感じが村人からフェイへと向かっていく。たかが一人の女に何をつまらないことを。そういったあきれにも怒りにも似たような感情を覚えながら進む響。

 とはいえ前に響が言った通りこれは一朝一夕でどうこうできる問題でもないだろうし、ズカズカとデリケートな問題に踏み込んでいくことも違う。

 そもそもそれは俺の役割じゃないと、気分を改め、響はまた、気になった店、蜂蜜店の前で止まる。


「いらっしゃい。何をお求めだい?」


 店主のおばちゃんがそう声をかけてくる。

響はもしかしたらと期待をこめて探していたものを訪ねることにした。


「おばちゃん。アセロラとかラズベリーみたいなフルーツの味する蜂蜜ある?ほら水で割ってジュースで飲めるあれ。」


「おや、随分と珍しいものをお求めだねぇ。」


「好きなんだよ、水割り。で?ある?それともない?」


「もちろんあるともさ。どの味がいいんだい?」


 おばちゃんのその言葉に目を光らせて興奮する響。急いで金袋を取り出して中を確認。どうやらあの山賊かなりためこんでいたらしくまだ余裕はある。


「全種類三つずつ。ベリーと柑橘系はプラス2づつで。」


 良い笑顔でそう口にした。

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