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反逆の奇跡

日が沈み、地平線が橙色に沈んだころ、二人は森を出てそこから最も近い村へと来ていた。

時間も時間なので人もあまりいないと思っていたが、考えてもみれば夕飯前の時間なので、それをまって遊んでいる子供たちで賑わっている。


 「やっと着きましたわね。もうくたくたですわ。」


 そう、疲れをあらわにため息交じりにぼやくリコリス。


 「いやしかし長かったなぁ、あの森。ま、とりあえずは今日の寝床を探すとするか。宿屋がありゃぁいいんだが。」


 そういって響があたりを見渡すものの、お目当てのもののようなものは近くには見当たらなかった。


 しょうがないので誰かに聞こうと思い、付近を歩いていた銀髪の女性に話しかける。


「あ~あの、すいません。」


 「ッ!!」


 瞬間、その女性はまるで何かにはじかれたように降りむきに警戒心むき出しでにらみつけるようにこちらの様子をうかがう。

おいおい、一体俺たちはこの人に何かしただろうか?と響は不思議に不振に思いつつも、一応聞くことは聞いてみることにした。


「おちついてくれ。何が気に食わないのか知らんが俺たちはただ宿屋の場所を探しているだけでな・・・。」


「あぁ、旅のお方でしたか・・。申し訳ございません。失礼しました。私に声をかける方などいらっしゃらないのでつい。」


「へぇ、そりゃまたおかしなもんだ。あんたべっぴんさんだしそれに加えてその身体つきだ。男どもがほおっておかなさそうなのになぁ」


  確かに響が言うように女性の体はグラマラスの言葉がよく似合い男どもの受けのいい身体をしていた。


 「なんであなたいきなりおじさん口調になってるんですの・・・」


 「いえ、そんな単純なものではありませんので・・・・・・・」


  リコリスの突っ込みののち小さな声で女性はそうつぶやく。

どうやら並々ならぬ事情がありそうだが、自分にはあまり関係ないし、デリケートそうな問題なので下手にかまうのも迷惑。何より今は早く休みたかったので響は聞かなかったことにして話を続けることにした。


「まぁ、そんなことよりも宿屋だ、宿屋。知ってるなら教えてほしいんだが。」


 「あぁ、宿屋でしたね。それならこの通りの突き当りを左にお曲がって少ししたところにありますのでそちらを利用するといいともいますが少々値が張りますよ?」


「大丈夫だ。長居するわけでもないし、金に余裕もある。」


喋りながら二人の山賊を倒した戦利品である二つのふくらんだ金袋を見せる。これだけあれば一か月は軽くもつだろうが、やはりどちらが山賊だかわかったもんじゃない。いくら見逃して粋なことをしたからと言ってやっぱり鬼畜すぎる男はその名に恥じない人物だった。


 「でしたら問題はなさそうですね。『坂の木亭』というところですのでお気を付けて。」


「あぁ、サンクスな。助かったよ。あんたも元気でな。」


 そう言って女性に別れを告げていわれた方へと歩き出す。

 そのあとからリコリスも小走りで追いついてきて、今しがたの女性について口を開いていた。


 「よかったんですの?さっきの方、何やら事情があったようですが・・・」


 「いいんだよ。俺たちにゃぁ関係ないことった。ついさっき会ったばかりのぽっとでの俺らがズカズカ踏み込んだってお相手さんもはた迷惑なだけだろ。」


 「まぁ、確かに余計なおせっかいでしたわね・・・。」


 「そうそう、どうせ一朝一夕でどうにかなるようなもんじゃねぇ。そのうちそれを解決してくれるような王子様が現れるだろうからおれたちは知らないふりして別れるのが吉さ。」


 「それが自分とはまったく考えないんですのね・・・」


 「悪いが俺ゃあ王子様なんちゅうキャラじゃないんでね。」


 「まぁそうですわね。どちらかといえば魔王だなんて言われた方が100倍納得できますわ・・・」


 「ひどくね!?」


 それはさすがに許容できないといった様子で言葉を返す響。今まで自分のやってきた事を思い出してみろといったように返すリコリス。

 赤く沈む村道にそんな影が溶けていった。


                       ♢


 数分もして、『坂の木亭』についた二人は、さっそく中にはいってみる。


 するとどうやら一階は受け付け兼食堂になっているらしく、夕食時だというのに、宿屋のおかみさんがカウンター内で暇そうにしていた。


 「すいませーん。部屋二つ空いてますか?」


 「おや、兄ちゃん部屋ひとつじゃなくていいのかい?」


 「いやぁ、残念だけど俺たちそういうんじゃないんで。」


 「またまたぁ、こんな別嬪さん連れておいてねぇ。」


 「いや、誰がこんな地雷丸出しのイタイ中二病女なんぞ・・・」


 「ぶっ殺しますわよ?」


 そういって青筋立てながら、目の笑ってない笑みを響に投げかける中二少女。

その背後からは尋常じゃない殺気と鬼のようなそびえたつビジョンが見えている・・・ような気がする。

 

 「というかあなたにだけは中二病とか言われたくありませんわ。」


 「誰が中二病じゃ!俺のどこが中二病だっていうんだよ!!」


 「戦闘方法とか技名とか、そのイタいノートとか。」


 「イタいノート!?俺の秘密兵器をなんちゅう呼び方してんだよ!!」


 「だってそれ黒歴史の塊みたいなものじゃありませんの。」


 「ぶっ飛ばされたいいのかお前!?おまえだって歩く黒歴史じゃねぇかよ!!」


 「歩く黒歴史!?」


 「だってそうだろ!ゴスロリ服、眼帯、特殊な目にその謎の口調に反逆者とかいう肩書!!」


 「はぁあ!?何を言ってますの!?大体最後のはあなたも同じでしょう!?」


 「別に俺自分からなってませんしぃ~。ただ安全に面白おかしく生きるためにやってるだけですしぃ~。」


 「うわ、面白おかしくとか・・・・・・」


 「あぁ。」


 「はぃ?」


 まるでやのつく方々のようにメンチを切りあう二人。

そんな二人をみかねてか、まぁまぁとおかみさんが止めに入る。


 「ちょ、ちょっと二人とも落ち着いて。夫婦漫才するのもいいけど限度があるよ。というかなんかさっき反逆がどうこうとかいうのが聞こえたんだけど・・・」



 「・・・」


 「・・・」


 おかみさんの疑問の言葉に、先ほどまで醜い争いをしていた二人の動きが止ま、そして額から流れ落ちる大量の汗。

その言葉で一気に熱が冷めたのだ。そして思うことは二人とも同じ一つ。


 やばい。


「いいいいや、ほらあれだから俺別に反逆とかいってないから。あれだから、ほら、あれ反逆じゃなくて半熟っていったんだよ。わかる、半熟?卵のあれだよ。硬さ的なあれ。」


 「そそそそうですわ、半熟。私もゆで卵は半熟派ですわ。いいですわよね、半熟。ゆですぎるとパサパサして口乾いて気持ち悪いですし、生すぎても、食べにくいですしそれもう生で食べれば?っておもいますものね!」


 注意、あくまでも個人の感想なので悪しからず。


 

 「だよなぁ!?やっぱり卵は半熟だよなぁ!?」


 注意、個人の意見です。


 取り合えずこの場をどうにかごまかそうとして慌てて言葉を紡ぐ二人。

思うのだがなぜ怪しいと思っていても人間はてんぱってごまかそうとするのだろうか。冷静に返す方がばれにくいのに。やはりそこまでの余裕がないのであろう。


 「いや、さっきまであんなに喧嘩してたのに・・・」


 「いやいやあれただのコントだから。俺ら普段めっちゃなかいいから。なぁ!?」


 「そ、そうですわ。この世界に私たち以上に仲のいい人たちはいないって言えるくらい仲いいですわ!!」


 「いや、でも仲いいなら普通同じ部屋とるんじゃ・・・」


 「それはあれだよあれ。ほら、親しき中にも礼儀ありっていうじゃん!?だからさ、互いのことを尊重してだよ。何ならあれだよ!?俺達の仲疑うんだったら別に二人部屋でも全然いいよ!?なぁ!?」


 「そうですわ。全然問題ありませんわ。というかやっぱり離れたくないので一緒の部屋でお願いしますわ。むしろそれじゃなきゃいやですわ。」


 もはや支離滅裂にもほどがある言葉だが、超スピードでまくしたてることによりまるで正論のように思わせてう納得させてしまう。さらには論点をずらして本題を有耶無耶にして切り抜ける。

そんな意味の分からない作戦だったが、どうにかおかみさんは騙せたようで・・・


 「そ、そうかい。それなら二人部屋用意させてもらうよ。でもあれだからね。いくら仲いいからって激しすぎてベット。壊したりしないでくれよ?まぁ、うちはシングル二つだけどさ。」


「「ありがとうございます!!でも完全に余計なお世話アンド変に勘違いしないでください(まし)!!」


 見事なはもりでおかみさんに突っ込む二人。確かにこう見てくると仲がいいというのもあながち間違いじゃないのかもしれない。


 その後、おかみさんに連れられて、用意された部屋へと向かっていく。

案内されたその部屋は、掃除も行き届いており広さも充分。言っていた通りベットもダブルではなくシングル二つであり、なかなかのへやであった。


 「じゃぁ、鍵渡しておくよ。残念ながら食事は別料金になるから下の食堂でお願いね。」


 そういって部屋を出ていくおかみさん。その足音が聞こえなくなって離れたことを確認し、鍵を閉めたところで二人へたりこみ、


 「「あ、あぶねぇ(かったですわ)~。」」


 何とか脱した危機に安堵を漏らす。

まさしく危機一髪。危うくばれてすべてがおじゃんになるところだった。下手をするとここで物語が終わるかもしれなかったと考えると空恐ろしい。


 そうして胸をなでおろした、のち出た会話は、


 「・・・取り合えずさっきのはすべて忘れよう。」


 「・・・そうですわね。」


 さっきの醜態の忘却だった。


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