アナザーストーリー・変人たちの集い
「よっしゃっ、これで止めだ‼」
その言葉と共に放たれた極大の光が、身体中傷でおおわれた猪の様なモンスターを飲み込んでいく。
しばらくし、光晴れたそこには既に形あるものは見あたらなかった。
「よしい、これでノルマ達成だ。ここいら辺で休憩でもとるとするか。」
そう秀助は皆に言って近くの岩に腰を掛ける。
他の面々も、続いて適当なところに腰を落とす。
「ふぅ、しっかし奥の方に来たなぁ。モンスターの強さも入り口付近とは大違いだ。」
そう言葉をこぼすのは、先程の猪に止めを指した慎悟だった。
一行がいるのはあの王都付近にある森の奥地。かつて響がレベル上げをしていた最終地である。
今は、クラス総出で三日間の長期演習をしているところだ。
無論、ここまでこれているチームは残り二つしかなく、他の組はいまだ中部にいることだろう。
「どうする?レベルアップのためにもう少し奥まで行ってみる?」
「いや、無理は禁物だ。命あっての物種だからな。これ以上はやめておこう。」
恵の問いに淡々と答える秀助。
響いない今、このチームのリーダーはこの男しかいないだろう。
その後、一行は十五分ほどの休憩を行い、簡易転移アイテムである、鳳凰の宝玉を使い、森の入り口へと戻っていった。
すると、集合場所であるそこに、騎士団以外の者達がいたのである。
まぁ、言わずともわかるであろうが、勇者代表である輝のパーティーだ。
「ん?あぁ篠山さん達か。ここに来たってことは君達も終わったのかな?」
秀助たちに気付いた輝が声を掛ける。それに会わせて残りのメンバーも一同の方をみやる。
「え、あ、は、はい。」
幽香の人見知り発動。そのまま恵の後ろに隠れてしまう。
それを見て少し残念そうにしたが、気を取り直して話を続ける輝。
「でも無理は禁物だよ。彼が死んで辛い気持ちはわかる。だからといって、少し頑張りすぎじゃないか?」
そう、心底心配だというように声を掛ける。
あの洞窟での出来事のあと、集合場所である森の入り口へとたどり着いた一行は、ことの一部始終を伝えた。
調子に乗って挑んだ洞窟にドラゴンがいて、みんなを逃がすために殿になったと。
それに偽りはない。事実をそのまま語ったがしかし、そこに響の人となりや性格といったものはなく、報告を聞いた騎士団やクラスメイトは事実のまま霧村響は死んだと疑わず、誰もここから逃げるためにあえて残ったという可能性にたどりつかなかった。
「だ、大丈夫です……。」
「あぁ。二ノ宮が心配することはない。皆の限界位把握できている。無理して倒れてしまってはあいつに会わせる顔がないからな。」
そう言葉を返した秀助に同調するように他の四人もうなずく。
そのしぐさを見て、一瞬悔しそうな顔をして聞き取れるかどうかわからないほど小さく呟く輝。
「そっか……。やっぱり彼が羨ましいよ……。」
その言葉の中に込められた意は一体全体なんだったのか?それを知るものは彼自身しかいないだろう。
「取り合えず工藤さん達は報告に行ってはどうですか?あまり騎士団の皆さんを待たせておくのはよいことではないと思いますが。」
新しく話題を切り出したのは鈴城天音。輝パーティーの一人でもとの世界では風紀委員をしており、なかなかの堅物として有名な人物である。
「天音ちゃん。いつもいってるけどもう少し言い方考えようよ……。」
そう天音を優しくたしなめるのは、輝の幼馴染みである新堂双葉だ。
「良いじゃねぇか。皆鈴城の性格ぐらい把握してるっての。今さらコレくらいでどうとも思わないっての。」
「八瀬さん……。あなたそれは私をバカにしてるんですか?」
声を上げた瑞季に対して時と目を向ける天音。あわてて手を左右に振り、否定を現す瑞季。
そのしぐさを見て、はぁ、と諦めたようにため息を着く。
「まぁ、瑞季に悪気はなかったんだ、許してやれ。それより、秀助達はそろそろ真面目に報告にいった方がいいぞ。章太郎達が来た。」
そう言って新しくここに来たチームを指差したのは藤崎玄助。輝のパーティーで斥候役を勤めている男だ。
「章太郎君達も早いね。この様子だと他の皆ももうすぐかな?」
「かもな……といいたいところだが章太郎達は特殊だからなぁ。」
玄助に話しかけたのは最後の一人である不知火京子。
実を言うとこの二人は輝達よりもいまきたメンバーとの方がなかが良いのだが、人数的なものや戦力的なものを考えて輝のパーティーに入っている。
勿論、だからといって輝達となかが悪いわけでもないし、むしろいいいほうである。
「お、玄助達に秀助達じゃないか。さすがは筆頭パーティー2つは強いな。俺たちはまだまだだよ。」
「まぁ、ほとんど運便りだからなぁ。」
「それを言うなよ!?俺も結構気にしてんだから。」
新しく来たパーティーのなかの内二人が漫才のようなやり取りをする。
最初に玄助に声をかけたのが深山章太郎。一応?このチームのリーダーだが、扱いはぞんざいのようである。
その章太郎を茶化した男が不動連太郎。章太郎の幼なじみにして親友の。
「《幸運》だったか?そんなチート能力を持っていて、まだ不満があるのかよ。」
「いやな。それはわかっているんだが……、なんかこう実力で戦ってる気がしないというかなんというか……。」
「まぁ、言わんとしてることはわかるが……。」
慎悟の言葉に不満を漏らしながら答える章太郎。
慎悟のいっていた通り、章太郎の能力は《幸運》である。
そのこうかとしては、正しくなの通りで、運が絡むものに対して常に最高の結果を生み出すというものである。
例えば、歩けばレアモンスターもしくは目的モンスターばかり現れるし、攻撃は何故か敵の急所によく当たる。さらに、レアドロップもわんさかするし、レベルアップ時のステータス上昇率も最高のものになっている。
しかし、初期ステータスオール1なのと、レベルアップに必要な経験値が他人よりも多いのがこの能力の最大の特徴である。
故に、章太郎は今だ一人だけレベル10台なのである。
「まぁ、そのお陰でここまで来れてるわけだしいいじゃねぇか。」
「そうなんだけどさぁ……。」
残りの男子メンバーの青木十勝の言葉に、しぶしぶ頷く章太郎。やはり割りきるのは難しいようだ。
「しかし、章太郎さまさまだな。拝んでおけば私たちにも何かご利益があるかもだ。」
そう冗談めいたことを言うのは鷺沼いおり。口調は男勝りではあるが、歴とした女子である。凛々しく整った顔立ちからどちらかと言えば女子の人気が高いと言うのはあまり触れてやらない方がいいだろう。
「確かに。私も拝んでおこっと!」
「あら?それなら私もご利益に預かろうかしら?」
いおりに続き、残りの女子メンバーの日輪瞳、清水アリスが章太郎に向かって手を合わせる。
さらにそれを見た連太郎達も拝み始め、最終的にそこにいる全員が章太郎を拝み倒すといういような光景が出来上がってしまった。
「「「章太郎様。どうかその運をお恵みくだせぇ。」」」
「ちょ、お前らやめろやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。」
◇
「皆いままでご苦労だった。君達にはそろそろ王城を出てもらって、冒険者として力をつけてもらいたいと思っている。無論、このまま騎士団とともに訓練したいというのであれば喜んで歓迎するぞ。」
全てのパーティーが無事に入り口へと集まると騎士団長のガイユスがそう切り出した。
この件について、国王達はかなり否定の色が強かったのだが、勇者たちの戦力上昇はおのが信ずる神のためになるならと渋々了承したのだ。
「一つ質問いいかな?団長さんや」
そう切り出した長髪をポニーテールにした男子は千葉蘭丸。
実家が歌舞伎座であり、絶世の天才美少年である彼だが、その実かなりの変わり者のナルシストで、常に一人で飄々としている。
「ここから離れるのはいいさ。で、それは個人で行けるのかな。」
「残念ながらいままで通りパーティー単位での行動をとってもらう。」
「なんだ。それは残念だよ。」
ガッカリしたように肩をすくめて首をふる蘭丸。
その仕草と言動を見て、彼のチームメンバーは冷たい目を向けた。
訓練中、蘭丸は一度もまともに参加することなく、実質4人での訓練になっていたことにより、印象が最悪になってしまったのである。
「というわけだ。まずはパーティーでどうするかよく考えてくれ。」
ガイユスの言葉に、困惑しながらも皆話始めるのだった。




