土くれの杭
「え?なぁにこれ。」
壁を突き破ることによって二週間ぶりに日下に出られた響が出した第一声はそれだった。
外に出たら久しぶりの日光を懐かしむ言葉を言おうと決めていたのだが、出てきてみたらゴスロリの美少女が初老の神父と気味の悪い人形に襲われているのである。そんな状況だったら、つい某決闘者と同じ台詞をはいてしまうのもしょうがないだろう。
「おや、乱入者とは。これは予想外ですね。」
「おい、そんな2000ダメージくらいそうな名で呼ぶな。つーか誰か説明しろや。俺はどうすりゃいい?」
事態をまったくといって良い程に理解していない響が二人に尋ねる。まぁ、つい今しがた出てきたばかりなので理解するもくそもないのだが……。
「こんな情況でなにいってますの?こういうとき、普通殿方は美少女の方を助けるのではなくて?」
「そうは言っても怪しさはどっちもどっちなんだよ。助けたあとに刺されるとか笑い事じゃないからな。助けるならちゃんと考えなきゃいかん。というか面倒事はごめんだ。」
まぁ、確かに森のなかでゴスロリを着ているというのもなかなか奇妙な話ではあるし、怪しいと言えば怪しい。
そもそも、ただ居合わせただけの響に助けを求めるのもおかしな話だ。何せこの件は響に全くもって関係のない事柄なのだから。
それでも、リコリスは助けを求めずにはいられなかった。もしかしたら、ひょっとすると、そんな藁にもすがる思いで伸ばしたては、しかし響の言葉に引き返していく。
(結局、誰もわたくしに近づいてくれない……)
「結局……わたくしは……誰にもッ‼」
顔を歪め、目にうっすらと涙を浮かばせながら、そう小さく呟いた。
あぁ、きっとそれはとても小さく、届くはずのない言葉だったのだろう。
でも、その嘆きは、偶然にも彼の耳に届いたのだった。
「あー、もう。全く、そういう顔をするなよ。そんな顔でそんなこと言われたら・・・・・・」
「……え?」
「手を伸ばしちまうだろうが。」
そう言葉にし、リコリスを背にして神父との間に立ちふさがる。
「おや?面倒事は嫌ではなかったので?」
「まぁな。確かに面倒事は嫌だし、赤の他人の事情なんざ知ったことじゃない。でも……」
後ろの少女をちらりとみやりそう、言葉を続けた。
「目の前で涙流しながら、何とかいきようとしているやつを、助けを求めているやつを、ましてやそれを救える手段があるってのにてをさしのべないほど、俺は落ちぶれちゃいない。」
力強く、そう言葉にする。
一番驚いていたのはリコリスだった。諦めていたというのに、この男は助けてくれるといったのだ。
「おい、そんな驚くなよ。そもそも助けないとはいってないぞ?」
言われて見れば確かに決めかねているとしか言っていない。全く素直じゃない男である。
「もとより見られた時点で見過ごすつもりはありませんでしたからね。あなたがそちらにつこうと変わらないこと。」
「マジかよ。聖職者にあるまじき発言だぞ、おい。」
いや、国王も姫様も狂ってたしここじゃぁ不思議でもないか。
そう自己完結し、敵であろう人形の分析にはいる。
「アナザー、一式展開。」
(承認。表記します。)
フェイスマン
? ?歳
Lv,61
能力
HP5767/5767
MP4431/4431
攻撃 89
防御 221
魔攻574
魔防 607
俊敏 7
《スキル》
炎魔法Lv,3、全属性吸収、物理無効
《称号》
醜き人形、実験体、合成生物、悲しき末路、不滅の肉体、大喰らい
《装備》
なし
(んじゃこりゃ。ペ○ソナの無敵ルシファーかよ……)
やはり全属性吸収と物理無効は驚くらしい。まぁ、こんなのが敵として出てきたら誰だって驚くだろう。
「さぁ?どうしたのです?かかっては来ないのですか?まぁ、あなたがフェイスマンに勝てるとは思いませんが。」
そう言って嘲笑うかのような言い方であおってくる神父。その顔も、どこか響を論うモノだった。
「まぁいいや。丁度良い。こいつの実践練習といこうか。ハナコは下がってろ。」
そう言って自身の愛イシマジロを下がらせ、右手を前へとつき出す。その人差し指と中指には、小さく光る指輪が一つづつ。
言葉を、綴る。
「起きろ(Steh auf)ーー」
◇
時は遡ること二週間ーー
響がアースドラゴンを倒し、その疲労を取るため座り込んでいたとき。
(マスター、アースドラゴンからのドロップアイテムがございます。)
「ドロップアイテム?」
はて?今までそんなアイテムあっただろうか?
アナザーの言葉にそんな疑問を浮かべながらアースドラゴンの方へと向かっていく。
すると、その骸のそばに、一振りの異質な刀と、2つの指輪だった。
実はレア度の高い(倒すのの難しい)種を倒すと、アイテムをドロップするのである。
「アナザー、鑑定頼む。」
(承認しました。表記します。)
天之尾羽張
ランク 無冠級
攻撃+10800
魔攻+5400
俊敏+10800
限界を突破したもののみに現れる刀剣。竜種限定。
神に連なるもの、竜種に対する攻撃に多大な補正がかかる。
焔の指輪(変化)
無冠級
限界を突破したもののみに現れる指輪。火の魔法を自信の好きなように変化させて、オリジナルのものにできる。ただし、あくまでも元の魔法あってこそのもの。完全に新しい魔法はつくれない。また、変化出きる系統は最初に成功した一つのみ
地の指輪(変化)
無冠級
限界を突破したもののみに現れる指輪。地の魔法を自信の好きなように変化させて、オリジナルのものにできる。ただし、あくまでも元の魔法あってこそのもの。完全に新しい魔法はつくれない。また、変化出きる系統は最初に成功した一つのみ。
武器のクラスについては、量産級、普遍級、業物級、名有級、魔級、聖級、幻想級、神話級、無冠級とある。
アナザーが作り出せるのはせいぜい二三日かけて名有級が良いところだ。
下級の竜種を倒したにしては過剰すぎるドロップにも思える。
それの理由としては響の持つ称号《リミテッドブレイカー・真》が関係しているのだが、本人は気づいていない。
というか、気にしていなかった。なぜなら……
(これは来た‼こいつなら魔力の通っていない攻撃が出きる‼)
このように、指輪の性質に舞い上がっていたためである。
こうして、響の魔法実験が始まったのである。
が、しかしながら一週間程たっても一向に出きる気配はなく、響は完全に行き詰まっていた。
(クソッ!!どうしたら良い?魔法のイメージは完璧なはずだ。何が足りない!?考えろ、考えるんだ……)
しかし、一週間程度で諦める訳にもいかず、響は脳をフル回転させて、案をひねり出そうとしていた。
そして、一つの答えにたどり着く。
(言葉……か?もしかして魔法を形づくっているのは言葉じゃないのか?だったとしたら、この世界の言葉じゃないものを使えば良いはずだ‼)
「アナザー!この世界の言語はどうなっているんだ?何で、日本人の俺たちが異世界の人間と話せる?」
(言葉だけですと、この世界の言葉は日本語と極めて酷似しています。また、単語としてであれば英語もございます。ただし、完全に一致というわけではないので、少々翻訳しておりますが……)
運が良いのかどうなのか、日本人にとってはすみやすそうな異世界に来たようだった。
それに、言われて見れば確かに魔法名はほぼ英語である。
「なふほど……つまり日本語、英語以外の言葉を使えば……‼」
そう言って、一緒にこっちに来た鞄のなかにあった電子辞書をアイテムボックスから取り出す。
そこからさらに3日、ついにそれは完成した。
長ったらしい詠唱が必要であるし、消費魔力も圧倒的に多く、指輪をつけている本人しか使えないため、アナザーに頼むことができないという多くのウィークポイントを抱えるものの、それは完成したのである。
◇
「地に増えるは人の子ぞ。(Das Kind, das auf die Erde wächst, ist ein Kind)」
「地に生きたるは生命ぞ。(Leben im Landleben)」
「故に、地は全ての父であり、(Deshalb ist die Erde alles Vater)」
「基盤である(Es ist die Grundlage)」
「さぁ、父なる地は裁きを下す(Jetzt werde ich ein Urteil über das Land meines Vaters fällen)」
詠唱が終わり、その名を呼ぶ。
「舞えーー土くれの杭(Tanz Haufen Erde)‼」
立ち尽くしていた人形に、隆起した土の槍が襲いかかり、貫き通す。
辺りに、鮮血が舞った。
ステータス更新(洞窟突破後)
霧村響
男 17歳
Lv,106
能力《人格》
HP253767/253767
MP317522/317522
攻撃 15461(+10800)
防御 12014
魔攻16034 (+5400)
魔防 1174
俊敏 19377 (+10800)
《スキル》
炎魔法Lv,7、水魔法Lv,4、土魔法Lv,7、風魔法Lv,2、闇魔法Lv,6、回復魔法Lv,4、強化魔法Lv,7
《称号》
ハナコの主、鬼畜過ぎる男、確認するもの、モンスター退治の専門家、日帰りする男、大罪・暴食、情け無用の男、リミッテドブレイカー・真、ドラゴンスレイヤー(竜型の敵に特効ダメージ)、爆発魔、はぐれもの、魔なき神秘、抗うもの、暗視
《装備》
冒険服、天之尾羽張(攻撃+10800、魔攻5400、俊敏10800竜種、神性特効)、パワーブレス(ステータス上昇率アップ・被ダメージ、消費MP3倍)、火の指輪(変化)、地の指輪(変化)




