追えば追うほど人は逃げる
「こいつはまた派手にやりやがって。害者の情報は?」
「はい、老舗の薬屋でして、やられたのは倉三つです。金貨もそうですが薬もいくつかやられてるようでして・・・。幸い、倉は無人でしたので死傷者はいません。」
「薬もうりゃ金になるかんな。よし、とりあえずそこから当たるぞ。すぐに手配しろ!」
「はい!わかりました!!」
響たちは今、あの岡っ引きに連れられて野良犬小僧が出たという事件現場に来ていた。来ていたというよりかは半ば強引に連れてこられたといった方が正しいか。
「流れでこんなところまで来てしまいましたがよっかたんでしょうかね?」
「まぁ、松之助さんも一緒だったし大丈夫じゃない?他の刑事?さんも何も言ってこないし。」
「刑事やのうて下っ引か手先やな。江戸時代風に言うならやけど。」
「細かいことは良いとして、あたしこういう事件現場見るのって初めてかも。」
「見慣れてたら逆にこえぇよ。別にお前薬飲んで縮んでねぇしじっちゃんが探偵でもねぇし兄貴の左目移植してねぇし骨格標本士でもねぇだろ。・・・ん?」
呆れる響の目の前に辿が出てきて自分の顔を指差す。数秒して彼女が何を言いたいのか理解した響は目を半目にして更にあきれたように口を開いた。
「・・・・・・あー、骨董屋のね。わかる人すくねぇっての。むしろ俺がわかっただけでもスゲェだろ。つかお前も対して関係ねぇし。性別すらちげぇし。」
「ウチもわかるとは思はへんかったなぁ」
「うーん、脳内検索かけてるけど出てこない・・・。」
唯一話についていけるであろう杏が、二人がなんの話をしているのかを必死で考えていた。
「たしかアニメ化は発表されてたし、あっちだと放送終わった頃じゃねぇかな。」
「ならわかんないや。あたしミステリーあんま読まないし。」
「だろうな。葛籠川なんかは読んでそうだが・・・。」
「・・・?(骨董屋って・・・何?)」
「あーその反応は読んでねえな。なら良いんだ。」
「(きっと骨董屋ってなんだろうとか考えてるんだろうなぁ、阿礼のことだから。)」
さすが幼馴染み、ちょっと見ただけで見事に考えていることを見透かして見せた。まぁ彼女の場合本性を知っていれば読みやすい部類なのだが。というか小難しい言葉が出てくれば十中八九それに食いつくだろう、馬鹿だから。
「まぁ、黒崎は多分知ってるよな。」
「もちろん、ミステリーとなれば大方目を通してるよ。でも、なんでその人選なんだい?霧村君の言ってた最初の二つはよわかるけど・・・」
「警察関係者主人公は抜かしたんだよ。警察だったら事件現場にくんのは自然だからな。」
「成る程、でも普通にホームズとか明智小五郎とかで・・・あぁ、彼らは警察から頼られる立場で、自分から頭を突っ込むタイプだったね。」
「後はあれだ、俺の趣味だ、いいだろう?・・・ダ◯ルも見てそうだな。」
「それに関しては見てそうというか俺たち世代じゃないか?」
「確かに。」
さて、こうしたくだらないやりとりをしている間に松之助がひと段落をつけて戻ってきた。今回の事件、幸いに身体的被害者が出なかったため、少しばかり彼の表情も来るまでの時よりかは柔らかくなっていた。
「さて、あんたたちにはまだいつの話をしっていなかったな。」
「あー野良犬小僧だろ?名前的に義賊かなんかね。(てかあれだ、これ職場体験とか社会科見学に来てる気分だ。人数が人数だし。)」
「そのとおり、奴は義賊だった。」
「だった、過去形ということは今は違うということですか?」
「あぁ、昔は悪事を働いたり不当な方法で稼いだ金持ちから金品を盗みそれを貧しい家、特に子供がいる家に届ける、そんな悪党ながらも粋な奴だったよ。」
「それが十年前に変わっちまった。その当時奴を追っていた凄腕の岡っ引がいた。ある晩、その岡っ引はついに野良犬小僧を追い詰めるkとに成功したんだ。だがな、逃げ場を失い追い詰められた奴に殺されちまった。そのまま小僧は逃亡、それからだやつが変わったのは盗みのためなら殺人も誘拐だってやる。ひどい時は家の女人を強姦したなんて事件だってあった。流石にその中には模倣犯やら奴に罪を着せようとするような葛野郎だっていたが、全部が全部そうだってわけじゃねぇ。もちろんすでに義賊として人々に金を届けるだなんてマネはやめちまってたよ。」
「成る程、小僧が聞いて呆れるな。」
「だから、なんとしても俺は奴をしょっ引かなきゃならねぇんだ。殺されて行った奴らのためにも、必ず、必ずだ!」
感情的になって声を荒げる松之助。それは一介の岡っ引が犯罪者一人に抱くものにしては明らかに行きすぎたもので、おそらく何かしらの因縁が合うように思える。
その思考を察したのか、先ほど飯屋に松之助を呼びにきた男が、捜査に松之助が戻った後彼に聞こえないようにこっそりと教えてくれた。
「十年前に、初めて殺された岡っ引がいただろう?それがね、親父さんなんだよ松之助さんの。だからさ・・・。」
「仇を取りたいってわけか。」
「普段は昼間から酒飲んだり遊郭にいたりするようなダメ人間なんだけど、こと野良犬小僧のこととなると暑くなるんだよ。普段にもあの熱意を回して欲しいんだけどねぇ。それ以外の仕事まったくやらないし。」
「おい、コソ泥捕まえる前にあの税金泥棒を職務怠慢でしょっぴくのが先だろ。」
「そのなんたら小僧を捕まえる仕事しかしてないって、今まで捕まってないんですから用は何一つ仕事してないってわけですわよね。」
「そうなるね。十年近くも。」
『早急に首にするべきだと思う。この街のためにも。』
市民の血税が酒と風俗代に消えてるとはひどい話だ。というか明らかに倒されるべき悪側の所業、物語が物語ならまず間違いなく痛い目を見ていることだろう。
「ていうかなんでいままで首になってないのかが不思議だ。それに岡っ引って役職につけてるのも。」
「母方がけっこうな名家の出らしいんだよね。だから上もそう簡単に切れないし、松之助さんもそこいらへんには頭が回る人だから・・・。」
「腐ってんな、いろんな意味で。・・・それで、名探偵的にはどうよこの騒動。」
話を切りかえ、響が大我に聞く。
「名探偵はやめてくれ、俺はそんなたいそうな存在じゃないよ。まぁ、面白そうではあるかな。現状じゃ情報が少なすぎてなんともいえないけど。」
「流石に乱◯さんみたいにゃいかねぇか。ま、いい気分転換にはなるでしょ。ここも気にいってるしそう悪さばっかされても困るからな。」
「めずらしいですね、響さんからこういったことに首を突っ込むのは。」
「そうでもねぇだろ。」
「いや、実際珍しいと思うけど。いつもならめんどくさいとかいって一蹴しそうだし。」
「さっきも言ったけどここ気に入ってんだよ。あと野次馬精神。ジャーナリストとして大切だろ。」
「お前はジャーナリストじゃないだろ。・・・お前がジャーナリストとか想像もしたくねぇぞ。」
「あることないこと面白おかしく書かれそうだよね。」
「ネタを握ったらそれを使って脅迫とかするタイプだろう君は。というか実際してたんじゃないかい?」
「随分好き勝手言ってくれるじゃねーか、お?喧嘩なら買うぞオラ。」
とりあえず最後に発言した(一番ボロクソ言ってたからという理由かもしれないが)蘭丸の胸ぐらを掴んで青筋を立てる響。
そのあと、アイフェンがちゅうさいんい入ってことなきを得るが、なにかとこの二人仲が悪い。まぁ蘭丸的には意中のリコリスと一緒に行動してる響は気に入らないだろうし、響は性格的にしょうがないか。
ともあれ、落ち着いた響が話を元の意もどする。
「まぁ野次馬精神てのはたった今ひょっこり出てきた気紛れだけどな。ほんとはここまで連れてこられたってのに何もしないで帰るのが尺だしなんかもったいないからだし。」
「あぁ、それはお前らしいわ・・・。」
と、ここで現場の検証はひと段落したらしく松之助がタバコをふかしながら再び戻ってきた。現代だとあり得ない速さだが、文明レベル的にそこまで詳しく調べることもないのだろうし、魔法で大方わかるのだろう。
「どうだ兄ちゃんたち、これでわかっただろう。今回は運良くけが人は出なかったが、この街に無闇に長居するもんじゃないぜ。」
「いや別にそこまで。山賊とかとおんなじようなもんだし、賊如きにやられるほどやわでもねぇし。むしろそいつの正体に興味が湧いたくらいでね。」
「勝手ながら僕たちも手伝わせてもらいたいんですよ。あ、もちろんここにいる全員なわけじゃありませんよ。せいぜい5、6人といったところです。」
「いや・・・」
ここで響と大我が松之助に話をつけようとする。しかしとうぜんながら彼の反応は渋い。普通にかんんが得ても一般人を巻き込むわけにはいかないのは明白だ。
もちろんそんなあっさりと行くはずおないことはわかっているので次の策に老じる。
「あ、ノーといっても勝手についてくから、んで全力で騒ぎ立てる。うるせぇぞぉ、おれらが全力で騒いだら。捜査どころじゃなくなるだろうなぁ。」
響らしい実にはた迷惑な脅しだった。だいたい煩ささなんて胸をはりいばって言うよなことじゃない。
これでは本当に響の言う通り捜査どころじゃなくなるので松之助もOKを出すしかなかった。
「わ、わかったわかった。好きにしろ。まぁ、使える手が増えること自体は悪いことじゃないからな。」
「そうだぞ、せっかく無能警官の尻拭いしてやるってんだか素直に受け入れりゃいいのよ。」
「何様よ、あなた。」
いってることは・・・まぁ客観的にみれば間違ってもなくはないのだが、しかし言い方というものがあるだろうに。そこにいった全員警官も含めて呆れ返っている始末だった。
「で、これからどうすんだよ、目星は付いてんのか?」
「それがさっぱりだ。その、だからまぁ西の方に・・・。」
「西?西の方に何があるんですの?」
しかし、その問いに松之助は答えずただ沈黙を貫くだ毛だった。代わりに答えたのは先ほども話してくれたあの男。
「あーーー、西って。そっちは遊郭街で・・・。」
「俺には一松ちゃんとの時間が待っているんだ、というわけでさらば。」
遊郭のゆの字が出てきた瞬間に脱兎の如く逃げ出す松之助。そんな姿を見て、一同の心は一つとなった。
「「「「「「「いい加減にしろ税金泥棒がぁ!!!!!」」」」」」
その後、後を追った響に2秒で追いつかれて部下含めた全員から袋叩きにあったのは言うまでもない。




