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ロストメモリー  作者: 島山 平
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成田賢太郎の日記(11) 六月二十日 (日)

 明日は、久々の休み。確認したところ、有紀子さんも明日は休みのようだ。バックヤードにシフト表が貼ってあるというのは、ボクみたいな者にとってはありがたくてたまらない。


 結局、現状は何も変わっていない。有紀子さんとの関係はやり直せず、むしろ悪化している。中村課長に確認したところ、二人はやはり親密に話をしているらしいことがわかった。具体的な言葉は口にしないものの、ラインのやり取りでもしていることは間違いない。ボクを見る中村課長の目が厳しくなってきていて、そろそろ立場的に危ない。引き際を見極めるのは大切だ。

 明日は、二人で出掛けたりするのだろうか。そんなのは嫌だけれど、防ぐ手段がない。彼女の家の側で待機していればその瞬間に出くわすかもしれないけれど、だからといってボクが登場しても何もできない。それこそ、警察に突き出されるかもしれない。それなら、どうすればいいんだ?


 改めて言葉にしてみる。ボクは有紀子さんのことを愛している。ボクのことを人間として好きになってくれた、唯一の女性なんだから。その彼女のためなら、何だってできると思っていた。

 でも・・、実際はこんなものだ。引っ込み思案のダメな男が、家の中でウジウジ悩んでいるだけ。

 どうして、最初から正直に話さない。『記憶をなくしているようだけれど、少しずつ関係を取り戻していこう』そう言えばよかっただけだ。ボクが堂々としていれば、有紀子さんだってそうなのかな?って思ったかもしれないのに。全て、ボクの落ち度だ。彼女のことを想うふりをして、自分が傷つくのが怖かっただけだろう? 彼女から拒否されるのが怖かったんだろう?

 きっと、これまでの人生で、自分から女性にアプローチをしたことがなかったからだ。いつだって、ボクの顔を目当てに相手から近づいてきた。そのせいで、ボクはこんなにも弱々しく、大切なときに動けない人間になってしまった。今まで出会ってきた全ての女性を恨みたくなる。恨んでしまう。


 ダメならダメで諦めてしまえばいいのに、心のどこかで期待しているんだ。いつか有紀子さんが記憶を取り戻して、自分の元へ帰ってきてくれることを。

 でも、その望みすら他人の力に頼っている。有紀子さんの方から戻ってきてくれたら・・なんて、自分勝手も甚だしい。口では偉そうに言って、何一つ行動できない痛いやつじゃないか。ボクの大っ嫌いなやつだ! それがボクなんだ!

 悔しくてたまらない。それなのに、行動には起こせない。起こさないんだろう?

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