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ロストメモリー  作者: 島山 平
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藤田剛の記述(2)

 山岡有紀子の所持していた二冊の日記を読み終え、彼女の身に何が起きていたのか、おおよそのことは理解できたつもりでいる。

 六月九日の事故により一時的な記憶喪失に陥り、彼女は恋人である成田賢太郎のこともわからなくなってしまった。新たな恋人となった中村修平との関係が始まった途端、母親である山岡杏子が殺害される。その犯人として中村修平が容疑者にあがり、彼は自宅のベランダから転落死している。


 七月九日現在、山岡有紀子もそれを追うように自殺してしまったわけだが、最も話を訊くべき人物が残されている。彼女の日記にも登場した、成田賢太郎である。山岡有紀子の元恋人であり、すぐにでも、話を訊かなければならない。

 成田賢太郎は、山岡有紀子が退院した後、どのように過ごしていたのだろう。彼女の書いた日記によると、彼女とは何度か接触したようだが、それほど大きな動きはなかったように見える。本人の口から説明してもらうつもりだが、山岡有紀子は彼のことを疑い、最終的には、成田賢太郎は犯人ではなかったという結論に至った。おそらくはそのときに話をしたのだろう。中村修平が母親を殺害した犯人であり、成田賢太郎は中村修平の死を目の前で見ていたそうだ。

 この事実が本当であれば、彼の証言の重要性は増す。何のために中村修平の部屋へ行ったのか、そこで何をしていたのか。また、山岡有紀子が最後に接触したと思われる人物も彼だ。何を話し、山岡有紀子がどんな状態だったのか、それを確認しにいくことにする。


七月九日 十二時四十五分 藤田剛

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