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ロストメモリー  作者: 島山 平
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山岡有紀子の日記(25) 七月八日 (木)

 全部、わたしの勘違いだったのかな。ホントに、修平さんがお母さんを殺して、なんで

か知らないけど自殺しちゃったのかな。成田さんに失礼なことしちゃった。呼び出してナ

イフで脅しちゃって。正直、彼を殺すつもりだった。だって、二人を殺したのが成田さん

だと思ったから。

 ちゃんと話してみたら、彼が犯人じゃないことがわかって。しかも、修平さんがお母さ

んを殺したっぽいことを口にしてたなんて・・。


 成田さん、ホントにつらそうにしてた。自分の目の前で修平さんが落ちていくのを見て

たらしいから。彼が修平さんの部屋へ行ったのは本当みたいで、何をしに行ったのかも教

えてくれた。かなり言うのを悩んでいて、きいてみたら、確かにわたしには嬉しくない内

容だった。修平さんが工藤さんと不倫してたって・・。

 成田さんからその証拠も見せてもらったし、修平さんに裏切られてたのは事実みたい。

信じられないし、めちゃめちゃツラい。成田さんいわく、修平さんに忠告しに行ってくれ

たらしい。工藤さんとの不倫をやめて、わたしとも別れろって。それで口論になって、脅

したつもりが、修平さんがビビって落ちてっちゃったって。成田さんが殺したのかなって

思ったけど、でも、修平さんがわたしを裏切ってたのは事実だから。どっちを信じるべき

かは明らかだなぁ・・。



 ところで、不思議なのは、どうして成田さんがわたしのためにそこまでしてくれたのか

なってこと。だって、ただの同僚のはずだし。違うの? 彼はわたしのことが好きだった

りするのかな。でも、だからってそれでここまでしてくれたなんて。ありえない? 考え

にくい? 嬉しいしありがたいけど、今はとてもその気持ちに応えられる状態じゃないや。

いままでみたいに日記を書くのも、今日が最後だと思うし。たぶん二度と読み返したりす

ることはない。だから、適当に書いたって問題ないと思う。


 なんでこうなっちゃったのかわからないな。結局わたしは全てを失っちゃった。久しぶ

りに親孝行できるはずだったお母さんが殺されて、信じてた人に裏切られて。会いたかっ

たなんて言われて浮かれた自分がバカみたい。仕事だって、こんな状況で続けられるわけ

がない。あの男が犯人と決まったら、アピタもバタバタするんじゃないかな。社員が殺人

犯、その被害者は従業員の家族って・・なにそれ、安いドラマじゃないんだから。お母さ

んを殺した犯人はゼッタイに許さない。わたし達の人生をメチャクチャにされて、もうな

にも希望なんて残ってない。やり残したっていうか、犯人にフクシュウすることだけはな

んとしてでも成し遂げたかったな。

 たぶんだけど、この日記はわたしの遺書ってことになるのかな。全部書き終わったら、

すぐに死ぬつもりだから、まさに遺書か。どっかに名前と拇印でも残しとくべき? 日づ

けも必要かな。なんかちょっとテンション上がってるけど、死んじゃうし、それもゆるし

て欲しいかな。



 どうか神様、わたしをお母さんの側まで連れてってください。あと、悪いことをしたヤ

ツには、ちゃんとバツを与えてください。どうか、それだけはお願いします。


 それでは、みなさんさようなら。

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