7 魔物
そして、今日も森で薬草を採取する。今回は、回復薬製造用がメインだ。
川の近くでひと休みする。石を並べてかまどを作り、枯れ木を集める。
小さい鍋を上に乗せて、枯れ木に火を…なかなか点けることができない。
ライターはもちろん、マッチに相当するものもない。火種は持ち歩けない。
「『保温』は、言葉が喋れる頃には使える基本魔法だったけか。いいなあ」
数十分ほど木を擦り合わせて、ようやく煙が出てくる。枯れ木に火が広がる。
お茶が飲めるまで、まだまだ時間がかかりそうだ。
「グルルル…」
「シルバーウルフ!?な、なんでこの森に!?」
林の中から突然、獣が現れる。この森では完全に討伐されていたはずの獣が。
大量の魔力をまとい、火炎や氷風を口から放つそれは、もはや魔物である。
『魔法の基礎』には初歩的な防御魔法で防げるとあったけど。うん、魔法で。
「えっと…ボクハ、オイシク、ナイヨ?」
「グガアアアー!」
咆哮と共に、大きな火炎が僕に迫りくる。目を瞑って身構えながら思った。
あー、シルバーウルフのステーキって美味しかったよなあ…。
「『遠隔防御』!」
火炎が手前で止まる。魔力を出し切るそれは、一度放てばしばらく使えない。
僕は狼に向かってナイフを突き、とどめを刺す。魔力がなければただの狼だ。
「助かったよ、エルハルト。でも、どうしてここに?」
「目撃情報がギルドに入って、討伐に来た。遠くの森から流れてきたらしい」
「そうなのか…。今日はもう引き上げるよ」
エルハルトのおかげで九死に一生を得た僕は、撤退の準備を始める。
枯れ木は全て灰になっていて、鍋は少し焦げ付き、水は蒸発していた。




