6 発動
少し時間がとれたので、図書館に来てみた。
図書館というのはあくまで直訳的な表現で、実際に本は存在しない。
この世界、なんと文字がない。思念を石板や結晶体に記録・感知する方式だ。
「僕でもネックレスに触れてると読めるのか。そういう魔道具だったのかな」
所定の位置に触れるとイメージが直接伝わってくるから大変わかりやすい。
早速『魔法の基礎』の記録を探ると、『発光』や『出水』等の手順があった。
手順そのものは理解できるが、魔力制御の手順なので、僕には発動しない。
「とはいえ、記録が伝わるということは、僕にも魔力自体は反応するのか…」
そう思い立ってから図書館(仮)を出て、エルハルトの家を訪ねる。
魔法の発動手順を思い描いている僕に、魔力を注ぐとどうなるか試すためだ。
勇者パーティのリーダーだけあって、保有魔力量は最大級だ。
「おお、光った光った!」
「シル、すまん、魔力がどんどん発散していくようなんだが」
「だめかー」
初めての魔法発動に感激したのもつかの間、実用的ではないことも確定した。
魔力譲渡はかなり効率が悪いようだ。転移なんて想像したら即死しそうだ。
「いや、だから、空間を二次元に置き換えて考えると…」
「くーかん?にじげん?」
転移の原理はうまく翻訳されなかった。やはりチートは無理そうだ。
そしてそれは、僕がどこからやってきたかも説明できないことを意味する。
「あとは、僕がなぜ魔力を保持できないか…は、自明か」
ああ、異世界人。遺伝子レベルで違ってたりするのだろうか。




