5 衣食
薬草の買取金額が一時的に増えたので、今日は外食にしてみた。
「お肉の香草焼きおいしー」
「フォレストボアは今が旬だからね。おかわり自由だよ!」
この世界の食文化は、元の世界に負けず劣らず充実しているようだ。
これも魔法のおかげ。適切な属性で魔力を注げば作物がすくすく育つ。
獣も森や海にたくさん生息していて、時々討伐しなければならないくらい。
「そっか、このお肉、勇者パーティが狩ったものなんだ」
「国境近くの街ではソーセージがいつもよりたくさん作られたそうだよ」
「市場に届くのが楽しみだね、おばちゃん」
正直、この食料事情もあるから、僕は薬草採取だけでやっていけるのだろう。
普段はパンとスープ、果物くらいだが、安くて種類も豊富で全く飽きない。
「そうそう、ゆうべ領主様が食事に来られた時、あんたのこと褒めてたよ」
「え、何か褒められるようなことしたっけ?」
「治癒薬を精製したら上級ポーションができて、王都の友人が完治したって」
衣食足りて礼節を知る、なのか。ここは戦争らしい戦争がなく、治安もいい。
階級制度はあるが貧富の差は小さく、貴族が平民と交流する機会は割と多い。
「いや、それ僕とは関係ないんじゃ」
「素直に受け取っておきな。あんたがいなかったら治らなかったんだから」
もちろん、事故や病気はあるし、空を飛ぶほど文明水準が高いわけでもない。
大きな発展はないが、ゆるやかな変化の中で人々は穏やかに暮らしている。
「…こんな世界に魔法チートも知識チートも要らない、ということかな」
「ん?」
「なんでもないよ。おばちゃん、おかわり!」




