3 備蓄
1日の利益がわずかとはいえ、ちりも積もれば山となる。
何か月も続けていたら、銅貨数十枚がたまっていた。
「衣類やナイフの新調は必要かな。あとは、治癒薬と回復薬の補充っと」
「すごいですねえ…。薬草の収入だけでそこまでやっていけるなんて」
「たまに木の実とかも多く採取できるしね。売れはしないけど、食費が浮く」
リムさん曰く、極寒となるのは3週間程度のようだ。なんとかなるだろう。
しかし、我ながらたくましく生きているものだ。近い将来に不安はあるが。
「シルさん、勇者パーティが来ましたよ」
「ああ、ようやく帰ってきたんだ」
いかにも剣と魔法の実力者集団、というパーティがギルドに入ってきた。
『勇者』と呼ばれているが、魔王なる存在がこの世界にいるわけではない。
困難な依頼をいくつも達成したことでついた二つ名だ。美男集団でもあるが。
「シル、ひさしぶりだな」
「おかえり、エルハルト。国境付近の合同討伐に行ってたんだっけ」
「ああ。もうくたくただ。しばらくは家でゆっくりする」
リーダーのエルハルトはベテラン冒険者だが、新人の僕ともよく話す。
まだ25歳なのに、街の郊外に豪邸を構えている。稼ぎ頭は違うな。
「おかげで、今回も治癒薬と回復薬がずいぶんと役に立ったよ」
「隣国の人達、またろくに持参しなかったの?」
「ああ。もっとも、安価な薬がこれほど潤沢なのはこの街だけだがな」
薬草をせっせと採取しているのは僕くらいだ。それだけ、薬が必要ない。
採取された分の薬は製造されるので、ギルドの備蓄は増える一方だ。
「討伐中に魔力が枯渇することもあるはずなのに、なんでかなあ」
「大がかりな討伐はそれほどないからな。枯渇したら撤退するものだし」
エルハルトは薬の携帯を重視し、その関係でよく情報交換するようになった。
討伐が多い勇者パーティで有用性が示され、需要が多少増えてはいる。
「なあ、あらためて礼をしたいんだが。討伐範囲が広がって報酬も増えた」
「礼なんていいよ。評価してくれるのはありがたいけど、所詮は薬草だし」
電気ポットやガスコンロが普及しているのに、薪を集めているようなものだ。
とはいえ、こういった事情もあり、薬草採取しかしない僕の評判は悪くない。




