16 貨幣
「しかし、どれだけ食べても銅貨1枚、って最初は慣れなかったなあ」
「この食堂で銅貨2枚はもらいすぎじゃないかな」
「いや、そういう意味ではないんだけど」
驚くべきことに、この国は銅貨しか貨幣を発行していない。
数字がないことも影響しているが、貨幣というよりは引換券である。
食材が安く、調理も魔法であっという間。究極の丼勘定が成り立つ。
「果物1個も、マフラー1本も、どちらも銅貨1枚、かあ」
「向かいの店なら両方あるから、合わせて銅貨1枚で手に入るさ」
「だから、そういう意味では」
要するに、価値を示したり貯めたりする役割が銅貨にはない。
手頃でわかりやすい交換手段さえあれば問題ないのである。
記録手数料を薬草そのもので支払ったのが良い例だろう。
「ギルドや役場では、記録・感知魔法で書類?上の交換もできるし…」
「今年も作物の出来は悪くないので、国の討伐依頼も例年通りです」
「いやあ、僕が遠征討伐に関わることはないんじゃないかなあ」
たとえば、遠征討伐に成功すると、ギルドで討伐成功が記録される。
成功記録が増えたら、所有者や建築士に交渉して家や土地を譲り受ける。
ギルドで成功記録の権利が書き換えられ、国所有の作物等と交換できる。
「エアハルトさんの討伐記録を結晶体で飾っていた大工さんもいましたね」
「ちょっと待て、それは初耳だぞ」
固有パターン認証を受けた上で結晶体記録として譲り受けることもできる。
宝石のような資産にもなるし、討伐内容によっては歴史的資料にもなる。
たまにプライベートな記録が…リムさんから口止めされているのでやめよう。




