外伝 もう一人の転生者?
祭壇での一件から数日後。ルチアは自室で、こっそり古代魔法の資料を読み漁っていた。
(くそっ……。男に戻すどころか、あの石板のせいで状況が悪化しただけじゃないか! 何が身体再構築魔法だ! 返品窓口はどこだ、返品窓口は!)
そこへ侍女エレノアが、恭しく一通の封書を差し出す。
「ルチア様。王宮より正式なご招待状が届いております」
「王宮? なんで?」
「祭壇で起こった奇跡について、陛下が直接お話を伺いたいとのことでございます」
「奇跡じゃない! あれはシステムエラーよ!」
「まあ……ご自身の偉業を謙遜なさるなんて、さすがルチア様ですわ」
(ダメだ! この屋敷には俺の話をまともに聞いてくれる人間が一人もいない!)
王宮に到着したルチアを待っていたのは、国王、王妃、宮廷魔術師、そして満面の笑みを浮かべたアストルフォだった。
国王は厳かな声で告げる。
「ルチア嬢。古代の祭壇が再起動し、王宮の魔力測定器が反応した。そなたこそ、伝説の大魔法使いの後継者ではないか?」
「ち、違いますわ! わたくしはただ、ちょっと石板を触っただけで……」
「なるほど。己の功績を誇らぬか」
(違うって言ってるでしょうがあああ!)
さらにアストルフォが追い打ちをかける。
「父上。ルチアは昔から、誰も知らない知識を持っているんです。僕は彼女が特別な存在だと信じていました」
(お前の信頼が一番怖いんだよ!)
宮廷魔術師長が、古代の伝承に残された未解読の魔法陣を持ち出す。
「ルチア様。この術式を解読していただけませんか?」
「ええっ!? 無理ですわよ!」
ところが魔法陣を見た瞬間、ルチアの脳内に祭壇のシステム画面が浮かび上がる。
『管理者権限を確認中……』
『対象:ルチア・フォン・グランベルク』
『称号:究極のお嬢様(仮)』
『新規クエスト:王都の魔力異常を調査せよ』
(誰が究極のお嬢様だ! 勝手にクエストを受注するな!)
しかも、ルチアが慌てて魔法陣を触ると、部屋の照明が一斉に点灯。止まっていた王宮の魔導時計まで動き出す。
宮廷魔術師たちは感涙する。
「伝説の魔法が……復活した!」
「さすがルチア様です!」
「いえ、あの、違……」
「ご謙遜を!」
(この世界、俺の言葉を都合よく翻訳する魔法でもあるのか!?)
王宮からの帰り道。アストルフォが馬車の中で、いつもより真剣な表情を見せる。
「ルチア。君が望むなら、僕は何だって協力する。君の秘密も、君が抱えている悩みも、いつか僕に話してほしい」
一瞬、ルチアの胸がきゅっと締めつけられる。
(……こいつ、本当に悪い奴じゃないんだよな)
すぐに我に返る。
(いやいや! 俺は男に戻る方法を探してるんだぞ! 感動してる場合か!)
その瞬間、脳内のシステム画面が再び点灯する。
『警告:王都地下に未登録の管理者権限を検出』
『警告:別個体による現実改変が進行中』
『推奨:対象者との接触を回避してください』
「……え?」
画面の最後に表示された名前は――
『転生大魔法使い:第二管理者』
(待て。俺以外にも、この世界に転生者がいるのか……?)




