第三十話 無双します!
「おーっほっほっほ! ごきげんよう、みなさま! 今日もわたくしの可憐さと圧倒的な輝きに平伏しにいらっしゃいましたのね!?」
王立庭園の絢爛豪華なお茶会会場にて。
高らかな高笑いとともに、私は煌びやかな扇子をバシッと開いて見せた。
ドヤぁぁぁぁっ……!
身に纏うのは、王室御用達の職人が仕立てた至高のドレス。
そして何より、過剰分泌された女性ホルモン(エストロゲン)と激甘スイーツのカロリーが、絶妙なバランスで『胸』へと自動配分された圧巻のわがままボディ!
(ふっふっふ……見たか! 泣いても叫んでも男に戻れないなら、開き直って『世界一完璧なお嬢様』になってやるって決めたのよ! 前世のネットスレで鍛えたマウント知識と、ギャルゲのお嬢様ムーブ……そのすべてを結集させた今の私に、勝てる奴など存在するかしらーっ!?)
中身48歳元ニートおじさんの開き直りは、恐ろしいほどの破壊力を生み出していた。
そこへ、ギリ……と歯噛みする音が聞こえてくる。
声の主は、かつて私にマウントを仕掛けては連戦連敗してきたライバルお嬢様・セシリアだった。
「くっ……! ル、ルチア様……っ! 今日のわたくしは違いますわよ! 貴女が『お腹のお肉を胸に記憶形状させた』というズルを暴いたあの日から、わたくしも血のにじむような努力(高級スイーツのドカ食いと肉の寄せて上げ)をしてまいりましたの!」
セシリアは涙目になりながら、バッと自身の胸元を誇張するように胸を張った。
「ご覧なさいな! わたくしのこの『淑女としての成長』を! これで……これでついに、わたくしが唯一勝っていたはずの『お胸の大きさ』を取り戻し、貴女を超えて見せ……っ!」
しかし、セシリアの威勢のいい言葉は、途中でピタリと止まった。
彼女の視線が、私の胸元――ドレスのフリルを押し押し上げるように鎮座する、圧巻の「本物の山脈」に固定されたからだ。
「え……? あ……あれ……? な、なんですのそれ……? 前にお会いした時より……さらに、さらに巨大化していませんことーっ!!??」
「あら……? どうかされましたの、セシリア様?」
私はわざとらしく首をかしげ、あざとさ1000%の笑みを浮かべた。
そう、セシリアがお腹の肉を必死に寄せて上げている間に、私の身体は「世界一のお嬢様になる」という強い決意と溢れ出るエストロゲンによって、さらなる覚醒(成長)を遂げていたのだ!
「そんな……嘘でしょ……っ! わたくしが……わたくしが一生懸命太ってお腹につけたお肉を寄せても……ルチア様のお胸の半分にも届かないなんて……っ!!」
「ふふ。努力は認めますわ、セシリア様。ですが……『本物の愛』と『完璧なエストロゲン』によって育まれたわたくしの美しさには、どんな姑息な技術も届きませんのよ?」
「キーーーッ!! 可憐さでも! 王子のお心でも! そして唯一の砦だった『お胸の大きさ』でまで完膚なきまでに負けるなんて……っ! ズルいですわーーーっ!!」
セシリアはぽろぽろと涙をこぼし、お腹周りの微妙な肉付きを揺らしながら、「覚えておきなさーい!」と悲鳴を上げて走り去っていった。
ライバル、完全撃破――!
レスバおじさんのマウント魂が、脳内で「勝った……! 完全勝利だ!!」と歓喜のガッツポーズを決める。
「……完璧でございます、ルチア様」
背後でうっとりと目を輝かせる専属侍女のエレノアが、深々と一礼した。
「ライバルを圧倒的な存在感で叩きのめす姿……まさに『世界一のお嬢様』にふさわしい神々しさでございました。さあ、次はお待ちかねの王太子殿下との甘いお時間でございますわ」
「えっ、あ、アストルフォ様……?」
ハッと我に返った瞬間、背後から熱く情熱的な腕がそっと私の細い腰を抱き寄せてきた。
「ああ……ルチア。今日も君は、息を呑むほど美しいね……」
耳元で聞こえる、アストルフォ様の限界突破した甘い声。
密着した背中から彼の体温が伝わり、私の豊かな胸が彼の胸板に押し当てられる。
「みんなの前で君の魅力を誇示する君も愛おしいが……正直、僕以外の男に見せるのが嫉妬で狂いそうになるよ。……今すぐ部屋へ連れ去って、僕だけの『世界一のお嬢様』として閉じ込めてしまいたい……っ」
「あ……アストルフォ様……っ♪」
(あかん!! ライバルをボコボコにして『世界一のお嬢様』アピールをしすぎたせいで、王子の理性が本格的に大爆発を起こしそうになってるじゃないのよーーーっ!!)
ドヤ顔マウントの快感と、王子の熱烈すぎる求愛にキュンキュンさせられる乙女心が交錯し、ルチア(中身おじさん)の脳内は大混乱に陥るのだった。




