第二十三話 王国1?
「……ちょっとエレノア。これは一体どういうことかしら……?」
自室のソファに腰掛けた私(中身:48歳元ニートおじさん)は、震える手で王都のゴシップ紙を広げていた。
一面に躍り出る、見るも壮絶な大見出し―― 『王国の奇跡! 淑女ルチア様の胸囲、ついに王国一へ!?』
「おめでたい噂でございますね、ルチア様。街の紳士淑女方の間では、ルチア様のその豊かなお胸こそが『王国の豊穣の象徴』とまで称えられておりますわ」
「称えなくていいわよぉぉぉ!!(涙目)」
叫びながら、私はドレス越しに己の胸元に手を添えた。
むにゅ……ギューッ……。
手に伝わるのは、もはや補正パットやコルセットの寄せ上げなどという次元を通り越した、圧倒的な質量と重み。
連日の高級スイーツドカ食いと、エレノアの過激な締め上げ、そしてアストルフォ様からの過剰なまでの溺愛イケメンビーム(=エストロゲン大量分泌)によって……元お腹の脂肪だった肉体は完全なる「記憶形状」を果たし、ドレスを脱いでも素で巨大な「究極の美少女バスト」として固定化されてしまっていたのだ!
(上は留まることを知らずにメロンみたいに肥大化してるのに……)
そっとスカートの裾を意識する。
下半身の「元・男の象徴」は、反比例するかのように日に日に萎縮し、今や存在感すら消えかかっている。
上へ上へと肉体が配分(ステ振り)し直された結果、私の身体は「王国一の胸を持つ美少女」として完璧に完成されつつあった。
「ですがルチア様。この噂のおかげで、セシリア様も『お腹の肉だ』などと嫌がら言いをすることは二度とできなくなりましたわ」
「そういう問題じゃないわよ! 王国一って何!? 私、元おじさんなのよ!?」
頭を抱える私の元へ、バタンと勢いよく扉が開いて誰かが駆け込んできた。
「ルチア――――っ!!」
息を荒らして入ってきたのは、我が国の王太子アストルフォ様だった!
顔を真っ赤にし、瞳をギラギラと輝かせたアストルフォ様は、一直線に私のもとへ歩み寄ると、私の両手を強く握りしめた。
「聞いたよルチア! 君の身体の魅力が……王国一番だと噂になっていると!」
「あ、アストルフォ様……っ! これはただの街のデマでして……っ!」
「デマなものか! 僕は以前から知っていたさ! 君の胸がどれほど柔らかく、どれほど僕の心を狂わせるほど魅力的に育っているか……っ!」
熱心に語るアストルフォ様の視線が、私の胸元へと注がれる。
ファーストキスを交わしてからというもの、王子の愛しぶりは完全にブレーキが壊れて限界突破しているのだ!
「だが……みんなに君の魅力を知られるのは誇らしくもあり、同時に恐ろしく嫉妬覚えるよ……。ルチア、こんなにも魅力的になった君を、もう誰の目にも触れさせたくない……。今すぐ王宮の奥深くに閉じ込めて、僕だけのものにしてしまいたい……!」
「ひえぇぇぇ……っ♪(あかん、王子の独占欲がヤバいことになってるーっ!?)」
(元はお腹の贅肉……でも今は下も小さくなって上は王国一の巨乳……。おじさんのプライドはズタズタだけど……こんなにイケメン王子に熱狂的に愛されるなら……もう私、どこまでも甘やかされて流されちゃってもいいのかも……っ♪)
自身の肉体の「王国一」という栄誉(?)と、王子の甘すぎる独占欲に包まれ、ルチアのおじさんとしての理性はまた一段と溶けて消えていくのだった。




