第十五話 魔法?
「……魔法使い……だと……?」
砂浜での水着ズレハプニングから数日後。
王太子アストルフォ様からの過剰なまでの甘やかしアプローチに耐えつつ、お屋敷で優雅(?)にティータイムを楽しんでいた私(中身:48歳無職ニート)は、侍女のエレノアが持ってきた古い古文書の口語訳を読んで、目を見開いていた。
そこに記されていたのは、この世界に伝わる古い伝承――**「異界より訪れし、万物を改変せし『大魔法使い』の伝説」**だった。
「はい、ルチア様。我がグランベルク家に代々伝わる秘録によりますと、かつてこの地に『異界の知識と理』を持ち込み、現実の理すら捻じ曲げた偉大な魔法使いが存在したとされております」
「理を……捻じ曲げる……?」
ゴクリ、と生唾を飲み込む。
(待てよ……? 異界の知識って、もしかして前世の地球の知識か……!? ということは、その『大魔法使い』ってのは、俺と同じ前世の記憶を持った転生者だったんじゃないのか!?)
もしそうだとしたら!
もしその魔法使いが「現実改変」や「性別や身体の構造を元に戻す魔法」なんてものを遺していたとしたら――!
(勝てる……! 勝てるぞ……!! これを使えば、萎縮して息絶えかけている俺の『息子』を完全復活させ、この胸の爆乳をすっきり消し去り、男としての尊厳を取り戻せるかもしれない……!!)
男としての理性が奇跡のラストチャンスに歓喜の悲鳴を上げる。
「エレノア! その魔法使いの書物や遺跡はどこにあるの!? 今すぐ調査に行くわよ!!」
「まあ、ルチア様ったら。そんなにおとぎ話に興味がおありでしたの?」
ふふっと微笑むエレノア。だが、私の本気すぎる眼差しに押され、彼女は一枚の古い地図をテーブルに広げた。
「このグランベルク領の奥深く、『迷いの森』の最深部に、その魔法使いが遺したとされる【異界の祭壇】がございます。ですがルチア様、あそこは危険な魔獣も出ますし、可憐なお嬢様が行くような場所では……」
「行く!! 絶対に行く!! ドレス破れても行く!!」
男の象徴を取り戻すためなら、魔獣の一匹や二匹、前世の毒草&ネット知識で返り討ちにしてやる!!
――と、鼻息荒く立ち上がったその時だった。
「やあ、ルチア。今日も一輪の花のように美しいね」
バンッと勢いよく扉が開かれ、眩い光とともに現れたのは――我が婚約者候補筆頭、アストルフォ王太子殿下(18歳・超絶イケメン)であった。
「ア、アストルフォ様!? なぜここに……!?」
「君に会いたくてね。それに……『迷いの森へ探検に行きたい』と目を輝かせている君の噂を聞いて、居ても立ってもいられなくなったんだ」
王子は吸い寄せられるように私の元へ歩み寄ると、私の両手を優しく包み込み、耳元で極上の甘い声を囁いた。
「大切な僕のエンジェルを、そんな危険な場所に一人で行かせるわけがないだろう? 大丈夫、僕が君を完璧に護衛するよ。……さあ、二人だけの『愛の冒険』に出発しようか」
「ひゃいっ!? 偏愛が過ぎるーーーっ!!」
(なんでついてくるのこのイケメン!? 魔法使いの力で男に戻ろうとしてるのがバレたら、一体どうなっちゃうのーーーっ!?)
こうして、身体を男に戻したい「中身48歳おじさんお嬢様」と、どんな時でも激甘に護衛しようとする「限界突破イケメン王子」による、命がけ(?)の魔法使い遺跡探索ツアーが幕を開けたのだった――!




