家族のかたち
「ところで良治」
「はい?」
「おぬしら、これからどこへ行くのじゃ?」
千代さんが僕たちを見上げる。
「特に決めてないんです。暁に街を見せて回ろうかなって」
「そうか。なら商店街へ行くとよい」
「商店街?」
「うむ。今日は人も多いじゃろうし、面白いものもたくさんあるぞ」
千代さんは得意げに胸を張った。
「食べ物もあるしの!」
「千代、あなたが食べたいだけでしょう?」
「な、なんじゃと!」
トヨさんが楽しそうに笑う。
その様子を見ていた暁も、つられるように小さく笑った。
「商店街か……」
局長が少し考えるように呟く。
「いいかもしれないね。暁に見せてあげたいものも多いし」
「せおも、いく?」
「もちろん。一緒に行こう」
暁が嬉しそうに頷く。
「食べ歩きもよいが……百目の所で写真でも撮ってもらったらどうだ」
「……しゃしん?」
暁が首を傾げる。
「局でみんなの顔を見た、あの紙だよ」
「わたしも、とれるの?」
「うん。みんなでね」
「それはいいね」
局長が、暁を見ながら柔らかく笑った。
「せっかくだから、みんなで一枚撮ってもらおうか」
「……みんな?」
「良治くんも、サトリも、僕も。暁も一緒にね」
暁は僕たちの顔を順番に見る。
それから、ぱっと表情を明るくした。
「……とりたい!」
「じゃあ決まりですね」
僕が笑うと、局長も小さく頷いた。
「うん。商店街へ行ってみよう」
「それじゃあ、また」
「今度はちゃんと遊びに来るのじゃぞ!」
「はいはい」
「『はい』は一回でよい!」
「ふふ。相変わらず元気ですね」
少し離れたところで、サトリさんが楽しそうに笑う。
「また今度、ゆっくり遊びに来ようか」
局長がそう言うと、暁も小さく頷いた。
千代さんの声を背中に聞きながら、僕たちは川辺をあとにした。
川沿いの道をしばらく歩く。
秋の風が水面を渡り、少し冷たい空気が頬を撫でていった。
暁は歩きながら、何度も振り返っていた。
遠ざかっていくトヨさんと千代さんの姿を見つめている。
「どうしたの?」
「……かぞく」
「うん?」
「ちよと、とよ。かぞく」
「そうだね」
暁は少し考えるように前を向く。
「いっしょにいると、かぞく?」
「うーん……それだけじゃないかな」
「ちがう?」
「一緒に過ごして、大切に思ったり、心配したり。そういう時間が積み重なって、家族になることもあるんだと思う」
僕が答えると、暁はしばらく黙っていた。
「血が繋がっていなくても、家族になることはありますからね」
少し離れて歩いていたサトリさんが、穏やかに付け加える。
「……つながってなくても?」
「はい」
サトリさんが微笑んだ。
「大切に思う形は、一つではありませんから」
「……せおも?」
「ん?」
暁は隣を歩く局長を見上げる。
「せおと、いっしょ。たいせつ」
「……そうだね」
局長が少しだけ目を細めた。
「僕も、暁と過ごした時間は大切だよ」
「……あかつきも?」
「もちろん」
暁は少し嬉しそうに笑った。
そして、局長の手を握り直した。




